2006年、夏。うちにとつぜんこねこがやってきました。
いまは2008年、1月ですが、さかのぼってできるだけ、本当にあった時間に日記のように書いていきたいと思います。
はじまりは2006年7月。たまたま、たくさん猫がいる家を見つけました。その中で、とても目を引く、かわいい子がいたのです。でも、風邪を引いているみたいで、ずっとはなをくすくすと言わせていました。
なので、気になって近所の人に尋ねてみたら、「ひどい状態で、あれは飼っているとはいえない。」「かわいそうだけど死ぬと思う。」「においやフンで、とてもこまっている」など、気になる言葉ばかり。
なので、その家を気にするようになって、普段は通らない場所なのですが通るようにしていました。
7月27日。いつものように自転車で通りかかったら、その、多頭飼育の家で、猫がみゃーみゃーとしきりに鳴いているのです。
つづいて、がたん、がたんという立て付けの悪い窓を開ける音。どなるおばさんの声。 気になってへい越しにのぞいてみたら、おばさんの手には小さな小さな、生まれたてに近い子猫が。思わず、とまってみてしまいました。 そしたら、駐車場近くの青いバケツに張った水の中にその子猫をおばさんがつけたのです。
最初は、お風呂に入れるのか?と思って、
「かわいいですね、子猫ですか?」と話しかけたけれど聞こえなかったか完全無視。ああ...どうしよう、と、そのままあまりの猫の小ささに目が吸い寄せられてとまっていたら、なんとおばさんがぐいぐいと水の底に、子猫を押し付けるようにしているのです!!!!!
「殺そうとしてるんだ!」
頭が真っ白になってしまい、気がついたら怒鳴ってました。
「何をしてるんですか!?」「ちょっと、やめてください!」わーわーとどなっていたら、ゆっくりとおばさんが顔を上げました。こわばった怖い顔です。「そんなことをするくらいなら、その子を私に下さい!」
まだ、だまってこっちをみています。猫は、水に沈んでいる.... もう、あせってあせって、玄関に回って入ろうとしたのですが壊れたたんすが通路にあって人間は通れない。また駐車場まで戻って、どなりました。
「その、猫、私に下さい!」そしたらやっと、「ええー。」というめんどくさそうな返事が。「猫がほしいのー?」「その、沈んでる子を下さい!今、下さい!」「猫ならたくさんいるよ。」「いや、ちがうんです、そのバケツの子がほしいんです、そんなことをするくらいならその子を下さい。」
そしたら、庭にいた大人の猫をつかんで、「ほら、猫がほしいならこれをつれてってよ。」というんです。沈んだ子猫に目が...すこし、気のせいなのか、波立った水面のせいか、動いているみたい...
「まだ、生きてるじゃないですか!私はその猫がほしいんです!」必死でした。でもおばさんはのろのろと、また別の猫を連れてきては「これは?」などといいながら、「この、水に沈んだのはもうだめだよ、生きてても頭がばかになってるよ。それよりじゃあこれは?」とぜんぜん話になりません。
この間数分でしょうか。
もうかーっとしてしまって、「失礼します!入りますよ!」と気がついたら駐車場の金網の破れをぐいぐいとおしやって中に入っていました。あわてて水の中から子猫を救い上げて、洋服でごしごしこすりながら、人工呼吸をしばらくしては、心臓あたりをマッサージ。
ああ、生きて。死なないで。こんなに小さいのに。
がんばって。がんばって。
半泣きになりながら人工呼吸とマッサージを続けていたら、子猫が動き出しました!おばさんは、まだ「頭がどうせばかになってるよ、変になってるよ」などといい続けています。「私は猫がほしいんじゃないんです!この子がほしいんです。」
奪うようにして、洋服のポケットに入れて暖めながら、「ほかの子猫はいないんですか?」とたずねたら、もう一匹いるとの事。その子猫も渡してください。といったら、「いまは親が隠しちゃったんだよー。」当たり前だ!ばかやろう!なにのうのうといってるんだ、猫だって殺したら犯罪なんだぞ!
さっき、鳴き叫んでいたのは母猫だったのです。
ものすごく腹が立ちましたが、それよりももう1匹の子猫のことと、ポケットの中の子猫のことが気にかかって、とにかくいまはぐっとおさえて、けんかしないように、怒らせないように。とがまんして、
「もう1匹が見つかったら、すぐに、ほんとにすぐに連絡を下さい。その日に取りに来ます。」と住所と電話、名前を教えて約束をして、その足ですぐにペットグッズの店に行き、猫ミルク、哺乳瓶、鳥のスポイトなどを購入して家に帰りました。
ポケットでちいさくふるえる子猫。店の中はペット禁止ですが、ちいさくて、鳴かなくて、見つかりませんでした。 その間に、家族である「にいちゃん」に電話して、事情を説明して、そういうことだから、とにかく、猫、いるから。と伝えました。
今日はここまで。このことを思い出すと、いつも激しい感情が戻ってきてとても疲れてしまいます。 今日の写真は、この、多頭飼育の家を気にするきっかけになった猫の写真です。後に、助けた猫のおにいちゃんであることが判明しました。近所の人のいうように、結局、この子は育たず、いなくなってしまいました。 2006年の夏の終わりに見たのが最後です。人なれしていたので、どこかで幸せに暮らしていればと思いますが、確率としては多分、もう... この世にいないと思います。