「トランプ政権ふたたび」(天声人語)
2025年1月20日第二期トランプ政権が発足した。
そこで朝日新聞の天声人語から2つ。
「(天声人語)トランプ政権ふたたび」(2025年1月21日)
「中国の古典『荀子(じゅんし)』に、こんな話が載っている。楚(そ)という国があり、王はほっそりとした女性を好んだ。王の寵愛(ちょうあい)を受けようと宮女たちは食事をとらず、ついに飢え死にする者が現れた▼「楚王細腰(さいよう)を好み、朝(ちょう)に餓人(がじん)あり」という故事成語の由来である。上に立つ者に気に入られようと、多くが争ってこびへつらう――。トランプ政権をとりまく米国の雰囲気で、8年前との大きな違いは、ここにあるように思う▼1期目は、政治経験の豊かな高官が大統領の暴走に待ったをかけたこともあった。2期目は望み薄だろう。閣僚にはトランプ氏への「忠誠」を誓う者が集められた。政権内だけではない。IT大手のメタやアマゾンは、きょうの就任式のために各100万ドルを寄付した。それを風刺した一コマ漫画は、ワシントン・ポスト紙から掲載を拒まれた▼この先、かの国の、いや世界の良識やルールはどうなってしまうのだろう。例の連邦議会襲撃事件の後、米軍の制服組トップだったマーク・ミリー氏は、部下に「きみたちが目撃したものは、将来のもっとひどいなにかの前触れかもしれない」と語ったそうだ▼米国民の巨大な不満がトランプ氏を再び大統領に押し上げた。そのことは真摯(しんし)に受け止めつつ、どうかミリー氏の不吉な予言が当たらぬようにと祈るばかりだ▼国を治める者はどうあるべきか。『荀子』は説く。まず礼を体得すべし、礼が守れぬ者は法も守れない。何やら2千年後を見通していたかのような言葉である。」
「(天声人語)カーター氏の嘆き」(2025年1月9日)
「よほど、腹に据えかねていたのか。米国の連邦議会議事堂が襲撃された事件の1年後、2022年1月、ニューヨーク・タイムズに一本の寄稿が載った。「米国の民主主義が危ない」と見出しにはある。筆者は元大統領のジミー・カーター氏だった▼「私たちの国はいま、深淵(しんえん)の瀬戸際にいます」。第39代の大統領は強い危機感をあらわにした。「早急に行動を起こさなければ、私たちは内戦の危険にさらされ、民主主義を失ってしまう」▼彼が嘆いたのは、米社会の深刻な分断だった。偽情報が野放図に広がり、暴力が選挙結果を覆そうとしたという事実だった。さらには、それらを大統領の立場にある人物があおるとは、いかんとも許せなかったのだろう▼昨年末、カーター氏は亡くなった。100歳だった。米メディアの訃報(ふほう)には「凡庸な大統領であり、偉大な元大統領」といった表現もあった。失礼な言い方だが、多くの米国人が似たような印象を抱いていたようだ▼評価が高いのは、2期目への選挙で敗北し、失意のなかで始めた人権や感染症対策の活動である。「私はウソをつかない」。そう胸を張り、理想を語り、和平を説く。米国の古きリベラルを体現する存在だった▼「手遅れになる前に、違いを脇において協力すべきだ」。直球の訴えは、かの国の民たちの胸には遠く届かぬものだったか。第47代大統領の就任を目前にした首都ワシントンはいま、白い雪に覆われる。国葬が開かれるのは、現地時間のきょうである。」
トランプ氏の勝因については「「またトラ」で思うこと」でも述べたが、ここで再度指摘しておきたいのは、ル・ボンの著書に書かれている「群集心理」の理論と同様の方法で巧みに人々を扇動したということ。このことについては別途「群集心理」(ChatGPTより)のところで記載しておいた。
そしていま気になるのは、早速大手IT企業のトップが相次いで寄付やトランプ詣でをしており、大手企業の中には「DEI」のプログラムを廃止するところも出てきているということ。要は「長いものには巻かれろ」ということだろう。
またトランプ氏自身も側近たちを自分に忠誠を誓うイエスマンで固めているということ。(ある解説者は、トランプの人選基準は知識や能力ではなく、忠誠心と曝露本を書かないと誓った者だけと、一刀両断であった)
(*DEI:Diversity(多様性)、 Equity(公平性)、Inclusion(包摂性)の頭文字をとったもので、多様な人が働く組織の中で、それぞれの人に合った対応をすることで、それぞれがいきいきと働き、成果を出し続けるための考え方)
今後どうなるかはただ見守るしかないが、それでも見方を変えると、案外良い方向に行くかもしれないという期待する部分がなくもない。
というのも彼は戦争嫌いのようで、また権威主義国家である中露を非難しているから。
*例えばグリーンランドやパナマ運河を買い取るという話だが、何をバカなことを言っているのだと思い世界もそう見ているが、現実にそうするかどうかは別として、中露を牽制するという意味では重要なことかもしれない。
(グリーンランドだが、かつて中国は3つの空港を新設または整備することを目論んでいたが、これは米国防総省に阻止されたとのこと。しかしレアアースを採掘するための中国の積極的な投資は続いているようである。またパナマ運河だが、現在香港資本がカリブ海側玄関と太平洋側玄関に位置する港の独占的管理権を保有しているとのこと。)
(参考)
Newsweek日本語版
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2025/01/532598_1.php
ともかく彼の政策、言動については、当方としては否定的なものが大部分で世界秩序の破壊者としか見えないが、非常識な(トランプ及びその支持者たちにとっては、自分たちの方が常識的ということらしいが)人間のすることは分からないので、意外なことがあるかも知れない。
いずれにしても今考えられるのは、彼のようなやり方ではまず間違いなく悪い方に向かっていくだろうということ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます