私は、よく寝ぼける子供だったらしい。
なぜこんなことを思い出したかといえば、
寝ぼけるのはだいたい夏の夜だったからだ。
私の寝ぼけで、我が家が大騒ぎになったことがある。
ただ、その夜のことは、自分では寝ぼけていたとは思っていない。
だって、自分の目で見ているんだもの。
寝ているわけではないでしょう。
ちょっとみんなの様子が違っていたが。
子供のことゆえ、8時には寝たと思う。
2階の親の部屋だった。
何時だったか、起きた私は、
(あれ?こんなとこで寝ちゃったぁ)と思った。
弟が生まれてから、私は祖父母の部屋でおばあちゃんと寝ていたのだ。
でも、その夜は2階で寝るというような話になっていた。
どうもそれを忘れたらしい。
私は、起き上がって、階段を降り、台所を通って、
居間の横にある祖父母の部屋に行って寝直した。
その時、両親、祖父母、叔母は居間で、みんなでテレビを見ていた。
私はその後ろを通って、祖父母の部屋の引き戸を開けて入った。
昔の家のことだから、居間は確かに広かったが、
後ろを誰かが通れば気づく距離だし、
祖父母の部屋の引き戸を開け閉めすれば、
いくらテレビを見ていても、わかるはずだ。
だが、これははっきり覚えているが、
大人はみんなテレビを見ていて、誰も私に気づいた様子はなかった。
それからが、大変だった。
寝ようとした親が、部屋に行って、私がいないことに気がついた。
大騒ぎで家中を探したらしい。
祖父母の部屋で寝ているとは、誰も思わなかった。
そして、ついに母と叔母は、私の名前を呼びながら、暗い山道を駆け上がって、
うちのお墓まで行ってきたというのだ。
なんでお墓!
大人に、とっさに、まさかお墓に…と思わせるほどだったのは、
私の日頃の寝ぼけが、それほどひどかったからか、
あるいは特にその夜は、そう思わせるものがあったのか。
でも、私に言わせれば、
どうして私に誰も気がつかなかったのか、そっちの方が不思議だった。
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