岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

著書:新宿クレッシェンド
とりあえず過去執筆した作品、未完成も含めてここへ残しておく

2(真・進化するストーカー女編)

2019年08月01日 16時48分00秒 | 鬼畜道 各章&進化するストーカー女

 

 

1(真・進化するストーカー女編) - 岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

鬼畜道~天使の羽を持つ子~(真・進化するストーカー女編)これまでの人生で、一番信頼の置ける先輩の最上さんの結婚。あとを追うかようにあのわがままな武村でさえ結婚&he...

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 格闘技大好きと自分のプロフィールに書いていた女がいた。名は『文江』。自分のこれまでを振り返ると、この女はそれだけで俺にメロメロになるだろうと思い、メッセージを送信する。毎回この女だけは違う。そう自分に言い聞かせながら、想像を膨らませていく。
《はじめまして神威といいます。プロフィール見ていて少し興味を持ちました。良かったら返事下さい。待ってます。 神威龍一》
 現実でも架空の中でもやはり女のほうが有利にできているもので、始めの頃は素っ気ない返事が来るぐらいだった。
《はじめまして。メッセージありがとうございます。私は文江と言います。神威さんってどんな感じの方なのかな? 文江》
 俺は過去バーテンダーをやっていた事や、格闘技の試合に出場した事などを自分に都合良く並べ立てて返信した。歌舞伎町でのゲーム屋の事は伏せておく。妙なプライドを持つ俺は、ムキになってメッセージを送る。
《ねえ、神威さん。この掲示板を使いながらだと、いちいちログインしないとメッセージ見れないでしょ? だからお互いのメールアドレスの交換しない? 文江》
 気付けば文江は俺に興味を抱くようになった。
 俺は痛い目に何度か遭っているのに、何度も同じ行為を繰り返した。
 格闘技好きな文江と毎日のようにやり取りをしつつ、俺は九州に住む介護福祉士をする女とも仲良くなっていた。名は『友香』と言った。
 ある日、友香が俺の住所を聞いてきて、写真と手紙を送ってくる。友香の写真を見た俺は、こんなにいい女がいるのかと本当に驚いた。俺も自分の写真を撮り、友香へ送る。すると彼女も俺の顔を気に入ってくれたようだ。
 顔を知った友香。顔も知らない文江。それぞれとやり取りしていたバランスは、それで一気に傾く。俺は文江からのメッセージが来ても返事をほとんど返さなくなり、どんどん友香にのめり込んでいった。
 しばらくして文江からのメールに進展するような事が書いてあった。自分の住所、続いて彼女の気持ちが書きつらねてあったのだ。
《龍一の写真が見たい。気持ちを抑えられない。言葉だけのやり取りはもう嫌だ。住んでいるところも東京と九州。離れ過ぎている。どうにかなっちゃいそう。お願い、顔が見たい。こういう事、言う女、嫌? ごめんね。でも、日に日に想いが募るばかりなの…。この気持ちが止まらないの……。 文江》
 偶然と言うか文江も九州だった。友香と案外近所だったりして……。
 そんな馬鹿な事を考えていると、続いて文江から初めて電話が掛かってきた。

