糖尿病性ケトアシドーシスの診断と管理のための血中ケトン体測定をめぐる論争
Diabetes Care 2022; 45: 267-272
糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis: DKA)の診断と管理において、尿ケトン体よりも血中ケトン体の測定が確立された手段となっている。しかし、この検査をいつ、どのように用いるべきかについては、糖尿病ガイドライン間でかなりの格差が残っている。
最近のガイドラインでは主に血液測定が強調されているが、それでもいくつかの問題が残っている。多くの検査室ではいまだに半定量的な検査法を用いて血中ケトン体を測定しているが、この検査法では主要なケトン体である β-ヒドロキシ酪酸(β-hydroxybutyrate)は測定されないため、患者の管理に支障をきたす可能性がある。β-ヒドロキシ酪酸が測定されたとしても、DKA の診断や除外に用いられるカットオフ値に関するエビデンスは限られており、重症度、治療経過、寛解の評価に用いるられる場合についてもカットオフ値は完全には明らかではない。
最後に、β-ヒドロキシ酪酸測定のために検査室の代わりにポイントオブケア (point of care: POC) 測定器を使用することは、疑いようのない利点をもたらすが、このアプローチには独自の課題がある。
本稿では、現在の推奨事項を補完し、今後の研究が DKA における β-ヒドロキシ酪酸の使用をどのように改善するかを示唆するために、これらのトピックに関する視点を提供する。
1. はじめに
血中ケトン体測定は、DKA の診断と管理をサポートする検査法として確立され、臨床現場では尿中ケトン体の使用にほぼ取って代わっている。ケトン体測定は、先天性代謝異常の調査やケトジェニック食に対する反応性の評価など、他の臨床場面でも使用されているが、これらの適応については本稿では触れない。
この検査は一般的に広く採用されているにもかかわらず、この検査の使用に関連して、以下のようないくつかの未解決の疑問が残っている。
1.血中ケトン体測定は DKA の初期診断の中心的な評価項目として使用されるべきか?
2. 血中ケトン体測定にはどのような検査が望ましいか?ニトロプルシド反応を用いるべきか、3-ヒドロキシ酪酸を特異的に測定すべきか?
3. 推奨される診断と管理のための血中ケトン濃度の閾値を支持するエビデンスは何か?
4. 測定は検査室で行うべきか、POCT(point-of-care test)として行うべきか?
本稿では、このような疑問に答えるために、現在の主要なガイドラインを含む既存の文献をレビューし、エビデンスが乏しい場合の欠陥(したがって研究の機会)を明らかにした。
2. DKA の診断と管理における血中ケトン体測定
ケトアシドーシスとは、アセト酢酸イオンと β-ヒドロキシ酪酸イオン、およびそれに付随する等モル量の水素イオンの過剰産生に起因する代謝性アシドーシスのことである。
したがって、DKA の診断と重症度は、pH や HCO3 への影響よりも、血中ケトン体の定量的測定が最も有効であるか、少なくとも補完的であると考えられる。実際、乳酸アシドーシスのような他の酸塩基障害や、ケトアシドーシスに対する代償が pH や HCO3 の値に影響し、ケトーシスが臨床像全体に寄与する程度を過大または過小評価する可能性がある。
2009 年の米国糖尿病学会(American Diabetes Association: ADA)のコンセンサスガイドラインでは、DKA の生化学的診断を下すために尿中または血中ケトン体の存在を要求しているが、このガイドラインでは患者の高血糖(グルコース >250 mg/L [13.9mmol/L])、動脈 pH、血清重炭酸濃度、アニオンギャップに主に焦点を当てている。DKA の有無は、pH、重炭酸塩、アニオンギャップによって判断され、血中ケトン体については、ニトロプルシド反応を用いた測定によって定義されるように、すべての症例で陽性であるべきであるというだけのことである。
ニトロプルシド法のいくつかの限界はガイドライン(後述)に記載されているが、これはおそらく、その後に血中 β-ヒドロキシ酪酸測定が "可能であれば...診断に有用であろう "と記載されている理由を説明するのに役立つであろう。ADA、米国臨床内分泌医会(American Association of Clinical Endocrinology: AACE)、内分泌学会、小児内分泌学会、JDRF インターナショナルを含む 8 つの専門組織による最近のコンセンサス文書では、DKA 診断に血中ケトン体と尿中ケトン体のどちらを用いるかの区別や優先順位は記述されていない。
