ニュースで欧州の新型コロナウィルス罹患者がアジアの感染者を超えたとの報道された。"欧州の感染者数と死者数はそれぞれ10万470人、4752人で、いずれもアジアの感染者数(9万4253人)と死者数(3417人)を超えた"と記事にはある。アジアの大多数がその発生源とされる中国で罹患者数が9万人死者が3245人だ。
欧州の面積が1000万K㎡人口7.4億に対して中国は960万K㎡・14億だ。面積がほぼ同じで人口が倍近い中国に比べ欧州はその罹患率が高いことが受け取れる。中国はその国家体制から主権制限を早くから敢行し感染拡大を防止した。それを自由主義国ですぐさま行うのはハードルが高い。それゆえの感染者数の増加が原因かもしれない。また中国は報道も規制されるので真実とは違う数値が発表されている可能性もある。
だが両者の罹患率は欧州は8000人に1人程度に対して中国は15000人に1人というところだ。致死率も欧州が4.7%に対して中国が3.6%と差はあるが桁が違うというほどではない。中国が多少甘めに報告しているとしても大体10000万人に1人くらいの感染者が表れ致死率は4%程度というのが現在見えてくる数字だ。
ではほかの地域ではどうであろうか。読売新聞の記事中の表を引用したい。以下罹患者の多い国(300人以上)の感染者数と死者数およびその国の人口と面積(K㎡)を表記する。
日本 961 33 12680万 37.8
韓国 8565 94 5147万 10.0
マレーシア 900 2 3162万 33.0
豪州 692 6 2460万 774.1
シンガポール 345 0 430万 0.07
イラン 18407 1284 8116万 164.8
イスラエル 529 0 871万 2.2
カタール 452 0 264万 1.1
イタリア 35713 2978 6048万 30.1
スペイン 17147 767 4666万 50.6
ドイツ 10999 20 8279万 35.7
フランス 9133 244 6699万 55.2
スイス 3438 33 857万 4.1
英国 2626 103 6644万 24.3
オランダ 2460 59 1718万 4.2
オーストリア 1843 5 882万 8.4
ベルギー 1795 21 1140万 3.1
米国 10201 149 32720万 962.9
カナダ 629 9 3759万 997.1
香港 208 4 739万 1.1
次にこれらの国の致死率および人口1億人当たりの罹患率とK㎡当たりの罹患密度 当該国の人口密度(人/K㎡)を示す。
日本 3.4% 758人 25.4人 335人/K㎡
韓国 1.1% 16640人 856.5人 515人/K㎡
マレーシア 0.2% 2846人 27.3人 96人/K㎡
豪州 0.8% 2813人 0.9人 3人/K㎡
シンガポール 0% 8023人 4928.5人 6143人/K㎡
イラン 7.0% 22680人 111.7人 49人/K㎡
イスラエル 0% 6073人 240.5人 396人/K㎡
カタール 0% 17121人 410.9人 240人/K㎡
イタリア 8.3% 59049人 1186.5人 201人/K㎡
スペイン 4.5% 36749人 338.9人 93人/K㎡
ドイツ 0.02% 13285人 308.1人 232人/K㎡
フランス 2.6% 13633人 165.5人 121人/K㎡
スイス 1.0% 40117人 838.5人 209人/K㎡
英国 3.9% 3952人 108.1人 273人/K㎡
オランダ 2.4% 14319人 585.7人 409人/K㎡
オーストリア 0.3% 20896人 219.4人 105人/K㎡
ベルギー 1.2% 15746人 579.0人 367人/K㎡
米国 1.5% 3118人 10.6人 34人/K㎡
カナダ 1.4% 1757人 0.6人 4人/K㎡
香港 1.9% 2815人 189.1人 672人/K㎡
さらに本年2月の平均気温(気象庁発表の首都あるいはそれに近い地点の気温)高齢化人口(人口における65歳以上の人口)及びその人口比率を調べられる範囲でのみだが列挙した。
日本 8.3℃ 3558万 28.5%
韓国 2.5℃ 807万 15.8%
マレーシア 28.7℃ 227万 7.0%
豪州 21.4℃ 552万 16.3%
シンガポール 91万 15.1%
イラン
イスラエル
カタール
イタリア 1434万 20.0%
スペイン 10.9℃
ドイツ 6.2℃ 1828万 22.7%
フランス 9.6℃ 1370万 20.8%
スイス
英国 1230万 18.4%
オランダ
オーストリア 6.6℃
ベルギー
米国 4.4℃ 5573万 16.7%
カナダ 687万 18.3%
香港 18.0℃ 137万 18.2%
これを見れば人口密度の高いところ、気温の低いところ、老齢化人口数あるいは老齢化率高いところが感染率が高いところだと推察できる。そして日本がその多くに該当するのに異常に低い感染率であることが見て取れる。これはこの記事タイトルの通り検査をしないからだ。おそらく日本の人口密度・老齢化人口・老齢化率・気温を考えれば1億の人口当たり1万人程度の感染者がいても不思議がない。
私は大学院時代に実験手技としてPCRを用いていた。だからどのような操作や行程があるかはかなり前のことではあるが想像はできる。おそらく検体からDNAを抽出する行程、サーマルサイクラーにかける時間、電気泳動で結果を判定する時間が半日程度かかるはずだ。分子生物学系の実験をしている大学の医歯薬農理工の研究施設および企業の研究所なら操作自体は可能だと思われる。