「もしもし」
「うわ…、誰だか分かるよね?」
「ああ、もちろん」
 文江の携帯電話番号は以前教えてもらった時にすぐ登録していた。
「龍一の声、すごい素敵……」
「文江の声だって可愛いよ」
 メールから電話へ。俺の頭の中のウエイトは、徐々に二人の事でいっぱいになっていく。幸せになりたい。いずれにせよ、どちらかを選ばなきゃいけない。
 まだ文江のほうは顔すら見ていないのに、俺は何て馬鹿な事を思っているんだろう。ただ、これだけこう毎日やり取りできているという事実。お互いのフィーリングや価値観が非常に合っている証拠だ。
《俺の写真? 別に構わないよ。でも俺も同じように文江の顔が見たいんだ。明日同時に写真を送り合おうよ? 嫌かい? 神威龍一》
 メールを送り返す。顔が見たいのはお互いさまなのだ。
《うん、分かった。じゃあ明日、同時に出そうね。龍一ってどんな顔をしてるんだろ? 私、興奮してしばらく眠れなそう。 文江》
 次の日に、自分の写真を同封して送った。この手紙は、遠い九州まで羽ばたいていく。俺は、文江が自分の写真を送ってくるのを楽しみにしていた。
 友香ともベタベタするような内容のやり取りを繰り返し、俺は再び文江との距離も縮んでいる。どうするんだ、これから……。
《龍一からの手紙届きました。写真見てビックリ! 本当に龍一って格好いいなあ。何で芸能人にならなかったのって思ったもん。あまりそういうの興味なかったのかな? 文江》
 文江は手紙が届いた瞬間、前よりもエスカレートして連絡を頻繁にくれるようになった。俺の写真について褒め千切るメール。しかし、文江からの写真は届かない。
《まだ文江からの手紙、こっちには届かないよ? どうかしたのかい? 神威龍一》
 少しイライラしながらメールを送った。
《ごめんね。ちょっとバタバタしちゃってたの。 文江》
 手紙を送ってから一週間が過ぎた。まだ彼女は自分の写真を送ってきてくれない。俺はじれったさを覚え聞いてみた。友香はちゃんと写真くれているのにな。
《文江、俺が写真を送ったのは純粋に自分を知ってほしいからだけど、何故君は自分の写真を送ってくれないんだい? 非常に気になる。どんな顔をしているのか見てみたい。最初に約束したでしょ? お互いの写真を送るってさ。駄目かな? 神威龍一》
 何度もメールを読み返し、これを送っていいものか悩んだ。しかし人間、好奇心にはなかなか勝てないものである。相手を思いやる気持ちよりも、自分の好奇心のほうが数段上になってしまう。俺は文江にこのメールを送信した。
 それから二日間、文江からの連絡はなくなった。少し焦りすぎたかな……。
 自分自身に対し、反省した。しかしもう遅い。まあいいや。俺には友香が残っている。
 そんな事を考えていると、一通のメールが届く。
《私ね、龍一に何度も写真を送ろうとしたの。でも、顔を見られて嫌われちゃったら嫌だなって…。そう思うと、怖くなっちゃって送れなかったの。ごめんね。 文江》
 まったくつまらない事を言うんだな。俺は文江からのメールを見て、返信メールを打ってみた。
《馬鹿だなあ。何で文江の写真を見て、俺が嫌いにならなきゃいけないんだよ? 悪い方向に考え過ぎだって。俺は純粋に文江の顔が見たいの。そんな風に考えないでほしい。絶対に嫌わないからさ、ね? 神威龍一》
 優しく書いてみたが、本心は文江の顔を知りたかったというのが強い。じれったい女だなと思いつつ、俺は送信ボタンを押した。
 そろそろ実際に会ってみたい。距離が遠いのがネックだが、二連休ぐらいなら何とか取れる。このまま文江が写真を送ってこないようなら、友香だけを選ぼう

 一週間が過ぎ、それでも文江からの手紙は来ない。
 決めた。俺は友香を選ぶ。
 もう文江から連絡が来ても返事など返すのはやめよう。そう自分に言い聞かせ、友香へメールを打つ。
《今度さ、強引に休みを取るから、実際に逢わないか? 俺は君の事をいつだって想っているんだ。逢ったらすぐにでもこの両手で抱き締めたい。ギュッとね。休みが取れたら前持って言う。だから前向きに考えてほしい。親愛なる俺の友香へ。 神威龍一》
 うん、これでサイは投げてしまった。俺は友香を選んだのだ。そう思っていると、すぐにメールが届く。ずいぶん早いな、友香の奴。俺はメールを見て心臓がとまりそうになった。
《酷い…。酷過ぎるよ、龍一……。友香って誰? 何が親愛なるなの? 文江》
「……」
 焦って心に余裕のなかった俺は、送信先を間違って文江に送っていたようだ。これにはさすがに罪悪感を覚えた。文江にしてみたら、今まで甘い優雅なひと時を過ごしていたところ、いきなり後頭部をバットでフルスイングされたようなものだ。
 自分の馬鹿さ加減を呪ったが、やってしまった事は取り返せない。いくら後悔したところで遅いのである。
 面倒だ。このまま文江を切ってしまえ。いい機会だ。労せず切れるんだ。
 しかし、内心文江の顔を知っておきたいというつまらない好奇心もあった。
 俺は文江へ電話をした。
「すまなかった」
「酷いよ……。何であんなメールを私に送るの?」
「間違えて送ってしまった。それについては謝る。ごめん」
「何でそんな事を間違えるの? それに私とだけじゃなかったの?」
「間違えた事については謝る。だけど、俺もおまえも出会いったのは出会い系サイトなんだぞ? おまえだって未だやり取りしている奴はいるだろう?」
「もうそんな人いない! たまにメッセージを送ってくる人いるけど、そんなのに返事なんて返さないし、龍一以外の人なんてどうだっていい!」
 ここまで言われて嫌な気分になる男などいるのだろうか? しかも俺は彼女に相当酷い仕打ちをしているのにも関わらず。
「ごめん……」
「もう私の事、嫌いになっちゃったの? どうでもよくなったから、あんなメールを送ったの?」
「いや、そんな事はない。確かに俺は友香という女とやり取りをしている」
「そんな事聞きたくない!」
「でも、都合いいかもしれないけど、おまえの事だって同じぐらい好きだよ……」
 自分で喋っていて何を言ってんだと思った。
「……」
「じゃなきゃ、ああやってメールでやり取りしたり、わざわざ俺の写真なんて送るかよ?」
「よく考えさせて下さい…。今度、メールします」
「ああ、本当にすまなかった」
 電話を切っても酷い罪悪感だけが残っていた。

 文江とそんな事があったなんてまるで知らない友香は、いつだってご機嫌だった。
《龍一の現役時代の体を見たかったなあ。私、スポーツマンって大好きなの。 友香》
《そんなのリアルな俺と逢えば、すぐにその目で確認できるよ。今度休み取って九州まで、鹿児島まで行く。だから近い内逢わないか? 神威龍一》
 真面目な職業で働く友香はどうもいまいち腰が重い。俺が休みを取って鹿児島まで行くと何度言った事だろうか? その度彼女は「龍一との事は真剣に考えているの。うちの両親にも話している。だから軽く簡単に来ちゃうって言うんじゃなくて、ちゃんと手順を踏んでさ、それから……」と同じ事を繰り返し言う。
 今すぐにでもやりたいは俺は、下半身が暴走する寸前だった。金はそこそこ稼いでいるのだ。今さらマスターベーションで済ますなんてできない。俺は財布に十万円ほど札をつっ込み、外へ出る。こんな時は決まってキャバクラでしこたま酒を飲み、風俗に行って女を買った。
 間違ってメールを送った以来、文江からは毎日のようにメールが届く。他愛もない日常を綴ったどうでもいい内容のメール。まだ自分の写真を送ってこない文江には、苛立ちを感じていた。うんざりした気分でメールを見る。
《私は純粋に龍一の事が好き…。だから、龍一も私の事を好きになってほしい 文江》
「……」
 いつもとは感じが違った内容のメール。
 見ていて、ゾッとした自分がいた。何かこう背筋に冷たいものがゆったりと垂れてくるような感覚。
 今までは、彼女からのメールを楽しみに待っていた部分もあったが、俺はこのメールで少し恐怖心を覚えている。
 十分ほど過ぎると、再度文江からメールが届いた。
《あれ、龍一? まだ私のメール見ていないのかな? 本当に龍一の事が大好きなの。お願いだから、私の事を好きって言って……。 文江》
 俺が言っているのは写真を送れという事なのに、何でこの女はまったく違う事を言っているんだ? 第一顔すら知らない女をどうやって好きになれというのだ。先日勢いから俺は電話で「おまえが好きだよ」と言った。でもあれはただの勢いだ。
 夢中になるのは分かるけど、自分がしている事を文江は自覚しているのだろうか? 危険信号を本能的に感じていた。
 また十分経ち、文江からのメールが来る。
《ねえ、どうしたの? いつもならすぐに返事来るのに…。ひょっとして寝ちゃってる?それとも私が写真を送らないから怒っているの? 嫌われたくないんだ、私。 文江》
 嫌われたくないという女心は分からないでもない。しかし最初に約束をしたのだ。お互いの写真を見せ合うと。ジャンケンしようと俺がパーを出したあとで、チョキを出すようなものと同じである。卑怯な後出しジャンケンをしておいて、ムチャクチャな要求をしているのだ。
 普通に写真を送ってくればいいだけなのに……。
 何とも薄気味悪いものを感じた。それに言っている事は一見可愛く見えるが、やっている事は非常に卑怯である。
 どう返事を返したらいいか散々迷い、結局この日は返事を見送った。やはり真面目でちゃんとした友香を選ぶべきなのだ。

 俺は『ワールド』の従業員たちにお願いし、強引に休みを二日間取る事にした。もう友香の心の準備なんて待っていられない。金を出せば女はいくらだって買える。でも、俺は愛されたい。愛が欲しい。愛に飢えていた。
 その愛に今、応えられるのは友香しかいないと感じた。決して文江ではない。
 早速休みが取れた事を友香に伝える。そして鹿児島へ行くと自分の意思をハッキリ言った。しかし友香は「お願いだからもうちょっと我慢して」と同じ事を言う。
 俺の気持ちほど、この女は盛り上がっていないんだな。こいつももういいや。イライラした俺は不機嫌そうに電話を切った。
 その日の夜、いつものように『ワールド』で仕事をしていると、彼女から着信履歴が二十回あった。仕事上、携帯電話を持ち歩けないので休憩室に置いていたが、これに気付いた俺は何かあったのかと驚いた。
「島根君、ちょっと外で電話してくるから」
「こっちは任せて下さい。大丈夫ですよ。ごゆっくりどうぞ」
 俺は店の従業員に甘え、仕事中にも関わらず外へ飛び出す。そして慌てて友香に電話をした。
「友香、俺だ! もしもし?」
「あ~、りゅ~いち~」
「……」
「か~む~い、りゅ~いちさんですか~」
 友香の声を聞いて、すぐ酔っているのが分かる。今『ワールド』はほぼ満卓状態。本当はこうして抜け出すのも他の従業員に示しがつかないし、悪いと思っているのだ。この時間に俺は仕事中というのを分かっていながら、陽気な声で話す友香。
「何回も着信あったけど、何かあったのか?」
 感情を押し殺し、冷静に言うと、すすり泣く声が聞こえる。
「逢いたいよ~…。龍一に逢いたいよ~」
 これが仕事以外の時間なら喜んでいたかもしれない。しかし現状をまるで把握しない友香の言動に対し、苛立ちを覚えた。
「あのさ…、俺は今、仕事中な訳ね? 友香だってそこは分かるでしょ? 酒飲んで陽気になるのも分かる。でもさ、もうちょっと考えてくれないかな?」
「ご、ごめんなさい……」
「忙しいから電話切るよ」
 少し冷たいと思ったが、仕方ない。友香はちょっとこうした現状を理解しないところがある。俺は昼に寝て、夜になれば歌舞伎町へ行く。逆に友香は介護福祉士をしているので、一般的な生活のリズムだ。でも、彼女は昼間にメールや電話をして、俺が寝ていて返せないと、それに対し不満を言ってくる節があった。
 文江からは変わらず毎日のようにメールが届いている。
《何故、昨日はメールをくれなかったの? 文江》
《寂しいよ~。逢いたいよ~。 文江》
《もっと龍一の写真が見たいな。キャー恥ずかしい、きゃはっ! 文江》
《私の事、好き? 嫌い? 文江》
《この間、龍一と一緒に暮している夢を見ちゃった。 文江》
 そんなどうでもいい内容のメール。やっぱり出会い系サイトじゃロクな出会いなどないのかもしれないな。
 俺は文江からのメールを無視する事に決めた。これはもうしょうがない事なんだと割り切る事にする。
 仕事が終わる時間になって、友香から何度もメールが届いた。ごめんなさいというお詫びのメール。しかしうんざり気味の俺は、友香からのメールさえ無視した。
 家に帰り、熱い風呂に入る。横になると疲れていたのかすぐ寝てしまった。

