脳科学者・中野信子さんの著書に「シャーデンフロイデ」というのがある。
「シャーデンフロイデ」とは、あまり聞きなれない言葉である。
一体何なのか。興味を引かれてページをめくってみた。
要するに「他人を引きずり下した時に得られる快感」、
さらに言えば、正義を振りかざして人を叩くと得られる快感で、
攻撃すればするほど、ドーパミンによる快楽が得られるのだという。
何事にも意見を異にする人たちがいる。そして、互いを批判する。
民主国家であれば、当然のことだ。
だが最近、批判を通り越して誹謗中傷の類が多いように思う。
特にSNS上で、そんなことが横行しているようだ。
そういう人たちは、間違いなく「自分こそが正義」だと固く信じ、
自分の正義の基準にそぐわない人を、正義を壊す悪人として叩く。
攻撃して、相手が弱れば「してやったり」の快感を得るというわけだ。
中野さんはまた、新型コロナウイルスが急速に広がった2年ほど前に
「正義中毒」という本も出している。
あの頃、マスクをしていない人など感染防止に非協力的と見えた他人を激しく攻撃する、
あるいは感染者が出た家庭、飲食店に嫌がらせをする、
さらに県外ナンバーの車を威嚇するなどといったことが起きた。
そして、「正義」を振りがさしたそんな人たちは、
自らを「自粛警察」「正義警察」と呼んだものだ。
中野さんは、こうした正義に溺れてしまった中毒状態を
『正義中毒』と言ったのだ。
今、こうした『正義中毒』に陥った国が世界のあちこちにある。
その結果、多くの民が犠牲になり、その惨状が連日報じられている。
近くでは韓国を“くず”呼ばわりする北朝鮮。
汚物風船を韓国に向け多数飛ばすなど、関係が急速に悪化している。
北朝鮮にすれば、自らが正義であり、韓国の脱北者団体が
大型風船で金正恩批判のビラを撒いたのを許した韓国政府は悪、
そう決めつけてのことだというが、事はそう単純なことではあるまい。
最近は「シャーデンフロイデ」と同じような意味で、
「他人の不幸で今日も飯がうまい」─“メシウマ”と言うのがあるのだそうだ。
韓国をこれほど攻め立てている北朝鮮だが、
「今日も飯がうまいわい」─そう、ほくそ笑んでいるとはとても思えない。