3冊目になる『クラニオセイクラル・バイオダイナミクスVol.1』を9/20に出版した。この本はFranklyn Sillsの原著CRANIOSACRAL BIODYNAMICSのVol.1の日本語版で、2006年に森川ひろみさんの訳で出版された『クラニオセイクラル・バイオダイナミクス』の前の巻に当たる。本来はVol.1、Vol.2の順で、しかも同じ人が翻訳すべきこのシリーズが、このような変則的な形で刊行されるに至った経緯を私が知る限り述べると…
私がFranklyn Sillsの原著CRANIOSACRAL BIODYNAMICSのVol.1, 2(面倒なので、以下CB1, CB2と書く)の翻訳を始めたのは2004年11月下旬のこと。と言っても当初から翻訳しようなどと思っていたわけではない。適当につまみ読みすればわかると思っていたのが、そうはいかず、と言って抄訳のようなものを作ろうとしても、どこが要点なのかわからず、結局、全部訳すしかなくなった…と、そんなところだ。
翻訳なんかやったことはなく、そんなトレーニングも受けたことはない。それでも、それでもやっていると何とかなるもので、9カ月ほどかかってCB1, 2の1回目の全訳ができた。が、この時点では用語の訳語も統一できておらず、訳せなかった部分もポツポツあったので、この1回目の訳を下訳にして、改めて全体を訳し直す作業を始めた。本当にそれを終えることができたら出版社に持ち込むつもりだった。ところが、CB1の2回目の訳があと15日で終わる、という時、エンタプライズの近刊予告に日本語版『クラニオセイクラル・バイオダイナミック』が出ていたのだ。

