ジェシルは制服に着替えて、むすっとしたままコックピットに一人で戻って来た。そのままどすんと操縦席に座る。
「おや、一人かい?」オーランド・ゼムが言う。見れば分かるでしょ、と言わんばかりにジェシルが睨みつける。しかし、オーランド・ゼムは平然としている。「それで、ハービィとムハンマイドはどうしたのだね?」
「ふん!」ジェシルは鼻を鳴らし、そっぽを向く。「二人仲良く修理中よ!」
「ジェシル、君は立ち合いをするのではなかったかね?」オーランド・ゼムは白々しく言う。「途中で抜けて来るとは、良くないねぇ……」
「良いのよ! アンドロイドと偏屈天才とは気が合うみたいだから! わたしは、そんな不健全な場所には居られないわ!」
「そうだ、そうだ!」アーセルがボトルを振り回しながら割り込んでくる。「下らねぇ青二才なんぞ、不健全の塊だぜい!」
「何を言っているんだい、アーセル!」リタがアーセルを叱りつける。「不健全の塊はあなたよ!」
「うるせぇ、このばばあが!」
「何だい、呑んべぇじじいのくせに!」
リタとアーセルは睨み合う。ミュウミュウはその傍らでおろおろしている。オーランド・ゼムはそんな様子をにやにやしながら眺めている。……こっちはこっちで不健全ねぇ。ジェシルは溜め息をつく。……あ~あ、早く帰りたいわぁ。ジェシルは宇宙パトロールにある自分のオフィス、自宅である屋敷を思い出していた。
「……とにかく、修理が終わったら出発ね。さっさと終わらないかしら」ジェシルはつぶやく。「ベルザの実も食べたいし……」
「まあそう嘆くなよ、ジェシル」オーランド・ゼムは笑う。「皆で揃って宇宙パトロールに行くまでは、あと少しじゃないか」
「そうだけど、あと一歩って所で足踏みするのって、とっても疲れるのよねぇ……」
「そうかい。じゃあ、ビョンドルに、長期休暇が取れるようにと進言させてもらうよ」
「ええ、是非よろしく!」ジェシルは操縦席から立ち上がる。「それを聞いてやる気が出たわ。……ほんの少しだけど」
「ははは、正直だねぇ……」
そこへハービィが戻って来た。
「おや、ハービィ」オーランド・ゼムが声をかける。「一人かね? ムハンマイドはどうしたのかね? それと、修理は完了したのかね?」
「一人です。ムハンマイドは外です。それと、修理はまだ完了していないです」ハービィはオーランド・ゼムの質問の一つ一つに答える。「修理ですが、思った以上に時間がかかりますです」
「え~っ……」それを聞いたジェシルは崩れるように操縦席に座り込んでしまった。「そんなぁ……」
「ハニー」ハービィはぎぎぎと音を立てながら頭をジェシルに向ける。「ハニーがどうしてもすぐにでも発進させたいと言うのなら、わがはいはやぶさかではない。ただし……」
「ただし、何?」
「……」ハービィは、ジェシルに返事をせず、動かなくなる。何やら計算をしているようだ。「今、発進すれば、仮補修の状態だから、約二時間後には爆発する。それでも良ければ……」
「分かったわ、ハービィ…… 爆発まで一時間長くなっただけじゃ、意味が無いわね」ジェシルは苦笑する。「ハービィ、より安全な運行のために、しっかりと修理をしなければいけないわね。だから、修理を最優先でお願いするわ」
「了解、ハニー」
ハービィはぎごちなく動きながら、コックピットの出入り口へと向かう。
「それで、ハービィ……」オーランド・ゼムが声をかける。「修理にはどれくらいかかるのかね?」
「はい、丸二日はかかりますです」
「そうか、分かった……」さすがのオーランド・ゼムもため息をつく。「まあ、ムハンマイド君と協力して、頑張ってくれたまえ」
「ねぇ、ハービィ」ジェシルが言う。「手伝いはいらない? 人手があった方が早く終わるんじゃない?」
「大丈夫だよ、ハニー」ハービィがぎぎぎと頭を回してジェシルを見る。「ムハンマイドが言うには、わがはいで充分なのだそうだ。後は邪魔になるので、昼寝でもしていろと言っている」
ハービィは言うと頭を戻してコックピットを出て行った。
「何よ! あのムハンマイドって!」ジェシルは荒れる。「すっかりハービィまで手懐けちゃってさ!」
「おや、妬いているのかね?」オーランド・ゼムは、むっとした顔で見返すジェシルを見て笑う。「まあ、彼らに任せるしかあるまいさ」
「……あのう……」ミュウミュウがおずおずとした様子で言う。「修理が終わるまで、船内に居なければならないのでしょうか? わたくしには、ちょっと息苦しくて……」
「そうね、わたくしもそう思っていましたよ」リタもうなずく。「それに、アーセルなんかと、これ以上同じ空間になんぞ居たくありません」
「ふん!」アーセルが鼻を鳴らす。「そりゃあ、こっちのセリフでぇ!」
リタとアーセルは睨み合う。ミュウミュウはその傍らでおろおろしている。オーランド・ゼムはそんな様子をにやにやしながら眺めている。……やっぱり不健全よねぇ。ジェシルはうんざりする。
つづく
