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茨城一家殺傷事件 「人を殺してみたかった」 岡庭由征容疑者(26)

2021年05月08日 | ヒトゴロシ
茨城一家殺傷事件 
逮捕の26歳男は「人を殺してみたかった」と
殺人未遂、放火、猫殺しの過去

 
幸せだった一家を突如、襲った惨劇は発生から1年8カ月を経て大きく動いた。
茨城県境町の民家で2019年に会社員の小林光則さん(当時48)と妻の美和さん(当時50)が殺害され、子ども2人も重軽傷を負った事件で、茨城県警が埼玉県三郷市に住む無職、岡庭由征容疑者(26)を夫婦への殺人の疑いで逮捕した。  捜査関係者によると、岡庭容疑者は現在、茨城県警境警察署に拘留中。 県警はことし2月に岡庭容疑者が偽造した警察手帳を所持していたとして公記号偽造容疑で逮捕していた。  しかしこの逮捕には前段があった。 「去年11月に埼玉県警が危険物を所持しているとの情報提供を受けて岡庭容疑者の自宅を家宅捜索。44キロに及ぶ硫黄が見つかったため、消防法違反罪などで男を逮捕していた」  岡庭容疑者はどんな人物なのか。  警察関係者によると、岡庭容疑者は10年ほど前に埼玉県と千葉県で女子中学生、小学女児に対する殺人未遂事件を起こし逮捕・起訴されていた。
 岡庭容疑者は当時16歳。自宅からは数十本の刃物が見つかり、調べに対し「人を殺してみたかった」と供述していたという。  岡庭容疑者はこの事件の他に17件の放火や猫の死骸を遺棄したとして立件されている。  岡庭容疑者を巡っては、請われるままに刃物を買い与えていたとして父親が銃刀法違反で書類送検されている。  今回の事件では催涙スプレーをかけられ軽いけがをした小林さんの次女(当時13)が「帽子とマスク姿の男に襲われた」と供述。  警察は付近の聞き込み、防犯カメラの映像を調べるなどして行方を追ってきた。  記者は事件発生から1か月後の現場を取材したが、当時は有力な手掛かりはなく、2人の捜査員が被害者宅の目の前に拡がる釣り堀の会員名簿を押収し調べるなどしていた。  捜査関係者によると、境署捜査本部では不審者情報を中心に裏付け捜査をすすめていたという。 「岡庭容疑者と一家との接点は見当たらないが、犯行を裏付ける物証が得られた。今後は供述面で裏を取っていく」(警察関係者)  男は凄惨な事件の動機について何を語るのか。

(2021.5.7. AERA)

「茨城一家殺傷事件」26歳男が逮捕 
元捜査員が振り返る10年前の「猫虐待と通り魔事件」

「猫から始まり、少女を傷つけ、最後は人を殺してしまった。これがもし本当ならば、残念でなりません。我々は彼を逮捕した後、更生して欲しいという思いで送り出しましたので……」。こう語るのは、男が少年時代に起こした傷害事件を担当していた埼玉県警の元捜査員である。 

“ポツンと一軒家”で起きた殺人事件――。現場の状況からそう呼ばれてきた、2019年9月に茨城県境町で発生した一家4人殺傷事件が急展開を迎えた。5月7日、茨城県警は、小林光則さん(当時48)と妻の美和さん(当時50)を刃物で殺害し、長男と次女にも重軽傷を負わせたとして、埼玉県三郷市在住の無職・岡庭由征容疑者(26)を殺人などの疑いで逮捕した。茨城県警担当記者によれば、異例ずくめの捜査だったという。 「半年にわたり、二度の“別件逮捕”でつないだ上での“本件逮捕”でした。まず茨城県警は、昨年11月、埼玉県警との合同捜査で、岡庭容疑者を『三郷市防災予防条例違反容疑』で逮捕しました。自宅に硫黄45キロを隠し持っていたという容疑でした」  いよいよ境町の事件が動く――。この時から、男の自宅前は大勢のマスコミが詰めかける騒ぎとなっていた。 「しかし、事件は一向に動かないままでした。県警はさらに今年2月には、警察手帳を偽造したとして『公記号偽造罪』で男を再逮捕しましたが、その後も“本件”については音沙汰なし。そのため、“お宮入りだね”とも噂されていたのです」(同)  一転、執念の捜査で事件解決。本来ならばそんな賞賛が送られるところだろうが、7日午後に開いた記者会見で県警幹部は渋面を見せ、認否も含めたほとんどの質問にノーコメントを貫いたという。 「最初に別件で身柄を確保してから本件での逮捕まで半年もかかったのは、決定的な証拠を欠いていたためだと思われます。本人は自供していると言われていますが、起訴し、公判を維持していけるのか、今後の展開が注目されます」