 今日も歌舞伎町へ。夜の八時の目覚ましが鳴り、いつもの日常が始まる。
 携帯電話をチェックすると、たくさんのメールが届いていた。文江と友香の二人からだった。
《何度も謝ります。ごめんなさい。だから機嫌を直して龍一。許してくれないの? 昨日は寂しかったから、つい何度も電話しちゃったの。気持ちは分かるでしょ? 本当に龍一の声が少しでも聞きたかったの。 友香》
《何で連絡を急にくれなくなったのよ! あれだけ二人はうまくやってきたでしょ? 最近の龍一、ちょっとおかしいよ。どうしちゃったの? 文江》
 読んでいて溜息が出る。俺は文江からのメールをすべて削除し、友香に返事を打つ事にした。
《俺さ、一応店の店長な訳ね? 仕事中にああいう事をされて、それを責められても、ハッキリ言うと難しいよ。これからはお互い必要最低限の連絡だけしか取らないようにしようよ。 神威龍一》
 メールを送って少しすると、友香から何度も着信があった。俺のメールの内容に怒り狂っているのだろう。これからゲーム屋の面倒な客を相手にしなきゃいけない俺は、電話には出ず、そのまま家を出た。
 西武新宿線本川越駅に到着すると小江戸号に乗り、タバコに火をつける。窓の外を眺めていると、友香からメールが届く。
《必要最低限のメールって何それ? もういいよ、龍一なんて。 友香》
 俺は手帳に挟んでおいた友香の写真を取り出し、じっくり見てみる。本当に綺麗な女だ。このまま一度も逢わず、終わっていいものだろうか? 逢えばすぐ抱けるのも分かっていた。頭の中が性欲で支配される。
 俺は席を立ち、電車の繋ぎ目にあるデッキに出て、友香へ電話を掛けた。
「何を怒ってんだよ? 俺は仕事中にああいう事をされちゃ困るから、メールをしたの。何でそれが分からないの?」
「だってー……」
 友香はそれ以上何も言えず、ただ泣きじゃくった。
 しばらく俺は何も言わず、友香の泣き声を聞いていた。ちょっとぐらい優しい言葉を掛けてやるか。
「いいかい、友香? 俺はちゃんとおまえの事はいつだって考えているよ?」
「うん……」
「たださ、こうやって電話だって普通にできるのも、今の仕事をちゃんとやっているからなのね? それは友香だってそうでしょ? 俺たち電話代、月にいくら掛かっているよ? 洒落にならないぐらい請求来ているでしょ?」
「うん……」
 先月の携帯電話代。俺は五万七千円。友香は四万二千円。尋常じゃない料金である。
「だからさ、仕事中にいくら酔ったとはいえ、ああいう風に友香から二十回も電話あったら、さすがに俺だって心配するでしょ?」
「うん……」
「電話をくれる気持ちは嬉しいさ。でもね、仕事に支障が出るぐらい分かるでしょ?」
「分かんない。そんなの分かんないよーっ!」
「あのさ…、逆に聞くけど。俺がもし、友香の働いている時間。その時さ、一日何回も電話しようか? 嫌でしょ? 仕事にならないでしょ?」
「嬉しい。私はそうされたら嬉しい」
 話にならないと思った俺は、携帯電話の電源ごと切っていた。
 しばらく時間を置かないと駄目か……。
 本当なら面倒だから関係を終わりにすればいいだけの話。しかし俺の下半身がそれを許してくれない。こんな時、男って悲しい生き物だなあと実感する。

