「ま、ま、ま、ま、ま…… ちょっと待って!」
コーイチは花子と逸子の間に割って入った。二人のオーラはすっと消えた。
「コーイチさんがそう言うんなら、いくらでも待つわ」逸子は言うと、コーイチの右腕にしがみついた。「だって、わたしは恋人だもん!」
「なによなによ!」花子は逸子をにらみつける。「こっちの苦労も知らないで、何を呑気に甘えているのよ! コーイチさん、この女、悪い女よ!」
「ぽっと出が何を言っても、コーイチさんの心はあなたには移らないわよ!」
逸子は言うと、花子にあかんべーをして見せた。花子も負けじと逸子にあかんべーをした。
「……あのう……」洋子は、程度の低い喧嘩に呆れながらも逸子に聞いた。「逸子さん、どこまでの事、覚えていますか?」
「え?」急に話を振られ、逸子は洋子を見る。そして、思い出すためか、こつこつと自分の頭を軽くたたき始めた。「……そうねえ…… パーティ会場に乱入してきた、洋子ちゃんを狙う悪人を叩きのめそうとした所までは覚えているんだけど……」
「……コーイチさん」洋子はコーイチに言う。「六郎を相手にして、この世界に飛ばされる直前までのようですね」
「そのようだね……」コーイチはため息をついた。「と言う事は、こっちに来てからはずっと大王の下にいたって事だね……」
「大王って誰? この世界って? ……よく考えたら、ここはどこなの?」逸子は急に不安そうな表情になった。「……ああ、何がどうなっているのよ!」
「逸子さん……」洋子が優しく言う。「……あっちで、いきさつをお話しますね」
逸子は素直に洋子に従い、洋子は少し離れた所でひそひそと話を始めた。逸子は時折驚いたり、花子の方を見たり、コーイチを見て笑ったりしている。不安そうだった表情が明るくなって行く。
「洋子ちゃん、説明が上手なのね」二人の様子を見ながら花子がコーイチに話かける。「ついでに、わたしとコーイチさんの深い関係も、きちんと説明してくれるといいけど」
「……とにかく、芳川さんも逸子さんも元に戻って一安心だよ」
コーイチは花子の言葉に戸惑いながらも、あえて無視して答えた。
「ふん、照れ屋さんね……」
花子は言って、一人微笑んでいる。
「コーイチさん!」逸子が声をかけてきた。「洋子ちゃんから聞いて、すべて理解できたわ! 大王を倒して、あっちへ連れて行きましょう!」
「そうです!」洋子は言うと、力強くうなずいた。「他の三人はすでに捕らえていますから、後は大王だけです!」
「……そうね、さっさと済ませようかな。さっさと済ませて、さっさとあっちへ戻ってもらうわ」花子も機嫌良く言い、コーイチにウインクしてみせた。「ねぇ、コーイチさん……」
三人の全身からオーラが噴き上がった。……とても頼もしいなあ。これじゃ、ぼくの出番は無いな。あ、元々無いか…… 一人納得するコーイチだった。
「……で、大王はどこ?」
「え? 逸子さん、大王と一緒だったから、知ってると思ったんですけど……」
「う~ん、操られていた時の記憶が無くって……」
「なによ! せっかくやる気満々なのに!」
「花子さん! 気持ちはわかりますけど、落ち着いてください!」
「きっと大王はわたしたちを見て笑い転げているわ! ちょっと物を創造できるようになったからって、偉そうに!」
「花子さん、落ち着いてください!」
「……うすぼんやりした記憶だけど、その大王ってヤツ、なんだか偉そうな椅子に座っていたと思うわ」
「やっぱり偉そうにしてるんだ! そんなに偉いんかい! 勘違いが甚だしいだけなヤツのくせに!」
「そう! このわたしを操ったりして! 洋子ちゃんも腹が立つでしょう?」
「……ええ、そうですね。……眼の前に現われたら、ただでは置かないでしょうね」
三人のオーラがさらに噴き上がった。
「わぁーっはっはっはあ!」
突然、高笑いが響いた。
コーイチの前に、黒い煙のようなものが床から立ち昇り、やがて人の形になった。立っていたのは黒ずくめの六郎だった。
「六郎!」コーイチが驚いて叫んだ。「お前、確か崖から落ちたんじゃなかったっけ?」
「馬鹿者が! オレは大王の側近だぞ! そう易々とやられると思っているのか!」六郎は胸を張る。「コーイチ! 思い知らせてやる! 受けてみろ! 六田流大王拳!」
六郎が構えると、コーイチの前に、逸子、花子、洋子が並んだ。
「これが六郎って言う人?」
「そうです、逸子さん。すべての元凶です!」
「懲りない男ねぇ…… 逸子ちゃん、洋子ちゃん、やっちゃおうか?」
三人は同時に蹴りを繰り出した。六郎は扉の横のガラス窓を突き破り、外へ飛ばされて行った。
「わああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
六郎の悲鳴が遠退いて行った。
……六郎、また落ちて行ったな。コーイチは思った。