逮捕の一報を複雑な思いで受け止めていたのが、冒頭で紹介した、10年前、岡庭容疑者が起こした傷害事件を担当した埼玉県警の元捜査員である。岡庭容疑者は、高校2年生だった16歳の時に、2件の「連続通り魔事件」を起こしていた。  最初の事件が起きたのは、2011年11月18日の午後5時45分頃。埼玉県三郷市の路上を歩いていた中学3年生の女子生徒が、自転車に乗った男に追い抜きざまにナイフで首を刺された。そして、2週間後の12月1日の午後3時過ぎ、最初の事件現場から約2.5キロ離れた千葉県松戸市の路上で、今度は小学2年生の女の子が下校中にナイフで脇腹を刺される“第二の事件”が発生したのだった。元捜査員が振り返る。 「あの時はピリピリしていたなんてもんじゃなかった。幸い二人とも命には別状はなかったが、狙われたのは幼い女の子たち。“第三の事件”が起きてしまう前に、何としてでも犯人を捕まえなければならなかった。現場付近の防犯カメラも徹底して調べましたが、はっきりと犯人とわかる映像は映っていなかった。彼が浮上したきっかけは、聞き込みからでした」
“バンカケ”で勝負に出た埼玉県警
 それは岡庭容疑者が、自宅近辺で猫を生き埋めにしたり、金槌で叩いて殺害していたという住民からの目撃情報だった。ほかにも、近隣ではバイクを全焼させる不審火も発生していた。 「最重要人物として彼をマークすることになりました。防犯カメラの映像と照らし合わせ、似ているとはなったものの、それだけでは逮捕できない。そこで、松戸の事件が起きた直後から、自宅に捜査員を張りつけて行動確認することにしたんです。出てきたらバンカケ(職務質問)をして、持ち物を調べようという方針だった」  そして、松戸の事件から4日後。自宅から自転車に乗って出てきた岡庭容疑者に捜査員が声をかけると、所持品の中から刃渡り15センチの折りたたみ式ナイフと17センチのナタが見つかったのだった。任意同行後、犯行を認めたため、殺人未遂の疑いで逮捕となった。 「ほっとしましたよ。その後の取り調べで、彼は『東京へ向かい、また人を刺すつもりだった』と話していた。あそこで確保しなければ、今度は警視庁管内で“第三の事件”が起きていた可能性があったのです。そこから動機の解明へと捜査は移っていったのですが、最後までなぜ事件を起こしたのかわからなかった。通常、こんな大事件を起こしてしまった少年は泣きじゃくったりするんですが、取り調べの最中はずっと平然としている。そんな彼を見ていて、なんでだろうという疑問は常にありました」  岡庭少年は「人を殺してみたかった」と供述したという。 「通常の人では想像もつかないような考えです。一見、裕福な家庭で、兄弟もいて、不自由ない暮らしをしている。背景に何があるのかというところをちゃんと理解しないといけないと、いろいろと探ってみたんですが、心の中は最後まで見えなかった。やはり精神的な問題があったんだと思う。ただ、事件を起こすきっかけの一つに彼の父親の存在があったことは間違いなかった。岡庭は刃物マニアだった。裕福な父親はクレジットカードなどで彼が好き放題購入できるようにしていたのです」