だが今より1万人以上の陽性をこの1か月程度で検出するためには相当のそういった研究機関の人力の動員が必要であろう。現在文科省が新設私立大学をつくるため国立大学を中心に研究費を相当絞っておりそういった研究者自身や施設が不十分なところも増えている。だから不要不急の検査をすれば検査体制の維持が困難になる。
さらに陽性者が1万人出れば治療施設をどうするかという話になる。当然医療体制の揃った病院を感染者専門に振り替える必要がある。そうすれば基幹病院の少なくない程度が通常機能を果たさなくなる。それは医療の維持は困難になりうる。
だからこの記事の前の記事に書いた通り私はもっと検査をしろとは思わない。それはトイレットペーパーやマスクに対する日本人の行動を見れば想像できる。心配な人が病院に殺到し検査が十分できなくなる危険性が高い。ならば症状の出た人に対して早期に検査し対処療法をすることの方が致死率を下げるためには効果的だと思う。
大事なことはすでに市中に感染が蔓延していることを前提に各自が行動することだと思う。必要があれば外出はしなければならないし人と至近距離で接することも避けられないだろう。そういう危険性を認識したうえで自分自身の体の状況、自分の生活圏にいる人の体調への影響、そしてその外出あるいは人との接触の重要度を勘案して自己決定しなければならない。
おそらく市中感染は現実のことだ。感染確認は症状が出た人およびその濃厚接触者を検査して得られた数だ。ということはその何倍も不顕性の陽性感染者がいると思われる。横浜のカジノクルーズ船が閉鎖空間で2割の感染を引き起こしたと考えればおそらく人口の1割程度の感染は考えるべきだと思う。それは人が集まるところには必ずウィルス感染者がいると考えるべき数ではなかろうか。
大阪府の吉村知事が兵庫県や愛知県での深刻な感染増加に対して兵庫県への不要不急の往来への自粛要請がマスコミを通じてあった。厚生省からの伝達事項だと一部報道されている。これは感染地域差別のような嫌悪感情を両県に引き起こしうる。それは国が感染実態をきちんと国民に知らせていないからだ。
すでに日本でも蔓延していると推察される。だが世界各国を見れば1万人に1人程度が感染しそのうち重篤化するのは多く見積もって5%程度だ。気をつけなければならないのは基礎疾患があったり体力の落ちている人なのでそういった人との接触がある人はそれを前提に行動の必要性を各自に考えてもらうことだ。
先日ファミレスに行くと土曜の夜にもかかわらず空席があった。そして客のほぼすべてが若者であった。私の周囲でも子供は家におらず出歩いているようだ。子供たちにこの話をしても理解できないだろう。だからそこは保護者が自分の周囲に感染で危険を想定される人がいるならきちんと注意しなければいけないと思う。
一方で消費増税以降落ち込んでいる景気がこの騒動による世界的な経済停滞でさらに深刻なダメージを受けている。これはこの前の記事に書いた通り日本の金融緩和というブレーキの利かないエンジンが深刻なダメージを与える危険性がある。
米もEUもこの危機に対して金融緩和を対策として打ち出している。アメリカは3.4兆ドルのマネタリーベースを現在有している。日本のマネタリーベースはドル換算で4.6兆ドルだ。GDPは日本が4.8兆ドルに対してアメリカは20兆ドルだ。
アメリカは金融緩和が効果をもたらす可能性はあるが日本はすでに身の丈以上の金融緩和をしている。今回また日銀が金融緩和のために社債や国際などを買い、株式市場にも買い支えを政府がしている。これはあくまでも政府の株価を支えたいという一念でしかない。
国民生活と株価が連動しないのは株価上昇が物価上昇以上の賃金を生み出さず内部留保や村上世彰が出せ出せという配当に取られたりしているからだ。もはや株価が景気の先行指数というのは幻だ。
各自が周囲の事情を理解したうえで必要な行動は行い不要な行動は控える、この判断ができなければ抑制行動は景気を傾け続けるし、考えない行動は感染者及び犠牲者をまき散らす。真の日本人の判断能力が試される。
テレビは不安をあおることばかりしか言わない。それに乗せられトイレットペーパーの買い占めなどが起こってしまう。もう少し冷静な判断力があれば避けられる騒動だができない。おそらく現状は市中感染だと覚悟したうえで必要な行動を考えなければならない。その判断はテレビがしてくれるのではない。
各自が自分の行動範囲及び必要性と自分及び周囲の健康状況で判断すべきだ。そのためにはいろいろな情報を自分で集め自分で判断する能力を身につけなければこの危機状態から脱出することはできない。それができない国民が大多数を占める国からどんどん危機に陥るだろう。
私は感染者1万人超と今回予想したがもし正解であってもこの数値を政府が発表することはできないと思う。それはその数値を聞いて一層パニックになる国民が多くいると考えているからだ。そして抑制行動に走ると景気が悪化する。そしてその結果円安が進めばこの国の未来に深刻なダメージを与える。すでに国債の金利が少し上がっていると報道されている。
非常に難しい判断だが自粛し過ぎず、だがきちんと安全を確保することを前提に行動することを心掛けるべきだと思う。東京オリンピックが話題になっているがはっきり言ってそんなものはどうでもいい。すでに利権にありつくものは当初予算の4倍にも膨れた費用ですでにお腹いっぱいなのだ。開催されようがされまいがそのつけは確実に来る。それを選んだのは日本国民だ。自分で考え調べ判断する能力、それを失った結果は嫌でも訪れる。今回の騒動はその試金石の一つだろう。