対照的に、2011 年の ADA と米国臨床化学会の検査ガイドラインでは、DKA の診断と経過観察のために血中 β-ヒドロキシ酪酸を測定することを全面的に支持する一方、この目的のために尿中ケトン体を使用しないことを明確に推奨している。彼らは、ニトロプルシド反応に依存する血中ケトン体を DKA 診断の補助的なものとしてのみ使用し、DKA 治療のモニタリングには使用しないことを推奨している。
英国の JBDS(Joint British Diabetes Societies:英国糖尿病合同学会)のガイドラインでも、妊娠中や部分的に DKA 治療を受けている患者、そして現在では Na-グルコース共輸送体 2(sodium glucose cotransporter 2: SGLT-2)阻害薬を処方されている患者に多い正常血糖ケトアシドーシスをより容易に同定できるなどの理由から、尿ケトン検査よりも血中 β-ヒドロキシ酪酸の使用を推奨している。おそらく SGLT-2 阻害薬の使用頻度が増加しているため、このガイダンスの最新版では正常血糖ケトアシドーシスがより大きく取り上げられている。
2018 年の国際小児・思春期糖尿病学会(International Society Pediatric Adolescent Diabetes: ISPAD)のガイドラインでは、DKA 診断を確定するために、「可能な限り」尿ケトン体よりも血中 β-ヒドロキシ酪酸を測定することを推奨しており、このような検査が普遍的に利用できるわけではないことを反映して、2021 年に発表された国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Care Excellence)の小児科ガイダンスでも同様の推奨が述べられている。
DKA の診断が下されたら、その重症度を判断することが重要である。この最初の重症度評価における血中ケトン濃度の役割については、まだ議論の余地がある。先に要約したように、pH、重炭酸塩濃度、血糖値といった従来の重症度関連因子は、血中β-ヒドロキシ酪酸濃度との相関が予想以上に低いため、この目的での使用はほとんど推奨されていない。JBDS のガイドラインだけが、DKA の重症度評価における β-ヒドロキシ酪酸の利用について言及しており、高度治療室への入室、即時の上級医の診察、および/または中心静脈ラインの挿入に影響を及ぼす 9 つの臨床的または生化学的基準の 1 つになりうると述べている。それでも、これは明らかに高い β-ヒドロキシ酪酸濃度(>6 mmol/L)が存在する場合に限られる。
このように DKA の重症度評価に β-ヒドロキシ酪酸はあまり役立たないと一般には考えられているが、著者らは、従来の重症度マーカーとの相関がないことがすなわちそれらに劣ることを意味するのかについては疑問を感じる。というのは、特に DKA 診断に関しては逆にケトン体濃度がゴールドスタンダードであるという説明がなされているからである。
DKA 管理の成否を評価するために血中ケトン体を用いることについては、意見が分かれている。ADA のガイドラインでは、「ケトン血症がコントロールされるまで」インスリンを持続静注することを推奨しているが、その評価方法については詳しく述べていない。ISPAD は、血中 β-ヒドロキシ酪酸濃度を診断と治療反応の両方に用いることを推奨しており、測定可能な場合には、2 時間ごとに測定し、<1 mmol/L になるまで約 0.5 mmol/L/h の β-ヒドロキシ酪酸減少率を目指すことを提案している。JBDS のガイドラインでも、β-ヒドロキシ酪酸を繰り返し測定し、少なくとも 0.5 mmol/L/h の濃度低下を目指すことが代謝目標達成の中心であると推奨されている。
DKA の診断や管理における血中ケトン体の使用についての推奨には一貫性がない。この不一致の原因の一部は、血中ケトン体測定技術が発展しつつある中でガイドラインが発行されていることに関連していると思われる。
病院での治療に関しては、最新のガイドラインでは、血中ケトン体、特に β-ヒドロキシ酪酸の測定を、診断、治療のモニタリング、DKA の寛解の指標に含めることを推奨している。
DKA の重症度評価に血中ケトン体測定が有用であるかどうかはまだ不明である。著者らは、この点を明らかにするためにさらなる研究が必要であると考えている。
3. 血中ケトン体測定に適した検査とは?
