とはずがたり

論文の紹介や日々感じたことをつづります

硬度と耐久性に優れた人工エナメル質の作成

2022-05-08 12:53:17 | 骨代謝・骨粗鬆症
歯のエナメル質は最も高い硬度および優れた耐久性を示す物質であり、我々が一生モノが食べられるのはそのおかげです。しかしエナメル質を作る細胞は、歯が萌出するとすぐに死んでしまうため、ヒトの体内ではエナメル質を再生することができません。これまで人工的なエナメル質をの作成が試みられてきましたが、生体のエナメル質に匹敵するようなマテリアルの作成には成功しませんでした。本論文ではハイドロキシアパタイトの結晶ワイヤーを極端な温度を使って規則正しく配列させ、これを可鍛性金属ベースでコーティングすることで強度が生体のエナメル質を超える人工エナメル質の作成に成功しました。臨床応用はまだ先かもしれませんが、歯科領域以外にも地震の被害に耐えられる建材の作成などにも応用可能ではないかとしています。
Zhao H et al., Multiscale engineered artificial tooth enamel. Science . 2022 Feb 4;375(6580):551-556.


大腿骨頚部骨折に対するセメント型 vs ノンセメント型人工骨頭置換術を比較したRCT

2022-05-08 12:40:47 | 整形外科・手術
大腿骨頚部骨折(関節包内骨折)に対するセメントタイプとノンセメントタイプの人工骨頭置換術を比較したRCT。セメントタイプはノンセメントタイプよりもEQ-5D utility score(0.371 vs 0.315, adjusted difference, 0.055; 95% confidence interval [CI], 0.009 to 0.101; P=0.02)、12カ月までの死亡率(23.9% vs 27.8%, 0.80; 95% CI, 0.62 to 1.05)、人工関節周囲骨折(0.5% vs 2.1%, odds ratio [uncemented vs. cemented], 4.37; 95% CI, 1.19 to 24.00)いずれも優れていた。その他の有害事象に差はなかった。 
Fernandez MA, et al. Cemented or Uncemented Hemiarthroplasty for Intracapsular Hip Fracture. N Engl J Med . 2022 Feb 10;386(6):521-530.


肺内細菌叢は自己免疫性脊髄炎の発症に関与する

2022-05-08 12:36:36 | 免疫・リウマチ
腸内細菌叢が様々な自己免疫疾患に関与することに関しては多くの研究がなされています。一方肺内細菌叢についてはほとんど研究が進んでいません。この論文で著者らは、ラット自己免疫性脊髄炎モデル(EAEモデル)を用いて、Prevotella melaninogenicaなどの肺内細菌が肺内のeffector T cellを活性化⇒Effector T cellが中枢神経に移動し、microgliaを活性化⇒炎症性サイトカイン産生という経路で脊髄炎を増悪させること、neomycinの肺胞内投与⇒肺内におけるLPS濃度上昇⇒I型インターフェロン反応⇑⇒肺内のeffector T cell 活性化⇓⇒中枢神経におけるmicroglia活性化⇓という経路で脊髄炎を改善させることを報告しました。Neomycinの肺胞内投与は腸内細菌叢を変化させませんでした。キャッチ―な結果であり、免疫学者に新たな研究ネタを提供するということでNatureに掲載されたのだと思いますが、多発性硬化症などのヒト疾患において肺内細菌叢が変化するかどうかは今のところ不明であり、実際に臨床的な意義があるかは今後の検証が必要そうです。 
Hosang L et al., The lung microbiome regulates brain autoimmunity. Nature . 2022 Mar;603(7899):138-144.


高齢者の睡眠の質が悪い原因

2022-05-08 12:32:01 | 神経科学・脳科学
高齢者においては睡眠の質が悪いことが知られていますが、加齢に伴うKCNQ2/3チャネルのダウンレギュレーションによる再分極の低下が、hypocretin/orexin (Hcrt/OX)ニューロンの過興奮を引き起こし、それが睡眠の不安定性をもたらす可能性が示されました。
Lin S-B et al., Hyperexcitable arousal circuits drive sleep instability during aging. Science . 2022 Feb 25;375(6583):eabh3021.


人間の脳は莫大なカロリーを消費している

2022-05-08 12:28:34 | 神経科学・脳科学
人間は他の類人猿よりもはるかに多くのカロリーを日々消費しており、その多くは脳の働きによるものだそうです。また加齢によって消費カロリーは減少していきますが、一日中走り回っている狩猟民族と、オフィスで事務仕事をしているヒトでほとんど一日の消費カロリーは変わらず、運動はカロリー消費(やダイエット)にはあまり寄与しないとのことです。一方運動は心理的ストレスを軽減させて健康に関与している可能性はあるようです。 
Gibbons, A. THE CALORIE COUNTER. Science . 2022 Feb 18;375(6582):710-713.