みなさん、こんにちは
少し前の記事ですが、免許更新と視野検査のことがのっていました。
また、東北大学眼科の国松志保先生の講演を聴講する機会がありましたので内容をまとめてみました。
警察庁が運転免許更新時などの適性検査で、通常は実施しない視野検査を導入すべきか検討を始めたことが20日、同庁への取材で分かった。視野障害が車の運転に与える影響を調べるため、有識者でつくる委員会を設立、来年3月に結果をまとめる。視野障害を巡っては、奈良地裁が昨年7月、交通死亡事故の刑事裁判で視野障害を理由に、視野が狭くなる難病「網膜色素変性症」の患者を無罪(控訴審公判中)とした上で、免許更新時に視野の検査をする必要性に言及していた。
委員会は眼科医や交通工学の専門家ら9人で構成、今年6月に設立した。ドライビングシミュレーターを使って、視野障害が運転に与える影響を研究し、視野検査の導入の必要性や更新の基準について検討する。英米では既に導入しており、海外の制度も調べる。
現在、普通第1種免許や二輪免許の場合、視力が両目合わせて(0.7)以上、片目でそれぞれ(0.3)以上あれば更新できる。片目が(0.3)未満の場合のみ、もう片方の目の視野検査が行われ、視野が左右150度以上で、視力(0.7)以上が求められている。
厚生労働省によると、視野障害をもたらす代表的な病気と患者数は、緑内障で治療を受けている人が全国約72万人(推定)、網膜色素変性症の難病指定されている人が約2万6000人いる。また、慶応大病院の結城賢弥医師らが2011年、両目の矯正視力が(0.7)以上ある40~85歳の緑内障患者233人と晴眼者(視覚障害のない人)183人を対象に、過去5年間の交通事故の有無を調べた結果、「ある」と回答したのは晴眼者15%に対し、緑内障患者は23%だった。
さらに、視野障害が重い後期患者は29%に上り、運転距離などを同程度に補正した場合、後期患者は晴眼者の2.4倍の確率で事故を経験していたという。【岡奈津希】
多くの患者さんを診察していてかなり視野障害が強い方でも免許更新が可能であった方が多く少々不思議に思っておりました。
その理由がようやくわかった気がします。
通常の免許更新の場合は片眼の視力が(0.3)以上、両眼で(0.7)以上であれば視野検査はされません。
周辺部の視野がほとんど消失しているような状態であったとしても中心部分の視野が異常なければ視力検査ではひっかかりません。
緑内障でも自覚的な視力低下を起こすのはかなり症状が進行してからですので、視力検査でひっかかることはまずありません。
しかし運転があぶないことは理解するのに難しくないですよね。
片眼の視力が悪くなってしまい、視野検査が必要になれば下の写真のような視野検査計を使って検査するそうです。
検査は片眼のみ(視力の良い方)
・白い点を水平方向に動かし、消えた時点と見え始めた時点でボタンを押す。水平視野150度で合格
しかし、なかなか視野異常を起こしているにもかかわらずこの検査では異常をみぬけないことがしばしばです。
理由は検査の方法にありました。
・検査官の検査方法に対する理解が乏しい
・指標のスピードが一定でない
・固視を確認していない
・頭位を固定していない
もう少しわかりやすく書くと、視野検査はしっかりと正面を見た状態で検査しなければなりません。頭を動かしたり、眼球を動かしてしまうと周辺部視野の測定をしているのではなくあくまでも中心部分の視野で見てしまっています。このような問題点がありました。
そこで警察庁も動き出したようです。実際に導入するにはいくつもの大きなハードルがあり今後議論がなされると思います。
また、視野異常があっても車が生活に欠かせない場合もありますよね。難しい問題になりそうですね。
我々眼科医は緑内障や網膜色素変性症の患者さんに視野検査をした時の説明にももっと具体的に説明する必要があります。
そこで
視野欠損のパターンごとにどういった助言をするのがよいか?
高度な視野狭窄→運転は危険であり中止を勧告する
下方視野欠損例
(自覚症状がある)→運転は危険
(自覚症状がない)→左右からの飛び出しへの反応が遅れるかも *信号を見ていると下方が見えにくくなる
上方視野欠損例
(自覚症状がある)→標識・信号を見落とすかも、知らない道には行かない *道路を見ていると上方が見えない
(自覚症状がない)→気づかないうちに標識・信号を見落とすかも
以上です。本日は長文のブログになりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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