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コーイチ物語 「秘密のノート」 35

2022年08月29日 | コーイチ物語 1 4) コーイチとゆかいな仲間たち 2  
 そうだ、間違いない! コーイチは確信した。……宇宙人の来襲だ! その第一段階として、あのノートがあったんだ! と言う事は、ノート自体が何かの装置なんだ。
 名前を書かれた人物が宇宙人の円盤に転送されて生体実験みたいなのをされてしまうとか(コーイチの脳裏に何故か、ランニングシャツとステテコ姿で手術台らしい堅い台の上に手首足首を固定され大の字に寝かされて猿轡をされた口でうもうもともがいている吉田課長が浮かんだ)……
 名前を書かれた人物と入れ替わって何食わぬ顔で地球の調査をしてしまうとか(コーイチの脳裏に何故か、頭に手ぬぐいを巻き汗まみれのランニングシャツと黒いジャージズボン姿で「ぷあ~」と大きく息をつき着ぐるみの吉田課長を脱ぎ捨てている宇宙人が浮かんだ)……
 名前を書かれた人物を大量に作り出して地球上に配置して混乱を招くとか(コーイチの脳裏に何故か、工場のような広い場所で幾つもの複雑な機械の並んだ間を縫って動いているベルトコンベアの上に徐々に出来上がって行く無表情な吉田課長がぞろぞろと無数に流れている様子が浮かんだ)……
 これは一大事だ! 人類の危機だ! 宇宙戦艦ヤメトの諸君もまだいないし、M99星雲のウルター一族も地球に来ていない。地球防衛軍も組織されていない。だから、国家間のちっぽけな争いなんかしてないで、もっと大きな敵に向かって対策をすべきだったんだ! あぁ、人類よさらば、地球よさらば……
「コーイチ君!」
 不意に隣から声をかけられ、コーイチは横を見た。林谷だった。
「何を涙ぐんでいるのか知らないが、歩けるんなら歩いてくれないかな?」
「その通りだ!」
 反対側の西川も言った。
「ここからは階段だからな。いかに君が小柄のやせっぽちでも、大変なのだ!」
 印旛沼と清水は立ち止まって、涙を流しているコーイチの顔を不思議そうに見ていた。
 コーイチは正面を見上げた。地上へ上がる階段から青い空が覗いていた。

       つづく

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