 仕事を終えた俺は歌舞伎町をボーっと歩く。無駄に性欲があるからいけないのだ。抜いて抜いて抜きまくれば、あんな面倒な女などどうだってよくなるはず。
 自然と俺は、ファッションヘルス『モーニングぬきっ子』に入っていた。
「はい、いらっしゃい!」
 威勢のいい従業員が出迎える。俺は軽く会釈して壁に貼ってある風俗嬢の写真を眺める。
「誰かご指名の子はいらっしゃいますか?」
「うーん、そうだね~」
 端から順々に貼られている女の写真を見る。
「ん……」
 一枚のポラロイド写真に目が止まり、そこに視線が釘付けになる。右から三番目の写真。何だ、この女……。
「お客さま、モモさんですか? お目が高い。この子は、当店ナンバーワンですよ」
「うん、いいね、この子! すぐ入れる?」
「ええ、十分もしないで入れますよ」
 俺は運がいい。ナンバーワンなんて予約でもしない限り、まずつく事なんてない。
「じゃあ、この子で」
「前金で一万六千円になります。あとは待機室でお呼びするまでお待ち下さい」
 うん、こうやって金を払えばすぐにだって女は抱ける。ファッションヘルスは口で抜くだけだから本番までないけど、駄目というお店で女を口説きやるからこそ面白いのだ。
 手帳から友香の写真を取り出し、再び眺めた。確かに綺麗だけど、あんな面倒な性格じゃ俺自身駄目になる。歌舞伎町の住人なんだ、俺は……。
「田中さん! お待たせしました」
 いつも俺は適当な偽名をこのような店で使っていた。とてもじゃないが本名で呼ばれるなんて嫌だ。席を立ち、従業員のあとをついていく。
「お待たせしました。モモさんでーす!」
 白いカーテンが開き、モモという源氏名の風俗嬢が現れる。
「……」
 一瞬言葉を失った。こんな清楚で綺麗な女が風俗嬢にいたのか? 写真とほぼ変わらない実物。ワイシャツを軽く羽織っただけなので、胸の形までよく分かる。スタイルも抜群の女だった。
「いらっしゃいませ。あれ、どうしたの?」
「はは、君があまりにも綺麗だから見とれてた……」
「まったくうまいなあ、もう」
 嘘じゃなかった。自然と口から出た台詞だった。
 小さな部屋に到着すると、女はワイシャツを静かに脱いでいき、豊満な乳房が見える。俺の下半身はギンギンだった。
 通常ならこのままシャワーを浴び、それからベッドに寝てという手順なのに、俺はいつの間にかモモを抱き締めていた。
「ちょ、ちょっとお客さん……」
「ごめん、あまりにも綺麗だったから思わず抱き締めちゃった」
「もう……」
 興奮した俺はどんどん冷静さを失う。彼女を抱き締める両腕に力が入っていく。
 弾力のある大きな胸の感触。
 鮮やかな赤い唇から発せられる吐息。
 理性が吹き飛んでいく。
 気付けば本能の趣くままに女を押し倒して、唇を半ば強引にむさぼっていた。歯と歯がぶつかり合う。
 気にせず右手を女の服の上から入れ、胸の辺りをまさぐりだす。一瞬、女は逃げようとするが、強引に舌をねじり込むと大人しくなった。
 脱ぎ掛けの服を丁寧に一枚一枚脱がし、下着姿にする。
 美しい…。何て見事なダイナマイトボディーなんだ。もう俺の理性はとまらない。ブラジャーを強引に剥ぎ取り、乳首に舌を這わせる。パンティーの上から手を入れようとすると、激しく動いて女は抵抗した。
「やめて! まだシャワーも何も浴びてないのよ?」
 確かにその通りだ。ちょっと興奮し過ぎた。でもそれだけこの女は魅力的だった。
 あれだけ日にちを掛けて積み重ねてきた友香や文江など、どうでもよくなっていた。