コーイチは花子と逸子の間に割って入った。二人のオーラはすっと消えた。
「コーイチさんがそう言うんなら、いくらでも待つわ」逸子は言うと、コーイチの右腕にしがみついた。「だって、わたしは恋人だもん!」
「なによなによ!」花子は逸子をにらみつける。「こっちの苦労も知らないで、何を呑気に甘えているのよ! コーイチさん、この女、悪い女よ!」
「ぽっと出が何を言っても、コーイチさんの心はあなたには移らないわよ!」
逸子は言うと、花子にあかんべーをして見せた。花子も負けじと逸子にあかんべーをした。
「……あのう……」洋子は、程度の低い喧嘩に呆れながらも逸子に聞いた。「逸子さん、どこまでの事、覚えていますか?」
「え?」急に話を振られ、逸子は洋子を見る。そして、思い出すためか、こつこつと自分の頭を軽くたたき始めた。「……そうねえ…… パーティ会場に乱入してきた、洋子ちゃんを狙う悪人を叩きのめそうとした所までは覚えているんだけど……」
「……コーイチさん」洋子はコーイチに言う。「六郎を相手にして、この世界に飛ばされる直前までのようですね」
「そのようだね……」コーイチはため息をついた。「と言う事は、こっちに来てからはずっと大王の下にいたって事だね……」
「大王って誰? この世界って? ……よく考えたら、ここはどこなの?」逸子は急に不安そうな表情になった。「……ああ、何がどうなっているのよ!」
「逸子さん……」洋子が優しく言う。「……あっちで、いきさつをお話しますね」
逸子は素直に洋子に従い、洋子は少し離れた所でひそひそと話を始めた。逸子は時折驚いたり、花子の方を見たり、コーイチを見て笑ったりしている。不安そうだった表情が明るくなって行く。
「洋子ちゃん、説明が上手なのね」二人の様子を見ながら花子がコーイチに話かける。「ついでに、わたしとコーイチさんの深い関係も、きちんと説明してくれるといいけど」
「……とにかく、芳川さんも逸子さんも元に戻って一安心だよ」
コーイチは花子の言葉に戸惑いながらも、あえて無視して答えた。
「ふん、照れ屋さんね……」
花子は言って、一人微笑んでいる。
「コーイチさん!」逸子が声をかけてきた。「洋子ちゃんから聞いて、すべて理解できたわ! 大王を倒して、あっちへ連れて行きましょう!」
「そうです!」洋子は言うと、力強くうなずいた。「他の三人はすでに捕らえていますから、後は大王だけです!」
「……そうね、さっさと済ませようかな。さっさと済ませて、さっさとあっちへ戻ってもらうわ」花子も機嫌良く言い、コーイチにウインクしてみせた。「ねぇ、コーイチさん……」
三人の全身からオーラが噴き上がった。……とても頼もしいなあ。これじゃ、ぼくの出番は無いな。あ、元々無いか…… 一人納得するコーイチだった。
「……で、大王はどこ?」
「え? 逸子さん、大王と一緒だったから、知ってると思ったんですけど……」
「う~ん、操られていた時の記憶が無くって……」
「なによ! せっかくやる気満々なのに!」
「花子さん! 気持ちはわかりますけど、落ち着いてください!」
「きっと大王はわたしたちを見て笑い転げているわ! ちょっと物を創造できるようになったからって、偉そうに!」
「花子さん、落ち着いてください!」
「……うすぼんやりした記憶だけど、その大王ってヤツ、なんだか偉そうな椅子に座っていたと思うわ」
「やっぱり偉そうにしてるんだ! そんなに偉いんかい! 勘違いが甚だしいだけなヤツのくせに!」
「そう! このわたしを操ったりして! 洋子ちゃんも腹が立つでしょう?」
「……ええ、そうですね。……眼の前に現われたら、ただでは置かないでしょうね」
三人のオーラがさらに噴き上がった。
「わぁーっはっはっはあ!」
突然、高笑いが響いた。
コーイチの前に、黒い煙のようなものが床から立ち昇り、やがて人の形になった。立っていたのは黒ずくめの六郎だった。
「六郎!」コーイチが驚いて叫んだ。「お前、確か崖から落ちたんじゃなかったっけ?」
「馬鹿者が! オレは大王の側近だぞ! そう易々とやられると思っているのか!」六郎は胸を張る。「コーイチ! 思い知らせてやる! 受けてみろ! 六田流大王拳!」
六郎が構えると、コーイチの前に、逸子、花子、洋子が並んだ。
「これが六郎って言う人?」
「そうです、逸子さん。すべての元凶です!」
「懲りない男ねぇ…… 逸子ちゃん、洋子ちゃん、やっちゃおうか?」
三人は同時に蹴りを繰り出した。六郎は扉の横のガラス窓を突き破り、外へ飛ばされて行った。
「わああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……」
六郎の悲鳴が遠退いて行った。
……六郎、また落ちて行ったな。コーイチは思った。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます