もう10年ほど前となる古希。まさに壮健に迎えることが出来た。
かかりつけの女医さんも顔をほころばせ、
「体のどこにも悪いところはありません。驚くほどお元気ですよね」と言ってくれた。
続けて「油断はいけませんよ。70歳を過ぎた頃から何やかやと出がちです。
健康管理にはよくよく気を付けて…」そう忠告してくれたのだが、
その時の僕は「大変お元気」との言葉に大いに気を良くし
「はい、はい」と軽く受け流したのだった。
しかし女医さんの忠告は恨めしくも、ものの見事に的中したのである。
女医さんが指摘したように何やかやと出てきたのである。
まず前立腺がん。これが72歳になった時。
まるで、これがスタートの号砲であるかのように翌年には膀胱がん、
さらに以降、これが毎年3度再発したから、がん手術は合わせて5度になる。
がんそのものはいずれも早期発見できたから今はもう心配なさそうだが、
これらに関わる発熱などで最初のがん以来、
81歳となった今年2月まで合わせて10度入院加療している。
今もなお毎月一度通っている女医さんも、そして10年来となる泌尿器科の先生も
「80歳を超えられたにしては、大変お元気」と以前聞いたようなことをおっしゃる。
もちろん悪い気はしない。確かに病院で行き交う同年配と思しき人と見比べると
「足取りもまだ確かだし、そうなのかな」と元気づく。
だが、「ああ、衰えたなあ」というのが本心である。
特に今年2月に入院した後の疲れは、それまでなかったことだった。
少し歩いただけで座り込みたくなるほどきつかった。
何とか体力を回復・維持しようと思い、ウオーキングに出かけると
以前は18分で歩けた同じ道が20分かかってしまう。
スマホの歩行計を見ると歩数はほぼ同じだ。
つまり、歩く速度が遅くなったということだろう。ひどく情けなくなる。
日本人の健康寿命は男性72歳、女性75歳だ。
つまり80歳を前に寝た切りや要介護になる人が多いということだ。
幸いここは切り抜けた。今度は80歳代をどうやって乗り切っていくかだ。
高齢者専門の精神科医・和田秀樹さんは
『80歳の壁は高く厚いが、壁を乗り越える最強の方法がある。
それは嫌なことを我慢せず、好きなことだけすることだ』という。
なるほど。要するに、「衰えたなあ」などとネガティブにならず、
前向きに明るく生き抜けということか。