 俺もズボンや靴下、パンツを脱ぎ、バスタオルを手に取る。モモの体から出る色気に興奮して、俺の局部はギンギンになっていた。見られないよう素早くバスタオルを巻きつける。
 準備が終わると、モモもバスタオルを胸から巻きつけ、身支度を整えたところだった。
「じゃ、シャワー行こうね」
 モモは部屋にある内線電話の受話器を手に取る。横から見てもすごいプロポーションだった。思わず、バスタオルをむしり取りたくなる衝動を懸命に堪える。
「シャワー入りまーす」
 受付けに連絡してシャワー室へと向かう。
 束の間の疑似恋人体験を演出しているつもりなのか、モモはシャワー室に向かっている最中も手を繋いでくる。
「あら、もうビンビンじゃない」
「言ったろ、風俗でこんないい女に初めて会ったって」
 シャワー室に入るとバスタオルを取り、お互いに裸になる。
 モモの体は惚れ惚れするぐらい素晴らしいプロポーションだった。圧倒的な威圧感。この体は反則である。顔良し、スタイル良し、サービス精神も良し……。
 この『モーニングぬきっ子』で、ナンバーワンと店員が言っていたが、歌舞伎町のどの店に行ってもこいつなら、絶対にナンバーワンになれるだろう。
「すごいエロい体だな。今日はほんとにラッキーだ」
「何人にその台詞、使ってんのよー」
 モモは笑顔を俺に向けながら、シャワーの温度を手で確認している。
「これぐらいの温度で調度いい? 熱くない?」
 シャワーを体に掛けながら聞いてくる。
「ああ、問題ない」
 モモはペロッと舌を出してからボディソープを手に取り、俺の首の周りから肩、脇の下、胸、背中といやらしい手つきで洗っていく。
 ギンギンになっている俺の一物にもゆっくり撫で回しながら丁寧に洗う。
 シャワーで流し終えるとそのまま下にしゃがみ、俺の局部を形のいい口にくわえ始める。
 すごい舌使いだ。でも、こんなシャワー室で果てる訳にはいかないので、モモの頭を手で押さえ、ゆっくり離させる。
「アハ…、もういきそうになったんでしょー?」
「うるせー、そういうのは部屋に行ってから、やれって」
 モモは立ち上がり、得意そうな顔をしている。
「私は超テクニシャンなのだ」
「はいはい」
 プラスチックのコップを取り、イソジンの液体を入れてからシャワーのお湯を足し、俺に差し出してくる。
「じゃー、これ…、うがいしてね」
「あ、ああ」
 取ろうとすると、モモは意地悪そうな顔をしてコップを引いた。そのままモモはコップの中身を口に入れ、不思議そうな顔をしている俺に迫ってキスをしてくる。自分の口に含んだ液体を口移しでゆっくりと流し込んできた。
「こっちのうがいのほうがいいでしょ?」
 俺はガラガラとうがいして、下に吐く。
「もう一回したい?」
「ああ」
 すっかりモモのペースだ。また口移しで流し込んでくる。
 うがいをし終わると、バスタオルで俺の体を丁寧に拭いてくれた。
「じゃあ、お部屋に戻ろうか? シャワー出まーす」

 シャワー室から部屋に戻ると、モモはバスタオルを両手でとり、見事な裸体を披露した。俺の視線は、自然とモモの体に釘付けになる。
「ほーら、ボーっとしてないで、ベッドに横になってよ」
 言われるまま、俺はベッドに横になる。
 モモが俺にまたがってきた。
 蛇の舌のような動きで全身を責めてくる。俺の体は快感で酔いしれる。この女、自分で言うだけあってもの凄いテクニックだ。
 モモの舌の動き、口から漏れる生暖かい吐息、形のいい豊満な胸が、たまに俺の体にかすってくる感触。
 もうそろそろ限界だ……。
 我慢できそうにないので、俺は体勢を入れ替え、攻めに転じた。
 モモの素晴らしいプロポーションをじっくり眺めてから、舌を絡め合い、乳首を貪る。彼女の体はとても敏感で、攻める度にピクリと体をよじらせた。
 これだけよがられると男冥利に尽きる。俺はこのままどうしても、この女に入れたくなってしまった。
「気持ちいい……」
 とろけそうな視線で俺を見るモモ。それを見て、さらに興奮は増してくる。何という色っぽい声なんだろう。これ以上の興奮があるのだろうかと思うぐらい、気分が上昇していく。
「気持ちいいか?」
「うん、あっ、そこっ…、いいっ!」
 モモの体が激しく動く。こんなエロい女見たことがない。
「モモ…。なあ、入れていいだろ?」
「駄目! ここはヘルスでしょ? 本番は駄目なの」
「そんなの分かってるよ。でも気持ちいいだろ? だからやらせろよ」
「ダーメ」
 モモのガードは固い。
 俺が強引に入れようとしても体を仰け反り、手でしっかりとガードして絶対に俺の局部の侵入を許さない。
 余計に俺はムキになって入れようとする。
「駄目だったら! やめてよ」
 モモが真剣な顔つきになっていく。俺はもう何を言われても収まらない状態になっていた。
「これ以上、しつこいと店員呼ぶわよ?」
「じゃあ、近い内デートしてくれ。ひと目見てこんなに気に入ったの初めてなんだ」
「……」
「調子のいい台詞で言った訳じゃない。本気で今、言っている……」
 しばらくモモは俺を見つめていた。
 俺はモモから離れ、ベッドに腰掛けてタバコに火をつける。
「本気で言ってるの?」
 ゆっくり煙を吐き出す。
「ああ…。嘘ついているように見えるか?」
 俺がタバコを吸い終わるまで、モモは何も答えなかった。
 またベッドの上に横になる。
「仕事しろ」
 黙ったまま俺の体に乗るモモ。
 元々セックスは受身じゃない俺は、少ししてモモの乳首をいじりだした。敏感な彼女は体をくねらす。モモを逆に寝かせ、俺は体中を弄りだした。
 喘ぎ声を出しながら感じるモモ。
 俺は隙ができた瞬間を見逃さなかった。
 腰をモモに向かって力強く突き出す。俺の局部がモモの体の中に突き刺さる。入れた途端、モモの表情が歪みだす。すごくいい表情をする女だ。
「だ、駄目っ! あっ、ぬ、抜いてっ…、あんっ!」
 入れてしまえばこっちのものだ。
 俺は口元をニヤケながら、モモを見つめる。もうこれで俺のペースだ。
 彼女は始めの内だけ抵抗していたが、やがて快感に支配されたように自分から腰を振り始めた。
 あまりの気持ち良さに、俺は強く腰を振った。

