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「アクリル板」実は感染対策に逆効果だという衝撃

2021-09-03 13:30:00 | 日記

下記の記事は東洋経済オンラインからの借用(コピー)です。

新型コロナウイルス感染対策で、ネイルサロンから学校までさまざまな場所にプラスチック製の仕切りが設置されるようになった。直感的には、アクリル板はウイルスを防いでくれているように思える。
しかし、エアロゾル(空気中を浮遊する微小な粒子)や気流、換気の専門家によると、多くの場合、仕切りは感染対策に役立っておらず、人々に誤った安心感を与えているにすぎない。それどころか、場合によっては感染の拡大につながるおそれすらあるという。
研究によると、レジカウンターの店員を保護する仕切りのせいで、ウイルスがほかの従業員や客に向かう場合がある。透明なアクリル板が何列も並んでいるネイルサロンや教室のような場所では、正常な気流や換気が妨げられているケースもある。
仕切りで生まれる「死角」にウイルスが充満
店舗、教室、オフィスでは通常、呼気に含まれた粒子は気流に乗って分散し、別の場所に運ばれていく。換気システムにもよるが、およそ15〜30分ごとに新しい空気に入れ替わるのが一般的だ。ところが、アクリル板を設置すると正常な換気が妨げられ、ウイルスのエアロゾル粒子が蓄積して高濃度になる「デッドゾーン」が生まれることにもなりかねない。
バージニア工科大学のリンジー・マー教授(土木環境工学)は「仕切りが林立した教室では、正常な換気が妨げられている」と指摘する。同氏は空気感染に関する世界的な専門家の1人だ。「エアロゾルが仕切りにつかまって蓄積され、最後には机の領域の外に広がっていく」。
確かにアクリル板が感染防止に役立つとみられる場面もある(ただし、効果はさまざま変数に左右される)。例えば、仕切りは咳(せき)やくしゃみをしたときに飛び散る大きな飛沫をブロックしてくれる。ビュッフェやサラダバーにプラスチック製のガードが設置されていることが多いのも、そうした理由からだ。

それでも新型コロナウイルスの感染は、主に目に見えないエアロゾルを介して広がっている。アクリル板の効果についての実証実験はまだ少ないが、アメリカとイギリスの科学者が始めた研究では、感染防止に逆効果となりうることがわかってきた。
ジョンズ・ホプキンス大学の研究者が中心となって6月に発表した研究はその1つで、教室に設置された仕切りによって感染リスクが高まることが示された。マサチューセッツ州の学区で行われた研究では、事務局に設置された側面付きのアクリル板によって空気の流れが妨げられていたことがわかった。
さらにジョージア州の学校を対象にした研究では、机に設置した仕切りは、換気の改善やマスクの着用に比べ、ほとんど何の感染予防効果ももたらしていないことが明らかになった。
新型コロナのパンデミックが始まる前の2014年に発表された研究では、パーティションで区切られたオフィスのキュービクルが、オーストラリアで結核が流行した際に感染拡大を助長した要因の1つだった可能性が指摘されている。
咳など大きな粒子には効果があるが…
イギリスの研究者チームは、店舗の客など仕切りの反対側にいる人が話をしたり咳をしたりしたときに吐き出す粒子の動きを、さまざまな換気条件でシミュレーションするモデル研究を行った。その結果は次のとおりだ。
咳をしている場合には大きな飛沫が勢いよく飛んで仕切りにぶつかるため、アクリル板の有効性は高まる。しかし、話をしている場合に吐き出された粒子はアクリル板にひっかかることなく浮遊する。仕切りのおかげで粒子が店員に直接かかるのは防げたとしても、粒子は部屋の中を漂うため、店員などは汚染された空気を吸い込む危険にさらされる——。
「大きな粒子はブロックできても、小さなエアロゾルは仕切りを乗り越えて移動し、およそ5分以内に室内の空気と混ざり合うことが私たちの研究で示された」とリーズ大学(イギリス)のキャサリン・ノークス教授(建築環境工学)は語る。「つまり、人と人との交流が数分以上続けば、仕切りがあったとしても、ウイルスにさらされる可能性は高くなる」。
大半の研究者は、仕切りは極めて限定的な状況でしか役に立たないと口をそろえる。例えば、床から天井まで届くアクリル板で客席と遮断されたバスの運転席がそれに当たる。こうすれば、運転手は乗客の呼気をあまり吸い込まなくてすむだろう。ガラスの壁で仕切られたアメリカの銀行の窓口係や、同様にガラスの向こう側にいる病院の事務員も、少なくとも部分的にはウイルスから守られているといえそうだ。
学校やオフィスにアクリル板を設置したときの影響を確定するにはさらなる研究が必要だが、取材したエアロゾル専門家の全員が「机のアクリル板が感染防止に役立つ可能性は低く、部屋の正常な換気を妨げる可能性が高い」という見解で一致した。条件によっては、アクリル板のせいでウイルスの粒子が部屋に蓄積することにもなりかねないという。
エアロゾルの専門家は、学校や職場は仕切りではなく、効果の実証された対策に集中すべきだと話す。ワクチン接種可能な学生や従業員に接種を奨励したり、換気を改善したり、必要に応じてHEPAフィルターによる高性能な空気清浄機を導入したり、マスクの着用を義務付けたりする、ということだ。
生兵法はけがのもと
問題は、オフィス、レストラン、ネイルサロン、学校などに設置されている仕切りの大部分が、空気の流れや換気を評価できる工学専門家の助言なく設置されていることだと専門家は言う。
もちろん、アクリル板が設置されているのを見てパニックになる必要はないが、アクリル板によってウイルスから守られていると錯覚してもならない。仕切りのある環境にいる従業員や学生は感染リスクを下げるためにマスクを着用し続けるべきだ、とカリフォルニア大学デービス校のリチャード・コルシ次期工学部長は言う。
コルシ氏によれば、「部屋の中の空気の流れはとても複雑だ。家具の配置、壁や天井の高さ、通気口、本棚の位置など、部屋にはそれぞれの違いがあり、そうした違いのすべてが、実際の気流や空気の分布に大きな影響を与える」。
(執筆:Tara Parker-Pope記者)
(C)2021 The New York Times News Services



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