ケトン体には β-ヒドロキシ酪酸(厳密にはケトン体ではない)とアセト酢酸とアセトンがあり、DKA では前者が主成分で後者はマイナーである。血中ケトン体測定には、1. 定量的な β-ヒドロキシ酪酸測定と 2. 尿中ケトン体検査で一般的に用いられているのと同じニトロプルシド反応を利用した半定量的(+、++など)測定の二つがある。
米国の検査室による血中ケトン体の測定は、College of American Pathologists によって規制され、検査の質が保証されている。最近の College of American Pathologists の記録では、測定内容が分かれており、2020 年には、1,785 の検査室が β-ヒドロキシ酪酸のみを測定し、840 の検査室がニトロプルシドを用いた反応を測定していた。対照的に、英国の同等の品質スキームを見ると、ニトロプルシドテストを用いて血中ケトン体を測定している検査施設はない。
β-ヒドロキシ酪酸測定がニトロプルシドよりも優れていると考えられる理由は、より定量的な測定であること以外にもある。ニトロプルシド・テストでは主にアセト酢酸を測定し、β-ヒドロキシ酪酸は測定しない。ケトアシドーシスでは β-ヒドロキシ酪酸が優勢であるため、ニトロプルシドを用いたケトン血症の程度は、当初は過小評価される可能性がある。さらに、アシドーシスが消失すると、β-ヒドロキシ酪酸はアセト酢酸に酸化されやすくなるため、逆説的にケトーシス全体が悪化しているように見えることがある。
血中 β-ヒドロキシ酪酸測定については、検査室で行われる検査と POCTの両方が利用可能であるが、血中ニトロプルシド検査には POCT は存在しないため、その利用は制限される可能性がある(後述)。
少なくとも米国内では、血中ケトン体を測定する際、β-ヒドロキシ酪酸を用いるかニトロプルシド法を用いるかで検査室が二分されており、後者は主にアセト酢酸を測定する方法である。
β-ヒドロキシ酪酸を測定することの臨床的利点と POCT が利用できることを考えると、β-ヒドロキシ酪酸測定は血中ケトン体検査として好ましい。
4. 診断および管理の閾値に関するエビデンス
表 1 は、ケトアシドーシスの診断に β-ヒドロキシ酪酸を用いる場合に、いくつかのガイドラインで推奨されている閾値の要約である。
表 1: 主なガイドラインにおけるケトン測定についての推奨
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8897555/table/T1/
3 mmol/L をカットオフ値 3 mmol/L の出どころのひとつは他の手段で診断された DKA で入院した 14 人の患者についての観察に基づく「予備的なガイドライン」である。これは後に、129 人の小児と 337 人の成人を対象とする参照されることが多い研究によって裏付けられた。この研究では、小児(16 歳未満)と成人に対してそれぞれ 3.0 mmol/L と 3.8 mmol/L の β-ヒドロキシ酪酸カットオフ値を推奨している。これらの閾値は血中 β-ヒドロキシ酪酸濃度から導き出されたもので、平均して重炭酸塩濃度 18 mmol/L に相当する。この研究では、HCO3 濃度と β-ヒドロキシ酪酸濃度との間に格差があったため(全年齢の R2 は 0.64 から 0.68 の間)、著者らは、β-ヒドロキシ酪酸がより信頼できる目安になることを示唆した。一方で、これは「理論的根拠に基づくものである」ことも認めている。
その後、この研究に基づいてすべての年齢層で 3 mmol/L の閾値を採用することが広く決定されたのは、おそらく保守的なアプローチをとった方が無難だろうと考えられたからだろう。
血中 β-ヒドロキシ酪酸の診断基準値に関するガイドラインの例外として注目すべきは、AACE、ADA、内分泌学会 (Endocrine Society) を含む米国の 8 つの専門機関による 2017 年のコンセンサスレポートである。この報告書では、「血清ケトン体」が「正常範囲の上限」よりも大きいことを DKA の定義の一部とすることを推奨している。血中 β-ヒドロキシ酪酸で表すと、0.6 mmol/L 以上の濃度に相当するため、DKA の過剰診断につながるのではないかという意見もある。