 視線は天井を向いたまま、モモの体はまだビクビクッと痙攣している。
 最高のセックスだった。
 あまりの気持ち良さに、俺もあぶなくモモの中でいきそうになったぐらいだ。彼女の形のいい胸に、俺の精子はぶちまけられている。
 俺はティッシュを数枚取り、モモの体にかかった精子を拭ってやる。
「もう、本当に強引なんだから……」
「悪かったな…。でも、おまえのせいだ」
 俺は拭い終えると、服を着替え始めた。モモは気だるそうに体を起こし、俺を睨んでいる。
 財布から一万円札を五枚取り出し手渡した。モモは当たり前のように金を受け取ると、いつの間にか笑顔になっている。
「まったく、もー…。でも気持ち良かった」
「また、機会あったら来るよ」
 俺はコートを羽織る。
 モモは抱かれた事について何も言って来なかった。多分この女にとってそんな事はどうでもいいのだ。金がすべてなのだろう。
「ねえ、連絡先教えてよ」
「ん、どういう風の吹き回しだ?」
「デートしてくれって言ったじゃない」
「ああ、言った」
「何をご馳走してくれるのかな~」
「好きなものをご馳走してやるよ」
「ほんと?」
「ああ、おまえとはセックスもしたいけど、ゆっくり顔を見ながら食事もしたい」
「じゃあ、私の電話番号、紙に書いておくね」
「ありがとう。近い内連絡をするよ」
『モーニングぬきっ子』を出ると、疲れを感じた。俺は真っ直ぐ新宿プリンスホテルへ向かい、部屋を取って休んでからそのまま仕事に行く事にした。
 今度、またここで部屋を取って、その時にモモを誘うか……。
 携帯電話の電源をつけると、友香や文江からメールが届いていた。しかし俺は見る事もなく、そのまま削除して寝た。

