下記の記事はダイアモンドオンラインからの借用(コピー)です
中国では
「日本の長寿」にまつわる話題が多い
最近、中国の新聞やSNSに、WHOが発表する最新の《World Health Report》から一部を切り取ったランキングの画像が多く、出回っている(※筆者注:中国で出回っているこのランキングのデータはどうやら最新のものではなく、少し過去のもののようである)。
このランキングは平均寿命に関するもので、日本が1位(20年連続)で、中国は64位と解説されている(※筆者注:中国で出回っているランキングデータによる)。これは、WHOが「医療水準」「医療を受ける難易度」「医療費負担の公平性」「平均寿命」などの項目を総合に評価した結果という。そして、このランキングの画像と一緒に、いろいろな角度から「日本人の長寿」について解説した記事もたくさん目につく。
見出しは、「日本はなぜ健康国なのか?」「日本人の長寿の秘訣」「あまり運動しない日本人は、なぜ世界一長生きしているのか」など、大勢の人々の目を引くようなものが付けられている。
そもそも中国では、「日本の長寿」にまつわる話題が多い。「長寿の要因」を探ることも、今に始まったものではない。
筆者は仕事上、中国の医療や介護関係者らと交流することが多い。また、日本に住んでいることもあり、中国の医療・介護関係者との会話では、この手の話題が出ることも多い。
実際、彼らが来日して、まず驚くのが、日本人に肥満が少ないことだ。「ビール腹の男性があまりいない!」「おばあちゃんでも細い、だからスカートも似合うのだ!」などと口を揃える。そして、日中の平均寿命の差に感嘆する。同じアジア人で、隣国同士なのに、中国の平均寿命は日本と比べると、約7〜8歳も短いからだ。
現在、中国人の平均寿命77.3歳に対して、日本は84.2歳である。昨年、中国政府が発表した「第14次5カ年計画(2021年〜2025年)」では、国民の寿命について、2025年までに「全国民健康増進運動を幅広く展開し、平均寿命を1歳延ばす」との目標を打ち出している。
3月11日に閉幕した、中国でもっとも重要な会議である「全国人民代表大会(全人代)」では、ある代表が、「国がNMN抗老化(若返り)の健康食品などの研究開発を強化しなければならない。関連企業への支援が必要だ」と提案したことも話題となった。
高齢化が急速に進んでいる中で、ヘルスケア市場の規模は2030年には16兆人民元に達すると予測されている。特に最近は、コロナ禍の影響で、「自分の体は自分で守るしかない」という危機感から、人々が以前より強く健康に気を付けるようになった。今、「健康」への意識は非常に高まっており、空前の「健康ブーム」が起きていると言っても過言ではない。
中国のメディアが分析している
日本人の長寿の原因
こうした事情に加え、先述のWHOのレポートがあったことで、再び日本は「長寿大国」として注目を集めている。数々の報道や記事を見ると、日本の「長寿の要因」については、おおむね次のような感じに分析されている。
「日本政府は1978年からの『第1次国民健康づくり対策』や、2000年からの『健康日本21計画』などで、がん検診や循環器検診などの健康診断を重視してきた。国民に毎年無料で健康診断を提供し、疾病の早期発見と早期治癒を積極的に行っている。
加えて、日本の医療水準が世界的にみても、レベルが非常に高い。このような政策があったこと、プラス日本国民の健康意識が高いこと、さらには生活習慣や文化も一役買っているため、結果的に日本の平均寿命は著しく延びたという結果につながっているのではないだろうか」
具体的には、以下の8項目が「日本の長寿の要因」として挙げられている。
(1)空気と水がきれい
空が青く、水道水が飲める。都会だけでなく、田舎でも、いたるところが清潔である。
(2)毎日歩行するよう心掛けている
日本人は車の保有率が高いが、普段は公共交通機関を利用することが多い。また、人によっては、目的の駅より一駅手前で降りて、歩く習慣を身につけている。そして、100人当たりの自転車保有率は日本が世界で上位を占めている。歩行と自転車が健康に役立っているのだ。
(3)何事も八分でいい
何事も8割の力で、残りの2割は、余力として別のことのために残す。余力を蓄積することが大事だ(※筆者注:中国に出回っている多くの記事によると、日本のサイエンスライターで医師の賀志貢氏が提唱する「0.8ライフ学」の理念を実行したものという)。
(4)日常的に入浴の習慣がある
日本人は、恐らく世界で一番お風呂が好きな民族であろう。温泉資源も豊富で、入浴には強いこだわりを持っている。入浴は、血行が良くなり、新陳代謝の効能がある。
(5)日本人は心が穏やかである
日本人は、丁寧かつ礼儀正しく人と接している。街角で喧嘩(けんか)や殴り合う風景は見ない。怒らないことは、脈拍、呼吸、血圧、消化液の分泌が安定することにつながる。幼い時からマナーを教育することがいかに大事か実感する。
(6)企業が社員の健康を管理している
2008年4月から、日本ではメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予防・改善を目的とする「特定健康診断・特定保健指導」が始まり、企業が社員に細かなサポートを行っている。例えば、毎年の健康診断で、社員のウェストのサイズをチェックし、男性は85センチ、女性は90センチを超えてはいけない。
(7)政府が健康に関する啓もうと普及活動を盛んに行う
日本政府はあらゆるチャンネルを使って、国民に健康的な生活を送ってもらうため、宣伝や指導をしている。たとえば、ラーメンを食べる時にスープを半分残そうとか、1日に6グラム以上の塩を摂取しないようにと呼び掛けている。
(8)食習慣が長生きの一番大きい要因となっている
◎低カロリー、1日30品目の食材使用
日本人は、カロリーにはすごく気を遣っている。普通の街の飲食店でもメニューにカロリーを明示している。そして、よく生ものを薄味で食べるため、新鮮な食材が使われている。
なによりも、国が一日に30種類の食材を食べた方がよいと提唱しているため、多くの主婦がそれを基準に食事を用意している。
◎腹八分を守る
日本料理の代表である懐石料理のように、日本の食事はお皿の数(料理の種類)が非常に多い代わりにひと皿に盛る料理の量が少ない。そうすると、たくさん食べたと錯覚し、腹八分でも満腹を感じやすくなる。
◎朝食を重視、外食が少ない
日本の食事文化の中で、朝食がもっとも重視されている。日本の主婦たちは、毎日早起きして家族に朝食づくりに励んでいる。多くの家庭では、子どもは朝食を食べ終えないと学校に行けない。また母親手作りの弁当を持って登校する子どもが多い。
◎無水料理や油を使わないヘルシーな調理法
日本では塩分や油を多用しない、無水調理などヘルシーな料理法が一般的である。実際、油がなくても、和え物、蒸し料理、煮物ならできる。そうすることで、食材が本来持っている栄養素が残るのだ。
◎海産物をよく食べる、緑茶や納豆が好き
豊富な海産物がとれるため、日本人はお米より魚を食べる量のほうが多い。そして、わかめや昆布などの海草類もよく食べられている。
◇
以上は、中国人が持っているイメージだ。むろん、すべてが正しいとは言えないだろう。しかし、少なくとも日本では、中国のようにたっぷりの油を入れて強火で食材を炒めるという調理法はあまり一般的ではない。
筆者は、ときどきかつお節や煮干しで取っただしをベースに作った料理を、中国のウィーチャート(中国版ライン)のモーメンツに「一滴の油も使わずにできた夕食」を謳い文句にして、写真を載せて投稿する。すると、中国からいつも多くの反応が返ってくる。
長生きの原因に
「日本人は性に意欲的だから…」という指摘も
また、上記の8項目にはあえて入れなかったが、筆者がネットやSNSで見かけた「日本人の長寿の原因」の中には、「日本人は性に対して意欲的で、奔放だからだ」などという指摘もたくさんあった。これは、女性のヌード写真や高齢者の性行為を推奨するような記事が入った男性誌などが堂々と販売されているからであろう。こうした雑誌類は、中国では販売されていない。日本のAVも主演のAV女優に美人が多いことで、中国では有名である。
日本人にしてみれば、当たり前の生活習慣や食生活が、中国人の関心対象になるということは意外であると思うが、このように他国の事情に、興味や関心を寄せるのは、お互いの国にとっていいことであろう。中国は、日本を参考に「健康な国づくり」を目指しているが、今後は日中の両国とも「単なる長生き」ではなく、「健康寿命をどう伸ばすのか」が共通の課題になっていくのは間違いないであろう。
実際、日本でもたびたび議論となっている「延命治療の是非」や「欧米に比べると寝たきりの高齢者が多い」などといった課題についても、日中で共有されて、解決策が話し合われることを願いたい。
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