80歳を超すと、やはり「終活」という文字が目についてくる。
「人生100年時代」だから、
あと20年ほどもあるなどと悠長に構えてはおれない。
この年になると体調に突然、異変が起きてもおかしくないのだ。
見回せば、書斎には書籍や書類、趣味の音楽CD・DVDなどが山積している。
これをそのまま残して逝ったのでは、家族に負担をかけるに違いない。
また多少の預貯金などを持っていれば、
その相続をめぐり家族間のトラブルを引き起こしかねず、
家族に何とも厄介なことを押し付けてしまうことになるわけで、
そろそろ身の回りを整理しておかねば…
との思いが自然に出てくるのはしようがない。
ちょっと調べてみたら、終活についてこんな考え方が述べてあった。
「終活とは、いつか来る死の準備を行うためだけの活動ではない。
むしろ、遺される家族の負担を減らし、
また家族間のトラブルを防止する策を講じておくことで、
残りの人生をどう生きるかを前向きに考え、
老後の生活を豊かにするための取り組みでもある」
なるほど。具体的には
・身の回りの物を整理する
・医療や介護の希望をまとめておく
・葬儀の規模を考えておく─これらはすぐに思いつく。
さらにエンディングノートを活用し、
交友関係(訃報を知らせてほしい人の氏名や住所、連絡先など)、
遺品やデータの情報(残したいもの、処分したいもの)、
資産関係の情報(預貯金や不動産、負債などの情報)、
葬儀・墓に関することなどを書き留めておくことも有用であろう。
こうしたことをきちっと整理しておけば、
「残りの人生をどう生きるかを前向きに考え、
老後の生活を豊かにする」というわけだ。
物、資産、葬儀・墓、医療・介護について、それを整理しておくことは、
さほど難しくはないと思える。
実は悩ましいのが交友関係である。
簡単そうに思えるが、そうではないのである。
88歳の会社役員の男性が新聞紙上で
「趣味の会合や、職場などの同期会のやめ方」
についてアドバイスを求めていた。
この方は、夫婦2人暮らし、
多少の持病はあるがそれなりに元気に暮らしている。
趣味で集めた品々は息子から「残されると粗大ゴミになる」
と言われたのを機に、自分でほとんど処分した。
また高齢を理由に、先輩の文例を手本にして「年賀状じまい」も出来た。
だが、悩ましいのが「趣味の会合や、職場などの同期会のやめ方」なのだという。
やめれば義理を欠くことになりはしないか、そんな思いがするのである。
自然に退散するしかないか、そうも思うが
これまたどこか心に引っかかるというわけだ。
これに評論家の樋口恵子さん
(この方は91歳で高齢者に対するいろんなアドバイスを書かれている)は、
こう答えている。
「共通体験を持つ仲間がいることは心強く、生きる力が湧いてくる。
だから、人とのつながりは早急に整理せず、出来る形で続けていくことをおすすめする」
同感である。
心許せる人との付き合いが、老後の生活を豊かにしてくれるのは確かだ。
交友関係の終活だけは急ぐ必要がないように思う。