とはずがたり

論文の紹介や日々感じたことをつづります

西川伸一先生のメッセージ

2020-05-05 12:14:24 | その他
下記のリンクは私が最も尊敬するサイエンティストである西川伸一先生のメッセージです。是非お読みください。
今回の感染症の最大の恐ろしさは「人と人のつながりを分断する」という点です。欧米ではロックダウンというような厳しい政策を取っている国も多く、わが国も含めて人と人との接触を極力抑えようという戦略がとられています。感染症(疫病)対策の大原則が「早期発見(診断)、早期隔離」であることから、これはやむを得ない方針であったと思います。しかし人と人のつながりを分断することによって、我々が社会でこれまでに培ってきた多くの有形・無形の財産を失ってしまうことになるのではないかと危惧しています。


アメリカにおける遺伝子治療の現状

2020-03-14 19:14:09 | その他
日本では昨年初めての遺伝子治療薬コラテジェンが承認され話題になりましたが(https://answers.ten-navi.com/pharmanews/16896/)、遺伝子治療薬の開発についてはわが国は米国に大きく後れをとっています。この論文によると、2017年以降FDAが承認した遺伝子治療薬は4剤、2019年8月末の時点でClinicalTrials.govに登録されている遺伝子治療の治験は341でした。内訳は130 (38%)がin vivo therapies、107 (31%)が遺伝的異常の修復、221 (65%)が癌治療で、funding sourceは35 (10%) がNIH、135 (40%) が企業、85 (25%)が病院、86 (25%) が大学でした。数もさることながら、病院や大学がスポンサーになっている治験が数多く走っているという事実にも彼我の差を感じます。
JAMA. 2020 Mar 3;323(9):890-891. doi: 10.1001/jama.2019.22214.
Sponsorship and Funding for Gene Therapy Trials in the United States.

Why Test for Proportional Hazards?

2020-03-14 11:43:31 | その他
Cox proportional hazard modelはRCTにおける生存解析のスタンダードとされていますが、基本的にhazard ratio(HR)が常に一定であることを前提にしています。しかし実際には①はじめは有害事象発生率に有意差はないが、徐々に減少する例(スタチン治療群の心血管イベント JAMA. 1998;279(20):1615-1622)、②はじめはHRは高いがしばらくしてから改善していく例(大腸癌のスクリーニング群 JAMA. 2014;312(6):606-615)、③はじめはHRが高いが、その後低くなっていく例(WHIにおけるエストロゲン+プロゲステロン群の心血管イベントJAMA. 2002;288(3): 321-333)などがあり、HRが一定であることは通常ありません。特に③のような例ではリスクの高いヒトは早期にイベントを起こして脱落していくので、最後まで残った参加者は心血管イベントに抵抗性のヒトが多い可能性があります。したがって著者らはHRを示すときには、例えばRMST (restricted mean survival time) などから算出した効果も同時に示すべきであるとしています。 
Why Test for Proportional Hazards?
JAMA. Published online March 13, 2020. doi:10.1001/jama.2020.1267


宇宙旅行の代償

2020-03-13 18:55:26 | その他
パンピーが宇宙旅行をする時代におけるmedical problem。骨粗鬆症が進むのはよく知られていますが、頭蓋骨の骨密度は上昇します。また椎間板ヘルニアは悪化するようです。 
N Engl J Med. 2019 Mar 14;380(11):1053-1060. doi: 10.1056/NEJMra1609012.
Space Medicine in the Era of Civilian Spaceflight.

自白誘導のテクニック

2020-03-13 18:27:04 | その他
アメリカには警察が容疑者を自白に持ち込むテクニックとしてリードテクニック(Reid interrogation technique)というメソッドがあるそうですが、このコラムでは、このメソッドがミルグラム実験(閉鎖的な状況における権威者の指示に従う人間の心理状況を実験したものでナチスのアイヒマンの名前を冠してアイヒマン実験・アイヒマンテストとも言う)にも似た危うさを包含しており、誤認逮捕につながることを示しています。日本でもいまだに自白は犯人逮捕のgold standardになってい(ると思い)ますが、このことが冤罪逮捕が無くならない理由の一つなのだと恐ろしくなります。欧米を中心として徐々に取り調べにおいてopen questionを重視するピースモデル(PEACE Model)が採用されるようになってきているとのことですので、日本でも今後このような取り調べが中心になることを期待します。 
doi:10.1126/science.aay3537
This psychologist explains why people confess to crimes they didn’t commit