肝臓がんの治療をしていたカーター元大統領に、あらたに脳に4つの悪性黒色腫が見つかりました。治療は放射線治療で数か月続く見通しです。ここでは悪性黒色腫の特徴、そして、代表的な放射線治療について確認しておきましょう。
◆悪性黒色腫とは?
皮膚に発生する皮膚がんの一つですが、最も悪性度が高い皮膚がんです。皮膚には、メラニン色素を産生する皮膚の細胞メラノサイト、あるいは母斑細胞が悪性化した腫瘍で、単に黒色腫、またはメラノーマと呼ばれることもあります。悪性黒色腫は、脳転移を起こすことが少なくありません。
原因は、不明ですが、白人の発生率が有色人種よりも数倍高く、紫外線の強い地域に居る白人の発生率がさらに高いという報告もあります。白人では、数か所の皮膚に多発する家系が報告されており、遺伝的に悪性黒色腫が発生しやすい家系があると考えられていますが、日本では、そのような家系は明らかではありません。
脳に転移した場合、場所や数、大きさによって治療方法は変わってきますが、ガンマナイフやサイバーナイフなど定位放射線照射や手術による局所治療が有効な場合があります。
◆脳を対象とする放射線治療「ガンマナイフ」
脳を対象とする特殊な放射線の一種であるガンマ線を1点に集中させて、ピンポイントで組織を攻撃する治療法です。脳の深い部分や重要な機能を担う部分に病気がある場合、大切な機能を温存して病変部だけを選択的に治療することができる画期的な治療の機械です。短期間の入院で、局所麻酔下に治療が可能であることから、小児から高齢まで、全身麻酔下での手術に危険が伴うような状態の場合でも、大きな痛みや苦痛を伴うことなく治療が可能です。
日本では1996年より健康保険適応になっています。副作用としては、照射した部分の周辺組織が浮腫や壊死をおこすことがありますが、内服や点滴で治療可能です。通常の放射線治療に伴う脱毛はありません。
◆頭蓋内・体幹部腫瘍に有効な放射線治療「サイバーナイフ」
X線透視システムによる精密な位置補正を行うために、苦痛を伴う固定具を必要としません。フレーム固定を必要としないため、分割照射を行うことも可能です。放射線を数回に分割して照射することにより、正常臓器の副作用を軽減するため、ガンマナイフでは治療しにくいとされている大きめの腫瘍に対しても治療を行うことができます。
また頭蓋内だけでなく体幹部腫瘍にも治療適応があります。ガンマナイフに比べて若干費用は高めですが、高額医療適応になり、負担額は同じです。副作用としては、照射した部位のやけど、頭部ならば脱毛、吐き気、味覚異常、嗅覚異常、頭痛、体力の減退、食欲不振などがあります。
◆がんの形に合わせて照射する放射線治療「IMRT」(強度変調放射線治療)
最近のテクノロジーを用いて照射野内の放射線の強度を変化(変調)させて照射を行う方法のことを指します。がんの形に凹凸があってもその形に合わせた線量分布を作ることが出来ます。一方、正確な治療を行う為には、照射を行う際のがんの位置のずれや放射線の線量の誤差に対する精度管理が通常の照射法より厳しく要求されます。前立腺がん、頭頸部がん、脳腫瘍などに有用です。
がんが脳に転移すると頭痛、吐き気、痙攣、麻痺を起したり、出血して命に関わることがあります。他の臓器に転移があったとしても、優先的に治療を検討すべきです。放射線治療のためにどのような機器を導入しているか、どの分野を得意としているか、については医療機関によって異なります※。自分に合った治療が受けられるように、あらかじめ調べておくとよいでしょう。
※全国のガンマナイフ・サイバーナイフの設置機関
http://chiryo-hikaku.jp/hospital/
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150823-00010003-mocosuku-hlth
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