診察券が8枚ある。
内科、胃腸内視鏡・内科、整形外科、泌尿器科、歯科、
それに総合病院のものが3枚。毎日飲んでいる薬も5種類だ。
また、この10年間に10回入院し、うち6度手術を受けている。
当然それだけ、いろんな医師たちの診察を受けているわけだが、
「あ~、この先生でよかった」と思える方はそう多くはない。
医師との相性、それは医師に対する信頼感でもあるが、
これが非常に大事であることは言うまでもない。
患者は伝えられる病状に少なからずショックを受ける。
その時、医師は患者にどう対してくれるのか。
それによって患者の気持ちは右に左にと大きく揺れる。
医師たちは確かに、患者の痛みを和らげ、命を守ってくれる。
それ故なのか、やけに上から目線で偉そうな態度の医師が多い。
さる医院で待合室にいたら、
院長が患者さんからの電話に対応している声が聞こえてきた。
それが何ともぶっきらぼうな言い方なのである。
患者の痛みに寄り添ってくれているとは、とても思えない。
また、そこの医師にも患者に対する何の温かみも、
いたわりも感じることが出来なかった。
「はい、がんですね。いつ入院しますか。
看護師と相談して早急に決めてください。では……」
こんな調子であり、「がん」と聞いただけで動転しているこちらは、
頭の中を真っ白にしたまま診察室を出るしかなかった。
結局、その医院を信頼できず、さっさと転院したのだった。
20年来のかかりつけの女医さんがいる。
がんを早期発見することができたのも、この先生のお陰だし、
何といってもこれだけの長年、健康状態を
すべて把握してくれているという安心、信頼感がある。
だから、少しでも不調なところがあれば、病状をうるさいほど尋ね、
女医さんもこれに丁寧に答えてくれる。
もう一人、信頼し頼りにしている医師がいた。
これまでの4度のがん治療をすべてを担当してくれた泌尿器科の医師だ。
実は、この医師を紹介してくれたのもかかりつけの女医さんだった。
残念ながら、その医師は転院してしまったが後任となった医師も気に入っている。
何がどうだという理屈はない。
とにかく医師と患者が、遠慮することなく会話出来ることが大事なのだ。
「患者の話なんか聞く必要はない」と言わんばかりの態度では患者は寄りつけず、
信頼感も生まれてこない。
患者が聞きたいことに丁寧に答えてくれる医師であってくれればよいのだ。
そこに温かみ、いたわりを感じ、快癒を信じることが出来る。
そんな医師には「先生、よろしくお願いします」と素直に頭を下げられる。
「先生、おいくつ? ほう40半ばの働き盛りですね」
「お子さんは何人? 3人ですか。
一番上のお姉ちゃんが弟や妹の面倒をよく見くれるんですって。
お母さん、助かりますね」──今診てもらっている医師ともこんな会話をよくする。
そんなやり取りが出来ればしめたものだ。