座敷わらしが出るという噂のある「とびない旅館」。
その存在を知ったのは、全国各地の珍スポットを旅行し、全国制覇を目指す息子からだった。
その「とびない旅館」の全貌については、彼のブログ「青森ミステリー見聞録」に詳しい。
一言では語りきれない盛り沢山のとびない旅館だが、「いもすり餅」も話題の一つだ。
息子から話を聞くと、朝からとびないさんと一緒に台所に立って「いもすり餅」を作ったと言う。
宿泊客も交えての朝食作り。ちょっと驚いたけど、息子が一緒に作ったと思うと何だかほほえましかった。
いもすり餅は、すごく美味しかったと言う。
作り方を聞いてみると、以前料理本で読んだことのある“ふきんこもち”と似ていると思った。1度作ってみたいと思っていた料理だ。息子も食べたいという。
とびないさんの「いもすり餅レシピ」がネット上にあると言うので、早速調べて取りかかることにした。
出汁は煮干しであらねばならないという。
我が家はカツオ系の出汁をいつも使っているので、先ずは煮干しを買いに近所のスーパーへ行った。
煮干しを探したが、あの子供の頃からよく見ていた干からびた魚の入った袋が、ダシの商品コーナーに無い。止む無く煮干しの粉末の入った、だしパックで済ませる事にした。
いもすり餅の作り方をザックリ説明すると、じゃが芋の皮をむいて、すり下ろし、すり下ろした芋を布巾に包みギュッと水分を絞る。絞った汁は捨てずに取り置き、でんぷんが沈殿するまで待ち、上澄みを捨てる。残ったでんぷんと絞った布巾の中に残った芋を合わせておく。
煮干しで取った出汁に醤油で味をととのえ、先程のでんぷんと混ぜ合わせた芋を団子状に丸めて入れ、煮上がれば出来上がり。
今回の私のミッションは、いかに“とびないさんの味”に近づけることが出来るかという事だった。それで息子を喜ばせたいと思った。
途中、息子に作る作業を見てもらいながら、出来るだけとびないさんのオリジナル通りに再現したつもり。
出来たてを食卓に出し、早速息子に食べてもらった。
反応を期待して待っていると
「美味しい」と一言。おお、良かった、まず安心。
その次に息子が発した言葉は、
「でも、お母さんの味だ」
それを聞いて、ガ~ン。
あー、とびないさんの味は残念ながら再現出来なかったかー。
ミッション・インコンプリート。
このいもすり餅、人数が多いとじゃが芋の数も多くなるので、皮をむき、すりおろす事が結構な手間になる。
でも、この餅の独特の食感はなかなか良いので、アレンジして好きな野菜や肉類を入れるとまた旨味も増し、栄養バランスの良い一品になるだろう。
後になってよくよく考えてみると、とびないさんの味の再現は出来なかったけれど、息子が言った「お母さんの味だ」という言葉は、すなわち“おふくろの味”と解釈して良いのだろうか。全く考えていなかったけど、“私の味”という特有のものがあるのだと初めて気付かされた。
そして、それがおふくろの味として、息子の味覚に刻まれている。
自分で言うのも何だけど、おふくろの味を感じてもらえた事、そう思うと結果的には嬉しい出来事になった。
今度は私の個性強め、野菜多めのいもすり餅を作ってみる事にしよう。
次はいつ帰ってくるのかなー。