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50代のひきこもり 脱出の道、親が真っ先にやるべきは

2021-01-12 15:30:00 | 日記

下記の記事は日経グディからの借用(コピー)です

「10年、20年と長い間ひきこもり生活を続けている」「自身の病気や親の介護を機にひきこもりになった」など、様々なケースがある中高年のひきこもり。中高年のひきこもり支援のあるべき姿と親が取るべき対応について、筑波大学・医学医療系教授で精神科医の斎藤環さんに伺う。
ひきこもりは苦しい コロナ禍でようやく進んだ理解
――2020年は新型コロナウイルスの影響で、多くの人が自粛生活を余儀なくされました。この間、ひきこもり当事者にも何らかの影響はあったのでしょうか。
ひきこもり問題に長く関わってきた筑波大学・医学医療系教授で精神科医の斎藤環さん
斎藤さん 世界中が自粛生活に入り、ひきこもり当事者は楽になったかというと、そうでもなく、彼らの苦しい状況は相変わらずだったと感じています。自粛期間中は路上に人がいなかったので、世間体を気にせず外出しやすくなった人はいました。しかし、四六時中親がいるような状態では、家族間の摩擦も増え、以前より強いストレスを感じていたはずです。
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私が一つだけよかったと思えるのは、今回、ひきこもり生活を大勢の人が体験したことです。実際のひきこもり対応でも、親御さんがひきこもっている子に対して、共感的に理解する・接することが非常に重要です。
「コロナうつ」という言葉がはやったように、行動が制限され、誰とも会えない状況は誰にとっても苦しいものです。あなたなら、何年もの間、そのような孤立状態に置かれることに耐えられるでしょうか? 多くの人が、当事者の置かれている状況をリアルに想像できたり、共感しやすくなったことは、唯一よかったことだと思います。
真っ先に取り組みたいのは、安心してひきこもれる関係づくり
――いわゆる8050問題ですが、高齢の親御さんにとってはすぐ目の前にある危機です。斎藤さんの経験から、家族が取り組むべき対処法を教えてください。
斎藤さん すぐに就労させよう、自立を促そうと思って、本人に受診や職探しを無理強いしてもうまくいきません。厚生労働省のガイドラインでは、ひきこもり問題への段階的対応が推奨されています。
ひきこもっている人の多くは、世間と関わることや治療を拒む人も多いため、最初の段階では、当事者に一番近い親が、精神科医や専門窓口に相談することになります。
ひきこもりそのものは病気ではありませんが、精神科も相談できる場所の一つです。ただ医療機関の場合、本人抜きで家族だけの相談を受け付けていないところもあるので、あらかじめ確認が必要ですし、まずは各都道府県の「ひきこもり地域支援センター」や「精神保健福祉センター」の窓口で相談するとよいでしょう。
親御さんは家族会などに参加することで、社会との接点を増やしていきます。同時に、適切な対応術を身に付け、本人と関わるようにします。
●ひきこもり地域支援センターの設置状況(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000515493.pdf
相談に行った段階から、そのことは本人にも伝えます。本人がやめてくれと言っても子の心配をするのは親として当然のことなので、親のわがままで押し切っても結構。相談内容もそのまま伝えてかまいません。
そうしたことを続けているうちに、本人も少しずつ変化してきて、受診につながり、個人療法、次いで集団療法(当事者グループが集まる場所でデイケアや自助グループへの参加など)へと進みます。ここまでくれば、ソーシャルワーク(就労など具体的な社会参加の試行段階)も可能になっていきます。こうした段階的対応が本来望ましい支援の方法です。
――親の「適切な対応術」とはどのようなことでしょうか。
斎藤さん 共感的に接すること、対話を続けること、そして、高齢化問題に対しては、恥や世間体を恐れず、障害者年金や生活保護の受給も視野に入れて、親と子でお金の話をきちんとしておくことです。言ってみれば、「本人が安心してひきこもれる関係づくり」をすることが、親御さんの役目です。
こう言うと、「安心させるだって? 逆効果ではないのか」と思われるかもしれません。ですが、多くの家族はそれと逆のことをして失敗してきています。これまでも「お金がなくなったらどうするのか」「親が死んだら生きていけないぞ」と、本人の不安をあおってきていないでしょうか。しかし、本人の気持ちとすれば、最初はひたすら「放っておいてほしい」「構わないで」に尽きます。誰よりも本人自身が、恥じているのです。
現代人にとって働きたいと思うのは、基本的に「他者から尊敬されたい」という承認欲求のためです。マズローの欲求段階説では、生理的欲求(食べていけることなど)、安全欲求(批判・非難されないなど)、関係欲求(孤立しない・家族関係の安定)を、満たしてあげなければ、承認欲求(就労動機)につながりません。だからこそ、「安心してひきこもれる関係」が必要なのです。
軽いおしゃべりでいい 対話が関係性を変えていく
――親御さんの接し方としては、共感と対話が大事なのですね。進め方のポイントはありますか?
斎藤さん ひきこもりが長期に及んでいる場合、親御さんの夫婦関係にも問題が生じていることが少なくありません。難しいかもしれませんが、夫婦関係の修復をし、基本的対応を共有して協力し合うことが大事です。
また、共感的に接するということは、ひきこもり状態を丸ごと受容すること、否認しないことです。説得・議論・叱咤(しった)激励、アドバイスなどは、逆効果でしかないのでやめること。そして「対話」を試みることが重要です。特に「対話」は、非常に有効な手段になり得ます。対話を続けただけで、ひきこもりの解決につながった例もあります。
親御さんは、言い聞かせたい気持ちを抑え、当人が生きづらさと孤立の中で日々葛藤していることに思いを寄せながら、共感的に接することや対話をすることを忍耐強く続けましょう。このステップは、「最初の地ならし」として、どうしても避けて通れない手続きだと思ってください。
――対話は、通常の日常会話とは違うものなのでしょうか。長い間、断絶に近いような関係性だった場合、声をかけるのも難しい。そんなときは何から始めればよいでしょうか。
斎藤さん 不自然さやぎこちなさを恐れず、やり取りを続けていきましょう。挨拶、頼み事、相談などをきっかけにするといいですね。ディスカッションではないのですから結論は出さずに、軽いおしゃべりという感じで続けていくほうが対話的と言えます。以下の「良い対話の条件」を参考にしてみてください。
【良い対話の条件】

