Toshiが行く

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ハーモニカ

2024-07-06 08:44:28 | エッセイ

 

 

誰かの生き方と似て、なんとまあ適当な楽器なことか──

楽器と名の付くものは、まったくダメだ。弾けない、吹けない。

ヴォーカルのレッスンに通うミュージックスクールの先生が、

「ギターもやってみませんか」と持たせてくれたものの、

5分もしないうちに「まあ、ボチボチやりましょうか」と、

あっさり諦めてしまった。

 

そして、次に先生が勧めたのがハーモニカだった。

これが僕にとっては〝適当な楽器〟だったのだ。

正確に音符通り吹かなくとも、

そのあたりを吹いていると何とか様になっている。

だから、覚え方にしてもどの穴がドなのか、レなのか、あるいはミなのか、

それを覚えることなく、

先生が「4番目の穴を吹いて、5を吸う。そして、また4を吹いて」

などと言ってくれる通りにやっていけば、それでOK。

だから、何番目の穴がドなのかいまだによく分かっていない。

もっとも、前奏、あるいは間奏にちょっと入れるだけだから、

それで通用するのだろうが、本格的だともちろんそうはいかない。

 

         

 

ほとんど先生のギター1本の伴奏で歌っているのだが、

確かにハーモニカをちょっと入れるだけで、なかなかよろしくなる。

この小さなハーモニカの、大きな役割に感じ入ることしばしばだ。

お断りしておくが、これはあくまで10ホールズハーモニカの話だ。

10穴しかないもので、ドイツのホーナー社製だとブルースハープ、

普通にはブルースハーモニカという。

ロックやフォーク、それにブルースなどでよく使われる。

フォーク歌手がよくギターを弾きながら、

首に固定具をつけ吹いている、あのハーモニカだ。

 

そういうことでホーナー社製1本とトンボ社製2本を持っている。

ただ気の毒なことに、この3本のハーモニカが、

書棚の飾り物同然にほこりをかぶっている。

たまに、ほこりを払ってやりはするが吹くことはない。

このところ、ハーモニカを入れる曲を歌っていないのだ。

 

いちばん最初に買ったホーナーのブルースハープ、その蓋をそっと開け手にしてみた。

「吹いてみてよ」──なんだか誘っているように思えてくる。

そして、やっと出番がやってきた。

レッスンで歌っていた曲に「これにハーモニカを入れましょうか」

先生がそう言ってくれたのだ。

ハーモニカを入れたその曲は、何ともナイスな響きとなり歌声を引き立たせてくれる。

82歳の誕生日が間もなく。

適当に生きてきた人生をハーモニカで祝ってみようか。

 

 

コメント (2)
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