これは衝撃的だった。確かに、自分の知らないところで誰かが訳しているのではないか、ということは考えないではなかったが、まさか本当にCBを、しかも出版を目的に、翻訳している人がいようとは…。その近刊案内を見た直後はショックで、キーボードを打つ手が震えた。しかし、その予告を改めてよく見てみると、奇妙なことに気づいた。日本語版がでるのはCB2の方だけだ。なぜCB1からじゃないのか? CB1はまだ出す予定がないのか? そこでエンタプライズのHPにアクセスして、そこから社に「CB2の日本語版が出るようだが、なぜCB1じゃないのか。もしCB1を出す予定があるなら、私はCB1の全訳を作っているので、見てもらえないか」とメールを送った。
メールの返事はすぐに来た。「CB1は原著者が現在、改訂中のため、改訂版が出た後に日本語版を出す予定」と。何てこった。CB2はもう訳書が出るし、CB1は改訂されるということは、自分が今やっている翻訳はもう意味がない、ということだ
。さすがに落ち込んだが、これまでやってきたことに対する一応のけじめとして、CB1の2度目の訳は予定通り終わらせ、そこでこの作業を終わらせることを決めた。が、私のメールはエンタプライズから、当時CB2の翻訳中だった森川ひろみさんにも転送されたようで、その後、森川さんから何度かメールと電話をもらった。森川さんにはCB2の翻訳が終わった後、私のCB1の2度目の訳とCB2の1度目の訳を送って見てもらったところ、「いつかVol.1を翻訳する時が来たら、お手伝いをお願いするかもしれません」という返事をもらった。
その後は「CBショック」から、しばらく翻訳はやめていたが、少したって、かねてからCBに続いて読むつもりだったMichael KernのWisdom in the Bodyの翻訳を行い、それがエンタプライズから『ウィズダム・イン・ザ・ボディ』として刊行された(という話は、以前ブログで書いた)のだが、その『ウィズダム』が出てしばらくして、エンタプライズの担当のM氏から「お会いしたい」という連絡があった。
M氏は
「『バイオダイナミクス』を出してから編集部には、第1巻はいつ出るのか、という問い合わせが頻繁に来ているのだが、シルズの改訂作業がどの程度進んでいるか全くわからない」
と言った。シルズには森川さんから進捗状況を問い合わせてもらっているのだが、どうもそれに対する返事がないらしい、と。そして
「森川さんともそのことでは話をしていて、森川さんからは『改訂は必ず行われるから、もう少し待ってほしい』と言われているんですが…」
私が以前、森川さんからもらったメールでは、シルズが今回の改訂で予定しているのは
現在はCB2にあるignition(点火)をCB1に持っていく。
同じ説明をクドクド繰り返しているのを、もっとスッキリさせる。
といったことだという。だが、そうだとすると、
ignitionの件はCB1, 2の構成そのものまで変えることになり、改訂はCB1だけには止まらないのではないか。
「同じ説明の繰り返し」は本全体に及んでいるので、文章の一部手直しでは収まらず、ほとんど全面書き換えになると考えられる。
ということをM氏に伝えた。
M氏からは
「場合によっては、先生の訳で第1巻を出すことも考えている」
と言われた。
「私の訳は森川さんのとは性格がかなり違うので、そうなると全体としての訳の一貫性がなくなってしまうのでは?」
と尋ねると、M氏も
「それについては、何か考えないといけないかもしれないですね。ただ、その前に森川さんを説得しないと」
つまりは、まだ内々の話ということ。そこで、取りあえず私の訳したCB1の原稿をM氏に渡して、一度見てもらうことになった。
実はちょうどその時、(以前ブログで書いたように)私はCharles RidleyのSTILLNESSを翻訳中で、それについてもM氏に打診したのだが、あまりいい返事はもらえなかった。そこで、いわば保険をかけるような格好で、STILLNESSの翻訳とCB1の訳の手直しを同時進行で進めることにした。ところがその後、mixiのクラニオのコミュニティでSTILLNESSが話題になり、「日本語版出版を望む会」なるトピックまで立ってしまったため、同時並行で進めていたCB1の手直しを一時中断してSTILLNESSの翻訳をまず終わらせることに方針を転換。そして、STILLNESSの2度目の訳が終わったところでM氏に連絡し、また会うことになった。
そこでの話し合いで、M氏はSTILLNESSの版権取得を交渉する、と言ってくれた
。そして
「(STILLNESSとCBは、ともにNorth Atlantic Booksが版元になっていることから)STILLNESSの版権取得と合わせて、CB1が改訂されるのかどうかを先方に問い合わせてみましょう」
と。
その結果がエンタプライズから伝えられる前、突然、森川さんから電話があった。用件は私を通じて『ウィズダム』を注文したいということだったが、それと合わせて
「今、何か出そうとしてる本はあるんですか?」
と聞かれた。
「今、STILLNESSという本を訳していて、その版権が取れるか、エンタプライズに聞いてもらっているところです」
と答えると、森川さんはフーンと言った後、
「フランクリンの本のことなら、私はどっちでもいいですよ。あの本はもう古いです」
それに対して私は
「そのことについては、まだ何も決まっていません」
とだけ答えた。
M氏から、版元も改訂版については承知していない、として、正式に私の訳でCB1を出すとの連絡があったのは、その何日か後のことである。
私がFranklyn Sillsの原著CRANIOSACRAL BIODYNAMICSのVol.1, 2(面倒なので、以下CB1, CB2と書く)の翻訳を始めたのは2004年11月下旬のこと。と言っても当初から翻訳しようなどと思っていたわけではない。適当につまみ読みすればわかると思っていたのが、そうはいかず、と言って抄訳のようなものを作ろうとしても、どこが要点なのかわからず、結局、全部訳すしかなくなった…と、そんなところだ。
翻訳なんかやったことはなく、そんなトレーニングも受けたことはない。それでも、それでもやっていると何とかなるもので、9カ月ほどかかってCB1, 2の1回目の全訳ができた。が、この時点では用語の訳語も統一できておらず、訳せなかった部分もポツポツあったので、この1回目の訳を下訳にして、改めて全体を訳し直す作業を始めた。本当にそれを終えることができたら出版社に持ち込むつもりだった。ところが、CB1の2回目の訳があと15日で終わる、という時、エンタプライズの近刊予告に日本語版『クラニオセイクラル・バイオダイナミック』が出ていたのだ。

これは衝撃的だった。確かに、自分の知らないところで誰かが訳しているのではないか、ということは考えないではなかったが、まさか本当にCBを、しかも出版を目的に、翻訳している人がいようとは…。その近刊案内を見た直後はショックで、キーボードを打つ手が震えた。しかし、その予告を改めてよく見てみると、奇妙なことに気づいた。日本語版がでるのはCB2の方だけだ。なぜCB1からじゃないのか? CB1はまだ出す予定がないのか? そこでエンタプライズのHPにアクセスして、そこから社に「CB2の日本語版が出るようだが、なぜCB1じゃないのか。もしCB1を出す予定があるなら、私はCB1の全訳を作っているので、見てもらえないか」とメールを送った。
メールの返事はすぐに来た。「CB1は原著者が現在、改訂中のため、改訂版が出た後に日本語版を出す予定」と。何てこった。CB2はもう訳書が出るし、CB1は改訂されるということは、自分が今やっている翻訳はもう意味がない、ということだ

