Toshiが行く

日々の出来事や思いをそのままに

写真

2024-12-05 06:00:00 | エッセイ

 

あの写真はどこへ行ったのだろうか。

僕が1歳になるかならないか、そんな幼児の頃、泣きじゃくる僕を

母が膝に乗せ、抱きしめるようにあやしている、あの写真だ。

僕のおちんちんがぴょろりとのぞき、小学生くらいになると姉がそれを見せて、

大笑いしながらからかった、あの写真だ。

今でもはっきりと、しっかりと覚えている、あの写真だ。

 

今、手元にはA4の紙を半分に折ったものよりやや小さい角形7号の、

茶の封筒があり、その中に僕の若き日、中学生~社会人に成り立ての頃の日々が、

実に無造作に重なって入っている。

50枚ほどの写真。ほとんどが白黒で時代を表しているが、

なぜアルバムにきちっと貼るなどして大事に保存せず、

封筒にぽんと放り込み、それをまた書類入れの中に紛れ込ませていたのだろう。

 

中学生の頃の写真は、器械体操部の仲間と一緒に映っているものが多いが、

その中に2つ上の兄がいる。

白線のある学帽をかぶっているから高校生だったのだろう。

この兄は、中学の同じ部の先輩でもあったから後輩たちの何かの催し、

何だったか思い出せもしないが、それに飛び入り参加したようだ。

寡黙な兄だったが、この写真では後輩たちと肩を組み、楽しそうに笑っている。

 

高校、大学も大半が器械体操部の仲間たちと一緒だ。

競技大会でのもの、皆で小旅行したものなどが懐かしさを誘う。

 

そして、入社式の写真は同期生7人が前列に並び、

後ろには会社のお偉いさん方が新入社員より多く整列している。

54年も前、新調の紺の背広に白のポケットチーフが初々しい。

また10日間ほどの新入社員研修の際、寺で座禅を組み、

同期生たちと近くの山にハイキングを楽しむ写真などもある。

 

       

 

どうして、ここに入れていたのだろう。

平成7年に亡くなった母の葬儀の日の写真が封筒の中にあった。

当家は男4人、女2人の兄弟姉妹だ。僕はその一番下。

長男、次男、それに長女、次女、それに僕。

写真には5人が並んで写っている。一人欠けている。

中学生の時、部活の仲間と一緒に写っていた三男、2つ違いの兄がいない。

実は、彼はすでに母より5年早く他界していたのだ。

長兄、次兄とは10歳以上離れているが、

この兄とは2歳違いだから小さい頃からいつも一緒に遊んだ。

50歳ちょっと手前の若さだった。

 

1人欠けているとはいえ、兄弟姉妹が一緒に映っている写真は

おそらくこの1枚だけだろう。

母の葬儀というのに、なぜか皆笑顔である。

あれから29年たつ。残っているのは長女と僕の2人だけになった。

その姉も長年闘病生活を続けている。

 

あの写真は、この中にはない。もう一度見てみたいと思うが、もう無理だろう。

おそらく、母の手元にあったのではないかと思うが、

亡くなった際、家財道具を整理するのに取り紛れ行方知れずになったのだと思う。

二度と見ることは出来ないという少しばかりの寂しさはあるが、

あの映像の情景はこの年齢になっても、脳裏にしっかり焼き付いている。

実物を見ることはできなくとも、悔やむことはない。

僕を抱きしめ、あやしてくれた母。

あの写真は今、母の胸にしっかりと抱かれているはずだ。そう思う。

 

 

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (キキ)
2024-12-11 10:57:12
読みながらウルッときました。思いでは心にいつまでも残りますね。
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Unknown (Toshiが行く)
2024-12-11 11:17:19
キキさん こんにちは。      写真にはいろんな思いが写り込んでいますね。
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