厚生労働省の広報誌「厚生労働」にタイに関する記事がありました。
タイトルは、「タイの労働社会事情~発展する経済と赤黄シャツ政治動乱の背景~」です。筆者は在タイ日本国大使館一等書記官。
要約するとこんな感じです。
タイでは、ここ数年、政治混乱が続いているが、リーマンショック以後、V字回復といえるような景気回復を見せ、生産・投資の拡大、日本からの生産シフトが勢いよく進んでいる。
こうした現代タイの光と影について労働問題の面から見ていきたい。
◎技術レベルの向上と投資・生産の急拡大
タイが製造業の生産拠点として選ばれる理由は、「基本的なインフラの充実度」、「ASEAN域内やインドなどとのFTA締結」に加え、「裾野の広い部品産業の充実と質の高い労働力」が挙げられる。
◎低失業・人手不足と資金の上昇
タイは構造的に失業率が低い。
要因として、一つは失業者が容易に農業部門に吸収されること、二つ目にタイ国内至る所に見られる露天商が象徴するように、起業が容易であること、さらに低賃金層と富裕層が共存する格差の存在のため、メイドや運転手、マッサージなどの労働集約的なサービス業が発展し、雇用の場を広げている。
◎労働争議の増加
タイの労使関係は、比較的安定していたが、09年以降、労働争議が増加するなど、状況が少しずつ変化している。
◎格差の状況
タイでは経済発展に伴い貧困層が減少しているものの、月所得が1443バーツ以下の貧困層が542万人(貧困率8.5%)おり、北部や東北部の農民層に集中している。相続税や固定資産税がないなど、持たざる者への分配機能が不十分である。
こうした所得格差の問題に加え、都市部の人々の農村部への見下した意識や警察、公務員の不正の横行の体質が農村部の人々の不満を高めており、一連の政治対立につながったと考えられる。
タクシン元首相が農村、貧困対策を講じて、農民層の圧倒的支持を受けたが、これは持つ者の警戒感を高めるとともに、農民層の潜在的不満を顕在化させてしまったといえる。
◎ミャンマーなどからの出稼ぎ労働者(不法就労者の増加、劣悪な労働環境)
◎日本への示唆
タイ人は日本人の1/10の賃金水準、ベトナムはさらに1/3である。日本人が彼らと同じことをしていては、コスト的に見合わない。日本人が日本でしかできないことをやっていかなければならない。
日本の技術力とアジアの労働力を組み合わせて競争力のある製品を提供していく必要がある。
タイにおける低失業要因は、日本に対し一つの視点を提供してくれるが、他方、所得格差の極端な拡大や社会公正の欠如は大きな社会不安を招くこともタイからの教訓である。
タイに限らず新興国ならではの問題かもしれません。
その他に、「海外から患者を呼び寄せるタイ国家戦略の光と影(タイのメディカル・ハブ構想)」の記事も併せて掲載されていました。
本日のSET指数 1027.54(+0.82%)
本日の日経平均 9449.47(-1.65%)
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要約するとこんな感じです。
タイでは、ここ数年、政治混乱が続いているが、リーマンショック以後、V字回復といえるような景気回復を見せ、生産・投資の拡大、日本からの生産シフトが勢いよく進んでいる。
こうした現代タイの光と影について労働問題の面から見ていきたい。
◎技術レベルの向上と投資・生産の急拡大
タイが製造業の生産拠点として選ばれる理由は、「基本的なインフラの充実度」、「ASEAN域内やインドなどとのFTA締結」に加え、「裾野の広い部品産業の充実と質の高い労働力」が挙げられる。
◎低失業・人手不足と資金の上昇
タイは構造的に失業率が低い。
要因として、一つは失業者が容易に農業部門に吸収されること、二つ目にタイ国内至る所に見られる露天商が象徴するように、起業が容易であること、さらに低賃金層と富裕層が共存する格差の存在のため、メイドや運転手、マッサージなどの労働集約的なサービス業が発展し、雇用の場を広げている。
◎労働争議の増加
タイの労使関係は、比較的安定していたが、09年以降、労働争議が増加するなど、状況が少しずつ変化している。
◎格差の状況
タイでは経済発展に伴い貧困層が減少しているものの、月所得が1443バーツ以下の貧困層が542万人(貧困率8.5%)おり、北部や東北部の農民層に集中している。相続税や固定資産税がないなど、持たざる者への分配機能が不十分である。
こうした所得格差の問題に加え、都市部の人々の農村部への見下した意識や警察、公務員の不正の横行の体質が農村部の人々の不満を高めており、一連の政治対立につながったと考えられる。
タクシン元首相が農村、貧困対策を講じて、農民層の圧倒的支持を受けたが、これは持つ者の警戒感を高めるとともに、農民層の潜在的不満を顕在化させてしまったといえる。
◎ミャンマーなどからの出稼ぎ労働者(不法就労者の増加、劣悪な労働環境)
◎日本への示唆
タイ人は日本人の1/10の賃金水準、ベトナムはさらに1/3である。日本人が彼らと同じことをしていては、コスト的に見合わない。日本人が日本でしかできないことをやっていかなければならない。
日本の技術力とアジアの労働力を組み合わせて競争力のある製品を提供していく必要がある。
タイにおける低失業要因は、日本に対し一つの視点を提供してくれるが、他方、所得格差の極端な拡大や社会公正の欠如は大きな社会不安を招くこともタイからの教訓である。
タイに限らず新興国ならではの問題かもしれません。
その他に、「海外から患者を呼び寄せるタイ国家戦略の光と影(タイのメディカル・ハブ構想)」の記事も併せて掲載されていました。
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