●対等であること
●安心・安全であること
●(できれば)3人以上であること
●話をしっかり聴き応答すること
●話題は、不要不急の、役に立ちそうもない、くだらなくてすぐに忘れてしまうようなことが望ましい
●主観的な感想を伝え合うだけでいい
●結論を出してしまわないこと
●目的は対話を続けることにある
こうした働きかけをしていくと、最初は「こうなったのは親のせいだ」といううらみつらみや反発が出てくることもあります。しかし、それは表面的なことで、裏には「苦しい」「助けてほしい」という本音が隠れていたりします。十分に耳を傾け、本人はどんな気持ちを味わっているのかに関心を向けましょう。
弱音を吐けるような関係性というのは、責められたり、拒否されたりしない、安心してそこにいていいと思える関係です。信頼関係ができてくれば、本人も少しずつ変化してきます。「助けてもらえるなら、受診してもいいかもしれない」と、当人の気持ちが変わってきたら、一歩前進です。
◇   ◇   ◇
ひきこもり対応における親の役目は、本人が安心してひきこもれる関係づくり。子が親に弱音を吐けるような関係性になってこそ、ひきこもっている子の傷ついた心が癒やされ、凍った心が溶けていく。そして、次のステップである受診や支援機関へつながる段階へと進むことができる。そのための具体的な対応の一つは対話を続けることだが、もう一つは「親亡き後のお金の話をきちんとしておくこと」だ。次回は、なぜお金の話が重要なのか、またライフプランの立て方、きょうだいの関わり方について、伺っていく。



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