その後は「CBショック」から、しばらく翻訳はやめていたが、少したって、かねてからCBに続いて読むつもりだったMichael KernのWisdom in the Bodyの翻訳を行い、それがエンタプライズから『ウィズダム・イン・ザ・ボディ』として刊行された(という話は、以前ブログで書いた)のだが、その『ウィズダム』が出てしばらくして、エンタプライズの担当のM氏から「お会いしたい」という連絡があった。
M氏は
「『バイオダイナミクス』を出してから編集部には、第1巻はいつ出るのか、という問い合わせが頻繁に来ているのだが、シルズの改訂作業がどの程度進んでいるか全くわからない」
と言った。シルズには森川さんから進捗状況を問い合わせてもらっているのだが、どうもそれに対する返事がないらしい、と。そして
「森川さんともそのことでは話をしていて、森川さんからは『改訂は必ず行われるから、もう少し待ってほしい』と言われているんですが…」
私が以前、森川さんからもらったメールでは、シルズが今回の改訂で予定しているのは


といったことだという。だが、そうだとすると、


ということをM氏に伝えた。
M氏からは
「場合によっては、先生の訳で第1巻を出すことも考えている」
と言われた。
「私の訳は森川さんのとは性格がかなり違うので、そうなると全体としての訳の一貫性がなくなってしまうのでは?」
と尋ねると、M氏も
「それについては、何か考えないといけないかもしれないですね。ただ、その前に森川さんを説得しないと」
つまりは、まだ内々の話ということ。そこで、取りあえず私の訳したCB1の原稿をM氏に渡して、一度見てもらうことになった。
実はちょうどその時、(以前ブログで書いたように)私はCharles RidleyのSTILLNESSを翻訳中で、それについてもM氏に打診したのだが、あまりいい返事はもらえなかった。そこで、いわば保険をかけるような格好で、STILLNESSの翻訳とCB1の訳の手直しを同時進行で進めることにした。ところがその後、mixiのクラニオのコミュニティでSTILLNESSが話題になり、「日本語版出版を望む会」なるトピックまで立ってしまったため、同時並行で進めていたCB1の手直しを一時中断してSTILLNESSの翻訳をまず終わらせることに方針を転換。そして、STILLNESSの2度目の訳が終わったところでM氏に連絡し、また会うことになった。
そこでの話し合いで、M氏はSTILLNESSの版権取得を交渉する、と言ってくれた

「(STILLNESSとCBは、ともにNorth Atlantic Booksが版元になっていることから)STILLNESSの版権取得と合わせて、CB1が改訂されるのかどうかを先方に問い合わせてみましょう」
と。
その結果がエンタプライズから伝えられる前、突然、森川さんから電話があった。用件は私を通じて『ウィズダム』を注文したいということだったが、それと合わせて
「今、何か出そうとしてる本はあるんですか?」
と聞かれた。
「今、STILLNESSという本を訳していて、その版権が取れるか、エンタプライズに聞いてもらっているところです」
と答えると、森川さんはフーンと言った後、
「フランクリンの本のことなら、私はどっちでもいいですよ。あの本はもう古いです」
それに対して私は
「そのことについては、まだ何も決まっていません」
とだけ答えた。
M氏から、版元も改訂版については承知していない、として、正式に私の訳でCB1を出すとの連絡があったのは、その何日か後のことである。
>CB1のことを森川さんがアノ本は古いです。と言われたのに…
いえ、恐らく森川さんはCB1が改訂されて新しく出ることを確信しているのでしょう。それが、あのような言い方になったのではないかと。それだけ、シルズを信じているのだと、私は思っています。
ちなみに、エンタプライズのM氏に「もしCBが改訂されたら、どうされるんですか?」と聞いたことがありますが、氏の答は「その時はまた、新たに日本語版を出し直します」でした。
いえ、今現在、私自身はCBが改訂されるかどうかは、実のところ「どうでもいいこと」です。
仮に改訂されるにしても、所詮はイギリス人がやることですから何年先になるかもわかりませんし、改訂版が出たとしても、その翻訳で私にお声がかかるかどうかもわかりませんし、仮にお声がかかったとしても、それをお受けするかどうかもわかりません
>そうすると、なぜ2巻から先に出たのかもわかるのではないでしょうか。
おっしゃりたいことが、よくわかりません。
原書はVol.1→Vol.2の順序で出ています。日本語版では第2巻が先に出てしまった経緯は、本文で述べた通りです(もちろん、私の知らない裏話もあるのかもしれませんが