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昭和に生まれたかった!

2024-09-17 11:43:25 | エッセイ

 

新聞の投書欄に拾った話──。

14歳の女子中学生が、「今の時代、つまらない」と嘆き、

そして、こう叫んでいる。

「昭和に生まれたかった!」

 

「昭和」と言っても100年近くある。

戦争に苦しんだ時代、食うや食わずの戦後の復興期、

それらを乗り越えて享受した高度経済成長期、

さらにバブル経済が崩壊し、「失われた20年」と言われる低迷期……。

昭和という時代にはさまざまな起伏、形相がある。

さて、この少女が「生まれたかった」という昭和は、どの昭和であろうか。

「昭和生まれの母は、自分が子どもだった頃の話をよく聞かせてくれる。

友達と黒板で伝言をやり取りしたこと、冬の寒い日は制服の下に

ジャージーを着てわいわい登校したこと、

倉庫にお菓子を持ち込みキャンプしたこと……。

全てがおおらかで自由に思え、うらやましいと感じる」

 

  

 

少女は14歳だから、母親はおそらく40歳前後、

つまり1980年代の生まれではないかと思われる。

1960~70年代の高度成長期を経て安定成長期に入った頃であろう。

バブル崩壊前の、まだ豊かさを享受した時代である。

ある知人は、その時代を「生活が豊かになると共に心に安心感、

ゆとりが生まれ、さまざまな価値観を受け入れる懐の深い、

大変に許容性のある社会だった」という。

娘に自分の子どもの頃を話して聞かせた母親は、そんな時代に育ったのであろう。

 

だが今は──

「高度経済成長は遠い昔のこと。人の暮らしも、

取り巻く社会情勢も余裕を失くしてしまっている」

知人はそう続ける。

この少女の嘆きはもっと深刻かもしれない。

「今の時代、人々は外で遊ばず、まるでゲームやスマホに取りつかれているようだ。

将来、私たちが働き始める頃には、仕事はAIにとって代わられ、

もっと家にとじこもってしまうのではないか。

便利な時代と言う人もいるだろうが、私はつまらない、と思ってしまう」

「便利さは、人の触れ合いなど多くの大切なものを奪っていくのかもしれない。

だから私はよく思う。昭和に生まれたかった」

さてさてどうしたものか。

      

高度経済成長を象徴した最初の東京オリンピックは1964年だった。

あれから60年。時代は移ろう。

「平成に、令和に生まれてよかった」と思える日も来よう。

そうなるよう、あなたたちに頑張ってほしい。

 

 

 

コメント (2)
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