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「初めて切断した患者さんの足を持った時は…」 手術室看護師“オペ看”の仕事が想像以上に壮絶だった件

2021-04-23 15:30:00 | 日記

下記の記事は文春オンラインからの借用(コピー)です

「小学校の頃、通学路の途中に動物の死骸があって。それが日に日に腐っていったんです。ずっと片付けられず、ハエとかがたかっていて…その臭いが頭の中にずっと残っていた。初めて糖尿病の患者さんのアンプタ(※四肢切断術)のオペに付いて、切断した足を持った時、その重さに驚いたり、患者さんのことを考えて切ない思いが浮かんだ一方で、その臭いもリアルにフラッシュバックして。『あ、あの時と一緒だ』って思ったんですよね」
 そんな風にかつての経験を語ってくれたのは、現在ヤングマガジン(講談社)で漫画『オペ看』を連載中の人間まおさんだ。人間まおさん 
 同作のタイトルにもなっている「オペ看」とは、手術室看護師のこと。多くの人が「看護師」という言葉で想像する外来や病棟で患者のケアをする病棟看護師とは異なり、仕事のフィールドは医療の最前線でもあるオペ室の中だ。
 では、実際にオペ室の中ではどんなことが起きているのだろうか? また、オペ看の仕事とはどんなものなのだろうか? コロナ禍の中で注目が集まる医療業界の知られざる分野について、自身もオペ看として働いていたまおさんに話を聞いた。
オペ室を希望した新人はひとりだけ!
――もともとまおさんがオペ看を目指した理由は何だったんでしょうか?
まお 専門学生の時にいろんな病棟を実習で回るんですけど、担当してくれた看護師さんに怖い人が多くて、自分が病棟で看護師をやっていけるのか不安になっていました。だけど、手術室の見学に半日だけ行ったとき、ついてくれた看護師さんがすごくいい人だったんです。自分は結構グロいものへの耐性もあったし、「普通の病棟よりもそっちの方が自分の性に合っているのかな」と思ってオペ室を希望しました。 
――いきなりオペ看を志望する人は少ないのでは?
まお その年は新人が50人入ったんですけど、オペ室を希望したのは私ひとりだけでした。まずは病棟で看護師の「一般的な仕事」を身に着けてからオペ室に行く、という流れが多いんだと思います。オペ室での作業に関しては、私が通っていた専門学校ではほとんど学ぶことがありませんでした。実際に手術をやりながら覚えていくしかないんです。みんなそういうことも分かっているので、いきなりオペ室みたいな情報の少ないところには行かず、学生時代の知識を活かせる病棟から始めるという人が多いですね。
 ただその分、私は現場で手厚く指導してもらえたと思います。その日、その日で毎日勉強して、調べて…。責任がすごく重いなって思いましたね。オペ室に入るというのは自分の動きが患者さんの命に直結するし、何か一言言わなかっただけで大事件になったりもする。すごくプレッシャーはありました。
最初の現場は「ドクターにめちゃくちゃ怒られた」
――いきなりこれまで経験したことのない業務に入るんですね。最初に経験したオペはどんなものだったんでしょうか?
まお まず見学させてもらったのは心臓の手術でした。そこで初めて生の心臓をみたんですけど、その時は感動しましたね。なんというか…人間の身体って凄いなって思いました。心臓とかって、「ドクンドクンと動いている」くらいのイメージしか頭になかったんですけど、実際にこんなに力強く動くんだ。本当に生き物みたいな感じで動いているんだな…と思いました。
――実際に現場に出た最初のオペも覚えています?
まお 腸の癌の患者さんの手術だったんですけど、それもよく覚えていますね。ドクターにしょっぱなからめちゃくちゃ怒られたんです。先生に器具を取るように言われたんですけど、緊張しすぎてその器具を探すのに必死になっちゃって…。そしたら「ちゃんとわかったなら返事してよ!」と怒られましたね。
――最初でも容赦ない! なかなか怖いですね。
まお でもウチにいた先生は、まだ優しい方かもしれないです。他の病院から来た人に聞くと普通に「死ね」とか言ってくるドクターもいると聞きましたから(笑)。その先生の手術は「公開処刑」って呼ばれていて、モノが飛んでくることもあったらしいです。まぁ先生はそれだけプレッシャーがかかっているんだと思います。
オペ看の仕事は「器械出し」と「外回り」
――まさに戦場なんですね…。オペ看の皆さんは実際に術中、どんな仕事をされるんですか?
まお 大きくわけると仕事は2つあります。1つは、よく医療モノのドラマや映画でやっているような、メスやセッシなどの器具をドクターに渡す「器械出し」と言われる作業。もう1つは「外回り」と言われる作業です。大まかに仕事内容を説明すると「器械出し」以外の部分ですね。患者さんは手術中に喋れないので、体に神経障害が起こっていないか、患部は圧迫されてないか、出血量はどうか…といったことを確認します。だいたいその二手に分かれて、二人一組でつくことが多いですね。
 ちなみに「器械出し」の方が普通の人にはイメージしやすいでしょうし、器具も100種類以上あって確かに簡単ではないんですけど、本当に難しいのは「外回り」の方だと思います。外回りは判断力や経験がすごく必要なので。
