オチラはモヘラを睨み付けながら雄叫びを上げた。モヘラはそれを打ち消すように甲高い声を上げた。
モヘラはオチラに向かい素早い羽ばたきを繰り返した。強い風がオチラの動きを止めた。更に鱗粉が豪雪のようにオチラに降りかかった。身じろぎも出来ない黒いオチラが白くなって行く。
オチラに救われた戦闘機のパイロットのビル・ファーガソン・ジュニアは、モヘラへの攻撃許可を所属するエルメンドルフ空軍基地へ要請した。状況の説明を求められたファーガソン・ジュニアは、オチラが出現し、モヘラと交戦中と報告した。しばらくし、基地からは、怪獣同士が戦っているのなら静観し、状況が変化した際に報告するようにとの命令があり、攻撃の許可は下りなかった。身動きも出来ずに鱗粉の「マナ」で白く覆われて行くオチラを見ながら、ファーガソン・ジュニアは涙していた。
モヘラの羽ばたきが通常のものとなった。オチラは雪像の様になったまま動かない。モヘラは勝ち誇ったように甲高い声で幾度か鳴いた。ファーガソン・ジュニアは悔しさで操縦桿を叩いた。
と、モヘラの攻撃が止むのを待っていたかの如く、オチラがその巨体を大きく揺すった。「マナ」はオチラから剥がれ落ちた。「マナ」はオチラには全く効いていなかった。ファーガソン・ジュニアは歓喜の声を上げた。
オチラが口を大きく開けた。青白い光の粒が口中に増えて行く。口中が青白い光で満たされた。その瞬間、それは光線となってモヘラに放たれた。モヘラは辛うじてかわした。オチラの口中が再び光の粒で満たされる。モヘラはそれに気づいたのか、光線を避けようと宙高く飛んだ。オチラは口を閉じた。モヘラは飛び去って行った。オチラは雄叫びを上げた。そして、地を揺るがせながら、現われた亀裂の中へ戻って行った。
オチラが現われモヘラと戦ったとの報が、世界を駆け巡った。だが、人々の反応は微妙だった。
オチラは本当に地球を部外者から救い出す救世主なのか? 本能的に敵対する者を排除しようとしているだけなのではないか? 衛生面での復興が灰燼に帰してしまうのではないか? 万一モヘラが倒されてもオチラによる破壊が始まるのではないか? 今回の戦いは偶然でこれ以降はモヘラとオチラが共に破壊を行うのではないか? この報に戸惑いと、更なる絶望を募らせる見方が大半だった。
その様な中、以前に嘲笑されたイギリスの心霊研究家ジェームズ・マーティモーが「子どもたちは感応しやすい。オチラの強烈な『気』が子どもたちを刺激したのだ。その証拠にオチラが現われた。また、モヘラに襲われかけた戦闘機をオチラが助けた。モヘラへも光線で攻撃をした。オチラは地を乱す者への怒りの象徴なのだ」と、新たに主張した。
この主張は不安に脅える人々に受け入れられた。学者たちは、根拠の無い説なので信じないようにと強く提言した。しかし、人々は反論した。マーティモーに根拠が無いのならば、児童心理学者のジェーン・スタントン博士の説にも根拠が無いだろう。何故なら、子供の妄想と言っていたが、実際にオチラが出現したからだ。スタントンを擁護した学者たちも同様に無能だと批判した。学者の一人が「学問の無いくせに、無礼者共が!」と反論し、その傲慢な態度が反感を抱かせ、更に批判が加えられた。
しかし、その後もモヘラが人類を襲う事を止めたわけでは無く、襲われた場所にオチラが現われると言う事も無かった。それでも、人々はオチラを待つ事しかできなかった。各国の軍隊も世界中の学者たちも、対モヘラの行動を起こしてはいた。だが、全ての努力は報われる事が無かった。宇宙怪獣モヘラの前で、人類の英知はあまりにも無力だった。
成す術のない人々は「最大の危機が訪れた時、オチラは必ず姿を現わし、人類を解放する」と思うようになった。そして、この思いは、現実の悲惨さに心を痛めた人々に、何時しか信仰のように広まって行った。
次回「大怪獣オチラ 対 宇宙怪獣モヘラ 弐拾伍」の波乱の展開を待て。
