腸内細菌叢が様々な自己免疫疾患に関与することに関しては多くの研究がなされています。一方肺内細菌叢についてはほとんど研究が進んでいません。この論文で著者らは、ラット自己免疫性脊髄炎モデル(EAEモデル)を用いて、Prevotella melaninogenicaなどの肺内細菌が肺内のeffector T cellを活性化⇒Effector T cellが中枢神経に移動し、microgliaを活性化⇒炎症性サイトカイン産生という経路で脊髄炎を増悪させること、neomycinの肺胞内投与⇒肺内におけるLPS濃度上昇⇒I型インターフェロン反応⇑⇒肺内のeffector T cell 活性化⇓⇒中枢神経におけるmicroglia活性化⇓という経路で脊髄炎を改善させることを報告しました。Neomycinの肺胞内投与は腸内細菌叢を変化させませんでした。キャッチ―な結果であり、免疫学者に新たな研究ネタを提供するということでNatureに掲載されたのだと思いますが、多発性硬化症などのヒト疾患において肺内細菌叢が変化するかどうかは今のところ不明であり、実際に臨床的な意義があるかは今後の検証が必要そうです。
Hosang L et al., The lung microbiome regulates brain autoimmunity. Nature . 2022 Mar;603(7899):138-144.
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