 俺は今、モモの体を舐めまわしている。
 その度モモは激しく感じ、体をくねらせる。
『ワールド』の仕事が終わると俺は店に行き、モモを指名した。友香や文江のイライラ。この女がビクンと体を動かす度に、俺のイライラの一つが消えていくようだった。
 モモはビチョビチョに濡れている。俺はまた入れようとした。
「だ、駄目よっ!」
 モモが拒みだす。俺にはその拒み方がギミックにしか映らない。構わずに腰を前に押し込む。モモは前の時よりも抵抗をせずに、簡単に俺の侵入を許した。
 何とも表現のしようがない快感。あっという間に俺はいってしまう。こんな風に簡単にいけるなんて珍しい。いつも風俗に来て、俺は抜かずに帰っていた。別に我慢している訳じゃない。不思議と女によっていけるいけないがあった。何が原因か分からない。だけどいくらセックスをしても、口でされてもいけない女だとまったくいけない。
 そんな俺が何故風俗へ行くのか? 女を抱く行為自体は大好きだった。ひょっとしたら、こうやって素直にいける女を求めていたのかもしれない。
 モモの腹の上に射精して崩れ落ち、体重を預ける。モモの体はまだ痙攣していた。
「ねぇ、こんな間隔も開けないで来て、お金のほう大丈夫なの? 今日なんか三回も延長してるじゃないの。借金してまで来るところじゃないよ」
「そんな金ないような顔してるように見えるのか?」
 モモはニコリと笑って起き上がった。形のいい胸が小気味良く揺れる。
「ふふ、偽善的な事を言ってみたかっただけ」
 俺も起き上がり、タバコを口にくわえた。モモがすぐにライターで火を点けてくる。
「なかなか気が利くじゃねーか」
「エヘヘ……」
 天井を向き、煙をゆっくりと吐き出した。
「もう私の体なしじゃ、いらんなくなったんでしょ?」
 横目でモモを見て、タバコの煙を吹きかける。彼女は大袈裟に咳き込んだ。
 友香や文江とは、どうやって決着をつけよう……。
 泣き叫ぶ友香の顔が目に浮かぶ。
 欲望を吐き出すと、代わりに罪悪感がどこからが湧き出てくる。
 モモは俺の顔をジッと見つめて、人差し指で鼻を押してきた。
「何しやがる?」
「ヘヘヘー」
 こいつは自分が女だという事を完全に理解し、どうしたらうまく生きていけるかを緻密に計算している。
 分かっていながら男共は、モモの作り出す空間に引きずり込まれていく。俺もその中に引きずり込まれた一人なのかもしれない。
 また俺はこの『モーニングぬきっ子』に来て、モモを指名してしまうのだろう。この女の魅力、いや、魅力というよりも、モモの体に夢中と言ったほうが正しい。
 こんな風じゃいけない。これじゃ、ただの客と一緒だ。でも、俺はモモの肉体にハマっている。
「何、黙ってんの?」
「いや、俺って悪い奴だなと思って反省していた」
 実際に俺は友香を裏切った事になる。あいつが、この現状を知ったらどう思うのだろう。
 しょせん俺もクソ野郎だったという訳だ。しょうがない。俺が鹿児島まで行くと言った時、素直に受け入れればよかったのだ。友香とああなってしまった今、俺はモモにすがるしかない。
 友香は俺の事を分かっているようで分かっていない。
 モモは金で転んでくれる……。
「そうよ、絶対に超悪者だ」
「けっ、酷い言い草だな」
「最初に来た時から、私の中に強引に入れてきちゃってさー。もしあの時、私が大声出したら、あなた怖い目に遭ってるのよ」
「怖い目って何だよ?」
「やっぱこういう商売している以上さ、絶対にケツモチっているじゃない?」
「ああ」
 当然そうだろう。俺が働く『ワールド』でもケツモチはいた。歌舞伎町のアンダーグラウンドな店で、ケツモチのついてない店など存在しない。それを出来る限り表に出さないで共存共栄していくのは、どの店だって当たり前にやっている。その点で言えば、『ワールド』は俺がいる。ケツモチなんて呼ぶ必要性がなかった。
「だったら私が大声出したら、どうなるかぐらい分かるでしょ?」
「けっ、おまえがそんな事をしないぐらい分かるさ」
「何でそう言い切れるの?」
「金をおまえは受け取っている」
「まだ今日の分はもらってないわ」
 俺は財布を取り出して一万円札を三枚取り出して渡す。モモは受け取り札を数えると、俺を睨んできた。
「あと二枚足りない」
 がめつい女だ。平気で人から金をかっぱいでいく。あと二万ぐらい払ってやってもいいが、素直に言われて払うと言うのも癪に障るものだ。
「最初に払った額は俺からの気持ちだ。初めて入れた貫通料みたいなもんだ」
「ふざけないでよ。前より二万も値下げを勝手にして、すいぶん私を安く見るものね。じゃあ次来る時は、また二万値下げして私は一万円になる訳?」
「声がでかくなってるぜ。別に騒ぎが大きくなって店員が来てもいいが、すでにおまえだって前に五万、今で三万受け取っているんだぜ。俺もマズいが、おまえだって立場的にマズい事には変わりはないんじゃないのか?」
 モモの顔が歪み無口になる。俺はタバコを口にくわえるが、今度は火を点けてくれなかった。心理状態が非常に分かりやすい女だ。
 自分で火を点けてゆっくりとタバコを吸う。煙をモモに向かって吐きかけると、彼女は微動だにせず俺を睨んでいた。
 俺は財布から二万円取り出し、モモに渡す。一瞬だけ戸惑ったが、素早く金を俺の手からむしり取った。
 しばらく怒った顔をしていたが、金をしまうと急に笑顔になっていた。
「ありがとう」
「そうそう、おまえにはそういう笑顔の方が似合ってる」
 俺はモモの胸をつかみ、ゆっくり揉みだす。ほどよい大きさのピンクの乳首が、じわりじわり固くなる。
「何よ……」
「また、おまえを急に抱きたくなっただけだ」
「二回目は割り引いてあげるよ」
 まだ金を取るつもりなのか、この女……。
「いくらだ?」
 コリコリになった乳首を人差し指で、回転させるように弄ぶ。
「う~ん、二回目は、三万にしといてあげるね」
「ほんと金の掛かる女だ」
 俺は一万円札を三枚放り投げた。札が宙に舞う瞬間、向こうから友香が寂しげな表情で俺を見ているような錯覚がした。
「また来たら三万でいいのか?」
「馬鹿ね、その時はまた五万でしょ」
「ち、がめつい女だ」
 そう言って俺は一物を差し込んだ。
「ひっ、ひぃ……」
 感じた声をあげながら、モモは体をくねらす。

 

 

3(真・進化するストーカー女編) - 岩上智一郎の作品部屋(小説・絵・漫画・料理等)

俺の精液が、モモの顔を伝ってゆっくり流れ落ちた。今日二度目のセックスを済ませたばかりだ。「もー、顔に出さないでよー。目に入ったりすると痛いんだからね」「はは、悪...

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