いまだに夢に出てくる「切断された足」
――冒頭でも仰っていましたが、漫画の中では糖尿病の患者さんのアンプタ(四肢切断術)で、初めて切断された足を持った時の衝撃を描かれていました。
まお いまだに夢に出てきたりとかしますよ。臭いもすごかったですし、組織が壊死しているのでブニョっとした独特な感触で、脛から下の部分だけを持ったはずなのにずっしりと重かった。かなりの衝撃でした。Twitter とかでも同じオペ看をやっているという人からコメントをもらいましたけど、「このオペはずっと慣れない」と言っている人が結構いました。漫画『オペ看』より
――他に印象に残っているオペはありますか?
まお 妊婦さんのカイザー(帝王切開)は何回ついても緊張するし、感動しましたね。カイザーって、出るまでがすっごい早いんですよ。5分ぐらいで、もうパッと出てきて。だからこっちも「赤ちゃんだ!」とか感動している時間がないんですよね。「出たらすぐ止血!」みたいな感じなので。
 首にへその緒が巻きついていたりすると、泣き声が聞こえなかったりするのですごく心配になったりするんですけど、気にしている暇もない。とにかくこっちはバーッと器械出しをして、ふっと「大丈夫かな…」みたいな。そういう風にドキドキしながらオペについていました。
心臓外科のオペ前日に行った誕生日デートは…
――ちなみにまおさんが一番大変だったオペは何ですか?
まお 心臓外科のオペが一番、苦手で…。時間も長くて手順を覚えるのが大変だし、器械の種類も多い。ドクターもめちゃくちゃ怖い(笑)。血流を止めるので部屋もものすごく寒いし、重圧もすごいので、とことん疲弊してしまうんです。「お金払うから代わってほしい!」と思うぐらいで。だいたい心臓外科のオペの予定が1週間ぐらい前に決まるんです。そうなるともうそこから毎日、憂鬱でした。どれだけ準備しても足りない気がしちゃうんです。
 1回、自分の誕生日の次の日に心臓外科のオペが入っていた時があって。当時、付き合っていた彼が誕生日デートに連れて行ってくれたんですけど、もう気持ちが全然入らない。「こんなこともういいから家に帰って予習させてよ…」みたいな感じでした。せっかくサプライズ演出までしてくれたのに、オペのことで頭がいっぱいで「夜景どころじゃない!」みたいな(笑)。手順書とか全部写真で撮っていって、ちょっと空いた時間にもずっと予習して…そのぐらい心臓の手術は苦手でしたね。ただ、その分手術が終わって患者さんを無事病棟へ送り出した時の達成感は大きかったです。
リアルドクターXには「 使えねぇな、本当に」
――心臓は特に生死に直結する臓器なので、重圧もすごいんですね。ドラマの『ドクターX』のように「失敗しないので」とはなかなかいかない。
まお あ、でも似たような感じの脳外科の先生はいました。体がでかくてどしどし歩くタイプの女医さんで。しかも「あの先生には新人はついちゃいけない」っていう決まりがあるくらい、新人が大っ嫌いなんですよ。1回、新人時代にその先生のオペを見学しに行ったことがあったんですけど、ちょうど先輩が抜けちゃった時に「この器具出して欲しいんだけど」って話しかけられて。「まだ入ったばかりで今日は見学なので、できないんです」と言ったら「これだから新人は嫌いなんだよ! 使えねぇな、本当に」とか言われて(笑)。「怖ぇ…」って思いました。「そんなのシャっと出せばいいじゃん!」とか言われました。
――毎回、そんな感じだとスタッフも心労がすごそうです…。
まお でもみんなが思っている程、雰囲気は暗くないんですよ。そうじゃないと逆にやってられない部分もあるのかもしれません。「非日常」が「日常」になっていく感じで…。だから医療ドラマの手術シーンを見ると「空気重いなあ」とか思いますね(笑)。もちろんそういうオペもあるんですけど、もうちょっとこう、サバサバとしている。やわらかくてあったかい感じです。
 私は病棟も経験があるんですけど、そういう意味では断然、オペ室の方がよかったですね。なんというか…「チーム」という感じがすごく強かった。1人の患者さんに対して、スタッフ全員が「お願いします」と言って始まって、みんなで手術して。部活とかで一致団結するときに似ているかな。みんなで協力して「私これやります」「これ取ってきます」「●●先生呼んできて」「ハイ」みたいな。すごいチーム感が強くて好きでした。️
漫画を通して、オペ看の仕事がどんなものなのか知ってほしい
――オペ室の「チーム」みんなで必死に患者さんを助けようとする…というのは、とても熱量がありますね。
まお 一般的に病院の「花形」ってオペ室だと思うんです。ドラマとかテレビとかで取り上げられることも多いですし、本当に最前線。でも、私も最初は看護師の仕事としてオペ看を知らなくて、「救急とかカッコいい!」とか思っていました。
 実際、オペ看は患者さんをケアしつつドクターとも対等に渡り合って行かなきゃいけない。そんなすごいところで働いている人たちがいるのに、このまま誰にも知られずに、「メスを渡すだけの人」みたいな印象で終わらせるのはもったいないなと思って。だからこそ、この『オペ看』という漫画を通して、オペ室で働いている看護師の仕事がどんなものなのか知ってほしいですね。



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