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 終 活

2024-03-26 06:00:00 | エッセイ

 

 

80歳を超すと、やはり「終活」という文字が目についてくる。

「人生100年時代」だから、

あと20年ほどもあるなどと悠長に構えてはおれない。

この年になると体調に突然、異変が起きてもおかしくないのだ。

見回せば、書斎には書籍や書類、趣味の音楽CD・DVDなどが山積している。

これをそのまま残して逝ったのでは、家族に負担をかけるに違いない。

また多少の預貯金などを持っていれば、

その相続をめぐり家族間のトラブルを引き起こしかねず、

家族に何とも厄介なことを押し付けてしまうことになるわけで、

そろそろ身の回りを整理しておかねば…

との思いが自然に出てくるのはしようがない。

 

ちょっと調べてみたら、終活についてこんな考え方が述べてあった。

「終活とは、いつか来る死の準備を行うためだけの活動ではない。

むしろ、遺される家族の負担を減らし、

また家族間のトラブルを防止する策を講じておくことで、

残りの人生をどう生きるかを前向きに考え、

老後の生活を豊かにするための取り組みでもある」

 

なるほど。具体的には

・身の回りの物を整理する

・医療や介護の希望をまとめておく

・葬儀の規模を考えておく─これらはすぐに思いつく。

さらにエンディングノートを活用し、

交友関係(訃報を知らせてほしい人の氏名や住所、連絡先など)、

遺品やデータの情報(残したいもの、処分したいもの)、

資産関係の情報(預貯金や不動産、負債などの情報)、

葬儀・墓に関することなどを書き留めておくことも有用であろう。

 

 

こうしたことをきちっと整理しておけば、

「残りの人生をどう生きるかを前向きに考え、

老後の生活を豊かにする」というわけだ。

物、資産、葬儀・墓、医療・介護について、それを整理しておくことは、

さほど難しくはないと思える。

実は悩ましいのが交友関係である。

簡単そうに思えるが、そうではないのである。

 

88歳の会社役員の男性が新聞紙上で

「趣味の会合や、職場などの同期会のやめ方」

についてアドバイスを求めていた。

この方は、夫婦2人暮らし、

多少の持病はあるがそれなりに元気に暮らしている。

趣味で集めた品々は息子から「残されると粗大ゴミになる」

と言われたのを機に、自分でほとんど処分した。

また高齢を理由に、先輩の文例を手本にして「年賀状じまい」も出来た。

 

だが、悩ましいのが「趣味の会合や、職場などの同期会のやめ方」なのだという。

やめれば義理を欠くことになりはしないか、そんな思いがするのである。

自然に退散するしかないか、そうも思うが

これまたどこか心に引っかかるというわけだ。

 

これに評論家の樋口恵子さん

(この方は91歳で高齢者に対するいろんなアドバイスを書かれている)は、

こう答えている。

「共通体験を持つ仲間がいることは心強く、生きる力が湧いてくる。

だから、人とのつながりは早急に整理せず、出来る形で続けていくことをおすすめする」

同感である。

心許せる人との付き合いが、老後の生活を豊かにしてくれるのは確かだ。

交友関係の終活だけは急ぐ必要がないように思う。

 

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