「なんと言う事だ……」
男がつぶやいた。
「なんと言う事だ! 何と言う事だ!」
男は両の拳で己の腿を叩いた。
男は都会のど真ん中にいた。
建物にはさわやかな陽光が注がれている。
しかし人の姿は見えずしんとしている。
原因不明の病気が蔓延したせいだった。
感染率や致死率が高く治療も出来ないものだった。
感染すると数時間内に死に至る。
そして亡骸はすぐに乾いた土塊のように崩れてしまい何も残らない。
ある病原菌の突然変異とか空気感染とか接触感染とか某国の細菌兵器とか言われたが分からずじまいだった。
世界中にあっという間に広がりあっという間に人のいない世界になった。
男も家族や親戚や知人を次々に失った。
「なぜオレだけが感染しないんだ? なぜオレだけが残ってしまったんだ?」
男は頭を抱える。
「誰も居ない世界に生きていても仕方がない……」
男は立ち上がり高いビルを見上げる。
「あの屋上から飛び降りればそれでみんなの所へ行ける……」
男は歩き出した。
「待って!」
背後から声がした。
男が振り返ると女が立っていた。
「君は?」
男は近づいてくる女に言う。
「わたしも感染しなかったのよ……」
「そうなんだ…… じゃあ、一緒にあのビルから飛び降りて、みんなの所へ行こうよ……」
「わたしもさっきまでは生きていても仕方ないって考えていたわ。でも、あなたと出会って考えを変えたわ」
「どう言う風に?」
「この病気に感染しなかったわたしたちはこれからの人類の礎になるべきなのよ」
「どう言う事だ?」
「この病気に勝ったわたしたちに子孫が出来ればもうこの病気に怯える必要がないと思うの」
「なるほどな。新たに子孫を増やしていこうと言うわけか……」
「そうよ。……わたしイーヴリエンナって変な名前なの」
「オレも負けていないよ。アダミクスって言うんだ」
「わたしたちって名前もそうだけどアダムとイヴって感じがしない?」
「そうだな。じゃあエデンの園でも探そうか。確か郊外に大きな公園があるはずだ」
二人は手を取り合って歩き出した。
新たな創世記が始まる。
追記:時節柄いささか不謹慎かもしれませんが…… どうぞ、広い心でお許しください。話が浮かんでしまったものですから……
男がつぶやいた。
「なんと言う事だ! 何と言う事だ!」
男は両の拳で己の腿を叩いた。
男は都会のど真ん中にいた。
建物にはさわやかな陽光が注がれている。
しかし人の姿は見えずしんとしている。
原因不明の病気が蔓延したせいだった。
感染率や致死率が高く治療も出来ないものだった。
感染すると数時間内に死に至る。
そして亡骸はすぐに乾いた土塊のように崩れてしまい何も残らない。
ある病原菌の突然変異とか空気感染とか接触感染とか某国の細菌兵器とか言われたが分からずじまいだった。
世界中にあっという間に広がりあっという間に人のいない世界になった。
男も家族や親戚や知人を次々に失った。
「なぜオレだけが感染しないんだ? なぜオレだけが残ってしまったんだ?」
男は頭を抱える。
「誰も居ない世界に生きていても仕方がない……」
男は立ち上がり高いビルを見上げる。
「あの屋上から飛び降りればそれでみんなの所へ行ける……」
男は歩き出した。
「待って!」
背後から声がした。
男が振り返ると女が立っていた。
「君は?」
男は近づいてくる女に言う。
「わたしも感染しなかったのよ……」
「そうなんだ…… じゃあ、一緒にあのビルから飛び降りて、みんなの所へ行こうよ……」
「わたしもさっきまでは生きていても仕方ないって考えていたわ。でも、あなたと出会って考えを変えたわ」
「どう言う風に?」
「この病気に感染しなかったわたしたちはこれからの人類の礎になるべきなのよ」
「どう言う事だ?」
「この病気に勝ったわたしたちに子孫が出来ればもうこの病気に怯える必要がないと思うの」
「なるほどな。新たに子孫を増やしていこうと言うわけか……」
「そうよ。……わたしイーヴリエンナって変な名前なの」
「オレも負けていないよ。アダミクスって言うんだ」
「わたしたちって名前もそうだけどアダムとイヴって感じがしない?」
「そうだな。じゃあエデンの園でも探そうか。確か郊外に大きな公園があるはずだ」
二人は手を取り合って歩き出した。
新たな創世記が始まる。
追記:時節柄いささか不謹慎かもしれませんが…… どうぞ、広い心でお許しください。話が浮かんでしまったものですから……
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