患者の年齢以外にも、重炭酸塩と β-ヒドロキシ酪酸濃度の関係に影響を及ぼす因子があると考えられており、その一例が末期腎臓病である。ある研究では、重炭酸濃度が 18 mmol/L 未満の DKA 患者において、末期腎臓病患者の平均 β-ヒドロキシ酪酸濃度は、腎機能が保たれている患者よりも 1.4 mmol/L 低いことが示された。
ケトン血症を示唆する 0.6-1.5 mmol/L や、切迫した DKA を示唆する 1.6-3 mmol/L といった中間の閾値の原因を明らかにすることは難しそうである。Wallace らによる予備的なガイドラインでは、β-ヒドロキシ酪酸濃度<1 mmol/L は初期のケトーシスとは関連せず、一方、1-3 mmol/L はさらなる介入が必要であるとしている。しかし、その後の多くの研究は、ケトン測定器メーカー自身が示唆する β-ヒドロキシ酪酸濃度を参照している。アボット/メディセンスの説明書に記載されているメーカーの閾値は、β-ヒドロキシ酪酸の上昇を 0.5 mmol/L 超と定義し、1.5 mmol/L 超を DKA の診断基準の一つとした研究に基づいているようである。しかし、この研究では、これらのカットオフ値の出典については言及していない。この「正常値の上限」濃度は、空腹時の患者を対象とした、より歴史的な研究にまでさかのぼる可能性がある。この研究では、他の研究者でも指摘されているように、一部の患者で 1 mmol/L までの正常値が確認されている。より最近では、非絶食検体を用いて、0.02-0.28 mmol/L という、より厳しい基準区間が設定されているが、この限界値付近の信頼区間は、基準値の上限が実に 0.5 mmol/L にもなりうることを意味している。
システマティックレビューでは、β-ヒドロキシ酪酸濃度が 1.5 mmol/L を超えると、DKA の標準的な測定値と比較して、陽性的中率が 50%、陰性的中率が 100%になることが2つの研究で確認されている。
DKA 治療に対する反応をモニタリングする場合、JBDS はガイドライングループのコンセンサスを得て、「β-ヒドロキシ酪酸は 1 時間あたり 1 mmol/L 低下することが期待できる」という過去の研究結果に基づいて、β-ヒドロキシ酪酸が少なくとも 0.5 mmol/L/h 低下することを目指すという結論に達した。約 0.5 mmol/L/h という ISPAD のガイダンスは、小児を対象とした研究を引用し、そこで得られたデータから推奨値を推定したようである。
正常血糖ケトアシドーシスにおける血中 β-ヒドロキシ酪酸のカットオフ値は、通常の DKA のカットオフ値と同じである。あるガイドラインでは、既知の糖尿病患者における DKA 診断の基準として血漿グルコースを除外している。SGLT-2 阻害薬が DKA の発症に関与している場合、DKA 発症からの回復に予想以上の時間がかかるというエビデンスもある。
DKA を定義するために最も一般的に引用されている血中 β-ヒドロキシ酪酸の閾値(3 mmol/L)は、主に血清重炭酸濃度 18 mmol/L と同等であることに基づいているようである。この 2 つのパラメータの関係は、患者群によって異なる可能性がある。
ケトーシスの程度が低い場合には、1.5 mmol/L のような中間の β-ヒドロキシ酪酸濃度が診断閾値として使用されている研究もある。それにもかかわらず、<3 mmol/L が DKA を除外するのに有用なレベルであるといういくつかのエビデンスがある。
β-ヒドロキシ酪酸濃度 0.6 mmol/L または 1 mmol/L のいずれかを行動/処置のトリガーとする議論もある。
異論はあるものの、3 mmol/L の診断閾値を使用し続けることが賢明であると思われるが、これを検証または反証するさらなる研究が必要である。
5. 検査室測定か POCT 測定か?
