タワシでごしごし土を落とす。気恥ずかしいほど明るい日向の匂い。
玄関の新聞受けにコトンと音がした。午前3時25分たまたま起きた。私にはまだ深夜だ。外は闇だ。
朝刊は冷たかった。ありがとう。
たくさんのものを失くしてもまだ朝刊が来る。世界がそっぽを向いてもきっと来る。
朝刊を読むために生きよう。
遠島を申し付けられて、ゆっくりゆっくり高瀬舟で夜更に下る。古代のエジプトにも、またアマゾンにも中国にも、このような心持ちの人がいたのではあるまいか。
胸がしんとなる。歴史短編小説集。
真っ直ぐに利己心なく生きるひとたち。