「おや、一人かい?」オーランド・ゼムが言う。見れば分かるでしょ、と言わんばかりにジェシルが睨みつける。しかし、オーランド・ゼムは平然としている。「それで、ハービィとムハンマイドはどうしたのだね?」
「ふん!」ジェシルは鼻を鳴らし、そっぽを向く。「二人仲良く修理中よ!」
「ジェシル、君は立ち合いをするのではなかったかね?」オーランド・ゼムは白々しく言う。「途中で抜けて来るとは、良くないねぇ……」
「良いのよ! アンドロイドと偏屈天才とは気が合うみたいだから! わたしは、そんな不健全な場所には居られないわ!」
「そうだ、そうだ!」アーセルがボトルを振り回しながら割り込んでくる。「下らねぇ青二才なんぞ、不健全の塊だぜい!」
「何を言っているんだい、アーセル!」リタがアーセルを叱りつける。「不健全の塊はあなたよ!」
「うるせぇ、このばばあが!」
「何だい、呑んべぇじじいのくせに!」
リタとアーセルは睨み合う。ミュウミュウはその傍らでおろおろしている。オーランド・ゼムはそんな様子をにやにやしながら眺めている。……こっちはこっちで不健全ねぇ。ジェシルは溜め息をつく。……あ~あ、早く帰りたいわぁ。ジェシルは宇宙パトロールにある自分のオフィス、自宅である屋敷を思い出していた。
「……とにかく、修理が終わったら出発ね。さっさと終わらないかしら」ジェシルはつぶやく。「ベルザの実も食べたいし……」
「まあそう嘆くなよ、ジェシル」オーランド・ゼムは笑う。「皆で揃って宇宙パトロールに行くまでは、あと少しじゃないか」
「そうだけど、あと一歩って所で足踏みするのって、とっても疲れるのよねぇ……」
「そうかい。じゃあ、ビョンドルに、長期休暇が取れるようにと進言させてもらうよ」
「ええ、是非よろしく!」ジェシルは操縦席から立ち上がる。「それを聞いてやる気が出たわ。……ほんの少しだけど」
「ははは、正直だねぇ……」
そこへハービィが戻って来た。
「おや、ハービィ」オーランド・ゼムが声をかける。「一人かね? ムハンマイドはどうしたのかね? それと、修理は完了したのかね?」
「一人です。ムハンマイドは外です。それと、修理はまだ完了していないです」ハービィはオーランド・ゼムの質問の一つ一つに答える。「修理ですが、思った以上に時間がかかりますです」
「え~っ……」それを聞いたジェシルは崩れるように操縦席に座り込んでしまった。「そんなぁ……」
「ハニー」ハービィはぎぎぎと音を立てながら頭をジェシルに向ける。「ハニーがどうしてもすぐにでも発進させたいと言うのなら、わがはいはやぶさかではない。ただし……」
「ただし、何?」
「……」ハービィは、ジェシルに返事をせず、動かなくなる。何やら計算をしているようだ。「今、発進すれば、仮補修の状態だから、約二時間後には爆発する。それでも良ければ……」
「分かったわ、ハービィ…… 爆発まで一時間長くなっただけじゃ、意味が無いわね」ジェシルは苦笑する。「ハービィ、より安全な運行のために、しっかりと修理をしなければいけないわね。だから、修理を最優先でお願いするわ」
「了解、ハニー」
ハービィはぎごちなく動きながら、コックピットの出入り口へと向かう。
「それで、ハービィ……」オーランド・ゼムが声をかける。「修理にはどれくらいかかるのかね?」
「はい、丸二日はかかりますです」
「そうか、分かった……」さすがのオーランド・ゼムもため息をつく。「まあ、ムハンマイド君と協力して、頑張ってくれたまえ」
「ねぇ、ハービィ」ジェシルが言う。「手伝いはいらない? 人手があった方が早く終わるんじゃない?」
「大丈夫だよ、ハニー」ハービィがぎぎぎと頭を回してジェシルを見る。「ムハンマイドが言うには、わがはいで充分なのだそうだ。後は邪魔になるので、昼寝でもしていろと言っている」
ハービィは言うと頭を戻してコックピットを出て行った。
「何よ! あのムハンマイドって!」ジェシルは荒れる。「すっかりハービィまで手懐けちゃってさ!」
「おや、妬いているのかね?」オーランド・ゼムは、むっとした顔で見返すジェシルを見て笑う。「まあ、彼らに任せるしかあるまいさ」
「……あのう……」ミュウミュウがおずおずとした様子で言う。「修理が終わるまで、船内に居なければならないのでしょうか? わたくしには、ちょっと息苦しくて……」
「そうね、わたくしもそう思っていましたよ」リタもうなずく。「それに、アーセルなんかと、これ以上同じ空間になんぞ居たくありません」
「ふん!」アーセルが鼻を鳴らす。「そりゃあ、こっちのセリフでぇ!」
リタとアーセルは睨み合う。ミュウミュウはその傍らでおろおろしている。オーランド・ゼムはそんな様子をにやにやしながら眺めている。……やっぱり不健全よねぇ。ジェシルはうんざりする。
つづく
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