お話

日々思いついた「お話」を思いついたまま書く

裏シャーロック・ホームズ その4

2008年04月26日 | 裏ホームズ(一話完結連載中)
 平和な日々が続いていた。

 私はホームズを心配していた。

 平和な日々とはホームズにとっては刺激のない日々と同義だからだ。

 ある朝、ワイシャツの左袖を二の腕辺りまでまくり上げ、右手に注射器を持ったホームズを見た。

「ホームズ!」私は怒鳴った。「コカインは駄目だと言っただろう!」

「ワトソン、分かるだろう? 僕には刺激が常に必要なのだよ」

「でも、薬はいけないよ、ホームズ」私は注射器を取り上げながら言った。「もっと別の気分転換を考えなけりゃ・・・」

「別の気分転換か・・・」

 ホームズは考え込んでいた。

 次の日、爽やかな笑顔のホームズが新聞のある記事を指し示した。

 昨夜遅くに浮浪者の惨殺体が発見されたと報じた記事がだった。

「ワトソン、実に、実に気分爽快だ! 昨日は良き忠告をしてくれたよ」


 ホームズが昨夜遅くどこへ外出したのか、この笑顔と浮浪者の惨殺体との関係は何なのか、私は敢えて聞かなかった。

 ただ言えるのは、偉大な才能が薬で侵されるよりは多少の犠牲を払う方が、はるかにましな事だと言う事だ。




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