血中 β-ヒドロキシ酪酸測定は、臨床検査として行うことも、POCT として携帯型測定器を用いて行うこともできる。ニトロプルシド反応を用いた血液検査は、前述のように検査室での使用に限られる。
ISPAD および英国 JBDS ガイドラインにおいて、血中ケトン体測定を実施する主な理由として、病院環境における検査の利便性と POCT 機器による迅速な結果が挙げられている。
確かに、POCT による血中ケトン体測定は、評価時間の短縮、入院期間の短縮、DKA からの回復期間の短縮という点で有益であることがシステマティック・レビューで示されているが、検査室での迅速な測定が患者にとっても同様の臨床的利益につながるかどうかはわからない。
ケトン測定器には利点が多いが、POCT 測定器、それも最新のものであっても、血中 β-ヒドロキシ酪酸濃度を測定するための信頼性がどの程度あるのかという懸念の声もある。測定精度が問題となるのは通常、DKA 診断の閾値をはるかに超える 5 mmol/L 以上の β-ヒドロキシ酪酸濃度の場合である。この問題は、高ケトン血症の同定に影響を与えるだけでなく、β-ヒドロキシ酪酸濃度の低下速度が不正確となり、治療反応性を誤って評価する可能性がある。後者の点から、血中ケトン濃度の測定結果は、pH の変化など他の因子と切り離して評価しないこと、また、他の POCT と同様、この検査の限界を利用者に認識させることが推奨されている。
この最後の点は、病院での POCT を実施する前に考慮しなければならない他の点にもつながる。例えば、測定器の使用方法について全スタッフを訓練し、能力評価を行う必要があること、品質管理プログラムを実施する必要があること、検査結果が電子カルテに記録されるかどうかなどである。
メータ測定の信頼性を議論することは、臨床的に許容できる分析性能とはどの程度と見なすべきかという問題を提起する。最適な患者ケアのために、どの程度の分析性能であるべきかを臨床的に定義する機会があり、現在の測定器の分析能力を超えている場合、この程度の性能を達成できる測定器の開発を促進するのに役立つかもしれない。
米国では、血中ケトン測定器は食品医薬品局(the U.S. Food and Drug Administration: FDA)によって、検査室検査と同じ品質チェックを要しない「免除」検査とみなされているため、POCT として実施される血中ケトン測定と検査室検査の現在の割合を容易に評価することはできない。このような POCT 検査がより一般的である英国では、POCT を好む傾向が明白であり、1,650 人以上の POC 機器ユーザーが登録されているのに対し、同じ検査に登録されている検査室はわずか 12 カ所である。2014 年に英国で行われた調査では、76%の施設で POCT による血中 β-ヒドロキシ酪酸の測定が可能であった。
少なくとも一部の医療システムでは POCT は広く実施されているが、POC 血中ケトン体測定を採用した研究の結果が、検査室測定を行った場合と比べて異なっていたかどうかは不明である。
簡便かつ迅速ではあるが、POC 血中ケトン体測定は検査室での測定と比較して分析上の限界がある可能性がある。
血液 β-ヒドロキシ酪酸 POCT 測定器の許容可能な性能仕様に関する勧告は、測定器が臨床的に許容可能な結果を提供することを保証するのに役立つであろう。
6. 結論
現在、DKA が疑われる患者の診断と管理には、いくつかのガイドラインが現在推奨している以上に血中ケトン体の測定が活用されている。少なくとも DKA の診断には、ニトロプルシド反応に由来するアセト酢酸ではなく、β-ヒドロキシ酪酸を特異的に測定する十分なエビデンスがあるように思われる。POC 血中 β-ヒドロキシ酪酸測定は、検査室での測定よりも利点があるが、スタッフの訓練や機器の性能に関する安全策を講じる必要がある。DKA における血中ケトン体の役割をより明確に定義するために、現在使用されている血中 β-ヒドロキシ酪酸閾値を検証するためのさらなる研究が必要である。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8897555/