モヘラはオチラに向かい素早い羽ばたきを繰り返した。強い風がオチラの動きを止めた。更に鱗粉が豪雪のようにオチラに降りかかった。身じろぎも出来ない黒いオチラが白くなって行く。
オチラに救われた戦闘機のパイロットのビル・ファーガソン・ジュニアは、モヘラへの攻撃許可を所属するエルメンドルフ空軍基地へ要請した。状況の説明を求められたファーガソン・ジュニアは、オチラが出現し、モヘラと交戦中と報告した。しばらくし、基地からは、怪獣同士が戦っているのなら静観し、状況が変化した際に報告するようにとの命令があり、攻撃の許可は下りなかった。身動きも出来ずに鱗粉の「マナ」で白く覆われて行くオチラを見ながら、ファーガソン・ジュニアは涙していた。
モヘラの羽ばたきが通常のものとなった。オチラは雪像の様になったまま動かない。モヘラは勝ち誇ったように甲高い声で幾度か鳴いた。ファーガソン・ジュニアは悔しさで操縦桿を叩いた。
と、モヘラの攻撃が止むのを待っていたかの如く、オチラがその巨体を大きく揺すった。「マナ」はオチラから剥がれ落ちた。「マナ」はオチラには全く効いていなかった。ファーガソン・ジュニアは歓喜の声を上げた。
オチラが口を大きく開けた。青白い光の粒が口中に増えて行く。口中が青白い光で満たされた。その瞬間、それは光線となってモヘラに放たれた。モヘラは辛うじてかわした。オチラの口中が再び光の粒で満たされる。モヘラはそれに気づいたのか、光線を避けようと宙高く飛んだ。オチラは口を閉じた。モヘラは飛び去って行った。オチラは雄叫びを上げた。そして、地を揺るがせながら、現われた亀裂の中へ戻って行った。
オチラが現われモヘラと戦ったとの報が、世界を駆け巡った。だが、人々の反応は微妙だった。
オチラは本当に地球を部外者から救い出す救世主なのか? 本能的に敵対する者を排除しようとしているだけなのではないか? 衛生面での復興が灰燼に帰してしまうのではないか? 万一モヘラが倒されてもオチラによる破壊が始まるのではないか? 今回の戦いは偶然でこれ以降はモヘラとオチラが共に破壊を行うのではないか? この報に戸惑いと、更なる絶望を募らせる見方が大半だった。
その様な中、以前に嘲笑されたイギリスの心霊研究家ジェームズ・マーティモーが「子どもたちは感応しやすい。オチラの強烈な『気』が子どもたちを刺激したのだ。その証拠にオチラが現われた。また、モヘラに襲われかけた戦闘機をオチラが助けた。モヘラへも光線で攻撃をした。オチラは地を乱す者への怒りの象徴なのだ」と、新たに主張した。
この主張は不安に脅える人々に受け入れられた。学者たちは、根拠の無い説なので信じないようにと強く提言した。しかし、人々は反論した。マーティモーに根拠が無いのならば、児童心理学者のジェーン・スタントン博士の説にも根拠が無いだろう。何故なら、子供の妄想と言っていたが、実際にオチラが出現したからだ。スタントンを擁護した学者たちも同様に無能だと批判した。学者の一人が「学問の無いくせに、無礼者共が!」と反論し、その傲慢な態度が反感を抱かせ、更に批判が加えられた。
しかし、その後もモヘラが人類を襲う事を止めたわけでは無く、襲われた場所にオチラが現われると言う事も無かった。それでも、人々はオチラを待つ事しかできなかった。各国の軍隊も世界中の学者たちも、対モヘラの行動を起こしてはいた。だが、全ての努力は報われる事が無かった。宇宙怪獣モヘラの前で、人類の英知はあまりにも無力だった。
成す術のない人々は「最大の危機が訪れた時、オチラは必ず姿を現わし、人類を解放する」と思うようになった。そして、この思いは、現実の悲惨さに心を痛めた人々に、何時しか信仰のように広まって行った。
次回「大怪獣オチラ 対 宇宙怪獣モヘラ 弐拾伍」の波乱の展開を待て。
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