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日本が「がん大国」になった本当の理由

2021-08-18 08:30:00 | 日記

下記の記事はヨミドクターオンラインからの借用(コピー)です

現在、日本人男性の3人に2人、女性でも2人に1人が、生涯でなんらかのがんに 罹かか っています。日本は有数のがん大国となりましたが、その理由を考えてみたいと思います。
がんは「遺伝子の老化」
 私たちの細胞の設計図であるDNAには、遺伝情報が暗号のように保存されています。暗号として使われている 文字は4種類の塩基(A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン)の対からできており、A-TまたはG-Cの塩基対が存在します。ヒトでは、この塩基対の数は約30億個であることが分かっています。そのうち、実際にたんぱく質合成のもとになる遺伝子の数については、科学者間での合意はできていませんが、2万1000個程度と予測されています。
 そして、この遺伝子はただ生きているだけで傷ついていきます。ものは必ず経年劣化を起こしますから、当然です。とくに、特定の遺伝子に傷(突然変異)ができると、細胞は止めどもなく分裂を繰り返すことになります。こうした遺伝子には、細胞の分裂を止める働きをする「がん抑制遺伝子」や、細胞の分裂を進める「がん遺伝子」があります。
 突然変異によって、がん抑制遺伝子が働かなくなったり、がん遺伝子が異常に働き続けたりすると、細胞は死ぬことができなくなり、異常な増殖が続くことになります。
 そして残念ながら、年齢とともに、がん抑制遺伝子やがん遺伝子に突然変異が積み重なっていき、がん細胞が発生しやすくなります。一言で言えば、がんは「遺伝子の老化」と言ってよい病気です。
遺伝子の病気だが、多くは後天的に生じる
 なお、がんは遺伝子の病気ですが、遺伝する病気とは言えません。確かに、生殖細胞の遺伝子の異常が代々受け継がれて、特定のがんを発症しやすい家系も存在します。米女優のアンジェリーナ・ジョリーさん(44)もその一人で、血液をとって、遺伝子検査を行った結果、BRCA1という遺伝子の異常が発見されたため、両方の乳腺組織と卵巣を「予防的」に切除しています。
 すべての遺伝子は父母から一つずつ受け取りますが、ジョリーさんの場合、母親から受け継いだBRCA1遺伝子に異常があったようです。彼女の身体のすべての細胞は、異常なBRCA1遺伝子を持った卵子と正常な精子が合体した受精卵から作られましたから、血液細胞を採るだけで、この遺伝子の異常が分かったのです。
 しかし、こうした「家族性腫瘍」はあくまでがん全体の5%に過ぎません。ほとんどの場合、「遺伝子のキズ」は、私たちの身体の細胞(体細胞)に後天的に生じるものです。健康な人の体でも、毎日、多数のがん細胞が発生していることが分かっていますが、免疫細胞が水際でこれを殺してくれています。
急ピッチの増加に、国民も行政も追いつかず
 がん細胞は、もともと私たちの正常な細胞から発生していますので、免疫細胞にとって「異物」と認識しにくい傾向がありますし、年齢とともに「免疫力」も衰えていきます。年齢とともに遺伝子に突然変異が積み重なって、がん細胞の発生が増え、その一方で、免疫細胞の働きは衰えるのです。がんとは一種の「老化」であり、日本人が長生きになったことが、わが国でがんが急増する理由なのです。そして、日本に特徴的なことは、高齢化が史上空前のスピードで進んだことです。
 現在、65歳以上の高齢者が、人口全体に占める割合は約28%とダントツの世界一。高齢化のスピードも、歴史上、最も速いペースです。簡単に言えば、欧米社会では50~100年くらいかかった高齢化が、わが国では20~30年で起きているのです。その結果、がん患者の増加も例を見ないスピードとなりました。この急ピッチのがんの増加に、個人の知識や心がまえ、さらには行政、教育などが追いついていないのが、今の日本の姿だと言えるでしょう。
ぜひ「オトナのがん教育」を
 全国の小・中・高校で「がん教育」が始まっています。あと30年もすれば、日本でのがんによる死亡は、減少に転じるはずです。しかし、オトナはもう学校に行けません。がんという病気は、わずかな知識があるかどうかで運命が分かれる病気ですから、これでは、世代間の不公平につながります。「オトナのがん教育」はぜひ、この連載で受けてください!(中川恵一 放射線科医)
中川 恵一(なかがわ・けいいち)
 東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。
 1985年、東京大学医学部医学科卒業後、同学部放射線医学教室入局。スイスPaul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、社会保険中央総合病院(当時)放射線科、東京大学医学部放射線医学教室助手、専任講師、准教授を経て、現職。



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