娘からのLINEに「お母さんブログ最近書かないね」と心配している様子が感じられた。
勝手気ままに始めたブログだが、読んでくださる方がいる事で、少なからず責任のような物も感じている。
私も読者として他のブロガーさんの更新が長期にわたってストップした時には、様々な憶測をし、他人事ながら身を案じてしまう。
娘の一言が私の書こうとする意欲に火をつけたかもしれない。むしろこんな気持の時は書いた方がスッキリするのはわかっているのだが…。明るい話題でない事が、ポジティブなポジ人としてブログを書くことに踏み出せずにいた。
息子が交通事故に遭った。
11月17日の夜、本人からその旨の連絡が来た。
夫が詳細を聞いた所、青信号の横断歩道を渡っていた所、カーブを切った車が息子に突っ込んで来たと言う。
異変に早めに気づいた息子だったが、避けきることができずにはねられ、顎を打ちかなり出血もしたようだ。
電話を切った後、帰省していた娘と私と夫の3人で、誰から言い出すとも無く、直ぐに息子に会いに行こうということになった。
夜の高速を飛ばし、苫小牧の息子のアパートへ向かった。
息子に会ってみると、顎に絆創膏は貼ってあるものの、いつもと変わらない様子で安心した。
しかし、「顎の噛み合わせがおかしい」というので、明日直ぐにでも病院で診てもらうようにと伝えて、札幌へと引き返した。
息子の元気な姿を見て安心したが、家族が交通事故に遭うなんて、信じられない気持ちだった。
その次に頭に浮かんできたのは、気付かない内に罰当たりな事をしたのでは無いかと自分の胸に手を当てた。日頃、信心の無い自分が、神仏と関連付けて考えようとする。
思い当たるとすれば、その年しめ飾りを飾らなかった。神社にお参りにも行かなかった。それでバチが当たったのだろうか?そんな馬鹿げたことまで考えてしまう。
病院で診てもらったら、顎の骨が折れていたと息子から連絡があった。やはり、当たり前だが車にはねられて、何も無いということはなかった。息子が気付くのが遅れて、身を交わしていなければどうなったかと思うとゾッとした。
是枝監督の映画、「歩いても歩いても」を思い出した。
ずいぶん前に見た映画だが、好きな作品だ。長男が交通事故で亡くなり、命日には加害者がお参りに来るのだが、母親役の樹木希林が陰で、無神経そうな太った加害者の男を毒づくのだ。
([訂正]後日友人の指摘で、上記映画の記憶内容に誤りがある事が判明しました。長男の死亡原因は交通事故ではありませんでした。ごめんなさい。)
私も息子を傷つけた非常識なドライバーを毒づきたい気分だった。
息子は結局左側の顎の骨が骨折しており、手術する事になった。
手術の日、苫小牧の病院へ面会に行くと、コロナ感染予防のため、面会時間は15分ということだった。
これから手術だというのに、息子は明るい表情で、リラックスしている様に見えた。私の方が怯えていたかも知れない。
手術の危険度10%、所要時間は3時間ほどだという。
あれこれ話している内に、面会時間は30分を過ぎていた。程なくして息子は呼ばれ、行ってくるねと笑顔で別れたのだった。
それから、病院のテレビや自販機のあるデイルームで、ひたすら3時間過ぎるのを待った。3時間を過ぎ、更に30分、1時間経っても手術は終わる気配が無かった。まさか…と思って看護師さんに尋ねると、「ちょっと難航しているようです」と言われ、更に不安になった。
結局待ち始めてから5時間程経ったところで、唐突にストレッチャーに乗せられた息子が手術室から出てきたのだった。
病室へ行くまでのほんの数秒、麻酔が切れて朦朧とした息子と目を合わせた。無事な姿を確認して、心から安堵した。
執刀医は女医さんだった。手術の簡単な説明を受けた。顎関節が複雑骨折をしていて、補強の為の金属か何かを入れたということだった。
骨は粉々に砕けて元には戻らず、人工物に置き換えられた。ちょっと悲しかった。
翌日、様子を見に再度病院へ行った。
術後とあって、息子は微熱が出ていて苦しそうだった。唇も乾燥してカサカサだったので、水分をこまめに飲むように伝えて、直ぐに引き上げることにした。
札幌に帰宅した時、たった1日家を空けただけなのに、長い旅から戻ってきたような感じがした。
その後は、徐々に回復しているが、食事が辛そうだ。本来楽しいはずの食事が痛みを伴うので、苦痛だと言う。固めの物は噛めないし、口もあまり開かない。リハビリする様に伝えているが…。
ふと思う。顔面が崩壊するほどの大怪我を負ったビートたけしや、千原ジュニアが、ほぼ元通りの顔に戻っている位なのだから、息子の顎だって、完全にとまでいかなくても、苦痛無く、違和感無く食事を楽しく摂れる日が来るさ。でも…なんて酷いことをしてくれたもんだ!大事な大事な私の息子に。
加害者の男、免停になっていればいいな。何かバチが当たって欲しいものだ。
どんなに毒づいても、息子の顎が元通りになる訳もなし。
我が家の居間に、小学校の5年生だった息子が学校で書いた「自分の目標」が写真と共に未だに壁に貼ってある。
学習目標は「先生の話をちゃんときく」。
生活目標は「交通事故事こにあわないようにする」。
それに本人が気づいて、おかしくてみんなで笑った。笑えるのも、この程度の怪我で済んだからだ。笑えて良かった。
昨年末、娘と「家内安全」と書かれた、少し上等なしめ飾りを買ってドアに飾った。
年が明けて、神社に息子と一緒にお詣りにも行った。今年が良い年になるよう心から祈った。