《いじめられている君へ》
西原理恵子(漫画家)
■上手にうそをついて
うそをついてください。
まず仮病(けびょう)を使おう。そして学校に行かない勇気を持とう。親に「頭が痛い」とでも言って欠席すればいい。
うそは、あなたを守る大事な魔法(まほう)。人を傷つけたり盗んだりするのでなければ、うそって大事よ。
これからも、上手(じょうず)にうそついて生きていけばいいんだよ。
亡くなった夫は、戦場(せんじょう)カメラマンでした。
戦場で銃(じゅう)を突きつけられたことが何度もあったけど、一番怖(こわ)かったのは、少年兵だって。
大人は残酷(ざんこく)な兵士にもなるけど、家に帰ったらやさしいお父さんにもなる。愛することや大事なものを知ってるから。
でも、少年兵は物事の重大さが分からず、簡単(かんたん)に人を殺しちゃうんだって。生前(せいぜん)にそう言っていました。
子どもってそういう生き物。「子どもなのになぜ?」って思うかもしれないけど、戦場の理屈(りくつ)だと、そうなんだって。
いくら紛争地帯(ふんそうちたい)でも、年間3万人も死ぬことはそんなにありません。でも、日本ではそれくらいの人々が自殺しています。
そう、この国は形を変えた戦場なんです。戦場では子どもも人を殺します。しかも、時には大人より残酷になる。
学校は、いじめられてつらい思いをしてまで行くようなところじゃない。長い夏休みだと思って、欠席してください。
そして、16歳まで生き延びてください。
高校生になれば、通信制(つうしんせい)高校やフリースクール、いわゆる大検(だいけん)など選択肢(せんたくし)が広がります。
何よりもアルバイトができる。お金をもらいながら、社会人にふさわしい訓練(くんれん)を受けられます。
お金を稼(かせ)ぐということは自由を手に入れるということ。その先に「ああ、生きててよかった」と思える社会が必ず待っています。