治しやすいところから治す--発達障害への提言

花風社・浅見淳子のブログ
発達障害の人たちが
少しでもラクになる方法を考える場です。

がんばれ山口の人たち

2010-02-20 21:20:34 | 日記
アスペルガーの被告人に実刑判決が出ましたね。
懲役三年六ヶ月(求刑五年)。
裁判員裁判です。

現住建造物等放火ってそれなりに重い罪だと思います。
相場はわかりませんが、実刑だということは、責任能力は相応に認められたのでしょう。

朝日新聞 山口版より、地元の保護者の声。

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アスペの会の発起人で、長男(19)が小学4年生の時にアスペルガー症候群と診断された下関市の母親(48)は「理由が分からないままだと、本人や家族は悩み続ける。早期発見し、社会性を育むことが大事」と話す。長男は現在、社会人1年目。職場でサポートを受けながら、データ処理の仕事を順調にこなしているという。「周りのサポートがあれば、長所を生かして生活できる。犯罪に結びつくという偏見は持たず、身近に感じられる社会になってほしい」と話した。

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偏見はしばらくなくなりにくいですね。どうしても。
でもこの山口県の会の方たち、やさしいと思いました。
刑事被告人になった人を村八分していないし
別の障害のせいにもしていない。
数年の間にフェアになったんですね。

ただ、診断がつけばそれでこういうことが防げるわけじゃないですよね。
診断があっても加害行為は起きる。
起きたものは仕方ない。次につなげればいい。
そこで「なかったこと」にする事なかれ主義に陥ると、かえって偏見は残ると思います。

弁護側は控訴するんでしょうけど。

この被告人の父親が言うように「同じことが繰り返されるだけ」にならないことを祈ります。
お父さんの発言を聞いても、「監視されるのがいやだった」という本人の発言を聞いても
本当に家族の中で苦しんできたんだと思うから。

アスペルガーと放火に関する英文の論文、私の手元にあります。
支援の先生方も読んでいてくださるといいんですけど。

私は癒されている

2010-02-20 08:22:08 | 日記
ここ数日のエントリーに関していただくメールで
私は癒されています。

そしてはっきりとわかりました。

「ありのままをまんま受け入れましょう」系って
実はもう終焉に向かっていたんですね。

いや、現場を回っているとそれはわかっていたんですけど。

数年前には「ありのまま系」だったと思われる方々からも
「この子たちは確実に成長します。支援する側がそれを信じていないといけない」というメールをいただきます。

「自閉症は治らない?
 そんなわけないでしょう」というリアクションも。

花風社はもちろん「ありのままじゃない系」、すなわち「成長を信じている人」の本を出していきます。

どうして?

私は数年間つきあった結果、ASDの人が生き物として生きやすくなれるのを肌身で感じてきたから。

そして

自分自身もカンチガイを矯正されなかった(むしろ煽られた)自閉症の人から法的被害にあったから。しかも家族も巻き込んでしまった。
同じ目にあう人を減らしたいです。
だからもう「ありのままを認めましょう系」の本を出す気になれないのです。

メル友の賢ママさんからのメールをご紹介させていただきます。もちろんご本人の許可は取っています。

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今日のブログ拝見しました。うちの自閉っ子を育てていて思うのですが、自閉っ子のまんま放っておいたら、最後には親しか相手をしてもらえなくなってしまいますよね。うちの子のクラスメイトで自閉ではなくてADHDのお子さんがいるのですが、親御さんはしつけや療育をする気がなくて、ずっとそのまま放りっぱなしです。

保育園の時から一緒なんですが、発達が遅れていたうちの子の方がしつけていくうちに落ち着いて、だだん親以外の人のいうことも聞けるようになって、今学校でその子のお世話係のような関係になっています。

うちの子のパニックや自傷行為、極端な偏食があったとき、私は「この子の体が私より小さいうちにしつければならない」とそう思いました。診断を受ける前でしたが、「人に迷惑をかける行為」であることははっきりしていたからです。

言葉もしゃべれないしおむつも取れない時期から、この子のこだわりやパニックは治しておこうと思い、工夫して育てました。自家用車にしか乗れないのを、少しずつ一駅から慣らして、バスや電車に乗せました。一駅しか我慢できない時期は、その都度下りてまた次の電車を待ったので、どこかへ行く時は近くても一日がかりでした。でもその甲斐あって、今は飛行機にも乗れるようになりました。

放っておいても進歩する子はいいですけど、手助けがいる子がほとんどだと思います。

自閉っ子だから見逃してくれ、なんて世間では通じませんものね。

うちの自閉っ子は私がかなり問題行動を修正してから受診したので、しょっぱなの先生の質問が、「(このこだわりの強い)自閉症の子をどうやって(おとなしくさせて診察室まで)連れてきたのですか?」というものでした。

自閉っ子でも、教え方次第で伸びるということを知らない人が多いように思います。今日も自閉っ子のお母さんと、「自閉でも教えれば伸びるよね」という話をしたところです。

うちの自閉っ子は、将来働くという意志を持っています。高校は普通の養護学校でなく、就職訓練をしてくれる高等養護学校に行くと自分から言い出しました。応援してやろうと思います。

わたしもこの年になってもできることが増えています。講演を始めたのもこの三年ほどですし、乗り物の乗換えが苦手で迷っていたのが、子どもの病院への道を8年かかって迷わず行けるようになりました。わたしにとっては大きな進歩です。

自閉っ子はいくつになっても進歩を続けていくものだということが、もっとわかっていただけるといいです。わたしのメールが役に立つのはうれしいです。ぜひ使ってください。