逮捕後、自宅からはサバイバルナイフなど71本が見つかり、うち16本は18歳未満の所持が禁じられているものであった。埼玉県警は翌年1月、父親を県青少年育成条例違反容疑で書類送検した。父親は自宅で測量事務所を自営。一族はあたりでは知られた大地主で、アパート経営なども行なっていたという。 「『有害がん具』を子供に買い与えたという条例違反です。ただ、がん具と言っても、実際、ちゃんと刺さるし、切れるし、使い方によっては人を殺める道具になりうる。そういった危ないものを、親の名義で買っているわけだから親の責任を問うべき。こういうものがインターネットで簡単に買える、買ってあげられる社会システムこそおかしいという問題提起もあって、私たちは父親の立件に踏み切ったのです」  その後、鑑定留置を経て、さいたま家庭裁判所に送致された岡庭容疑者は刑事処分相当と判断され、裁判員裁判にかけられることになった。2013年3月、さいたま地裁は「保護処分が相当」とし、家裁の審判で関東医療少年院に送られた。  2018年頃に満期で出所し、しばらくグループホームで暮らした後、三郷市の実家に戻り父母と暮らしていたという。仕事もせず引きこもりがちだったという岡庭容疑者がなぜ茨城の境町に向かい、接点がなかったといわれる一家を襲ったのか、理由はいまだ判然としない。10年前の事件を取材していた記者はこう分析する。 「当時、彼は第三の事件を東京で起こそうとしていたことについて、『埼玉と千葉は警戒されていると思った』と供述していた。今回、茨城にまで遠出したのは同じような警戒心があったからではないか」  元捜査員はこう悔しさを滲ませる。 「二度とこういう事件を起こしたくないという思いで、捜査するのが私たちの仕事。実際、私たちはあの時、彼を逮捕し、罪を重ねることを食い止めることができた。まだ少年だった彼には、改心して人生をやり直して欲しいという思いを持っていたのですが、逆の結果になってしまったならば、本当にやるせない思いです」 

(2021.5.8.デイリー新潮)





《茨城一家殺傷事件》逮捕された「第二の酒鬼薔薇聖斗」、
母親が取材で語っていた息子のこと

2019年9月、茨城県境町の住宅で会社員の小林光則さん(当時48)と妻・美和さん(同50)が殺害され、子供2人が重軽傷を負った事件で、茨城県警は埼玉県三郷市在住の岡庭由征容疑者(26・無職)を夫妻に対する殺人容疑で逮捕した。
岡庭容疑者は自宅で就寝中だった夫妻を包丁のようなもので切りつけ、殺害した疑いがある。  昨年11月、埼玉県警は三郷市火災予防条例違反の疑いで岡庭容疑者を逮捕。続けて今年2月には茨城県警が、警察手帳を偽造販売したとして公記号偽造の容疑で逮捕していた。 「週刊女性」が当時報じた事件の一報を再公開する。(2021年2月16日公開。年齢・肩書き等は当時のまま) * * *
「第二の酒鬼薔薇聖斗」と呼ばれて
 その男A(20代)の危険な行動については、近隣住民の間でも知れ渡っていた。 「彼が少年時代、猫の首を切り、その死骸を家の周りに埋めていたそうですね。警察犬を連れた捜査員が、捜索に当たっていたと聞きます」 「最近では、爆弾の材料を持っていたと近所の人が言っていました」  そんな悪い噂は広まる一方、Aの人となりについては、「本人を見かけたことがないからわからないんです」  とみな、一様に口にし、謎に包まれたままだ。  埼玉県三郷市の川沿いに立つAの家は、周囲がブロック塀で囲われ、敷地の中は二世帯住宅になっている。  ここからサバイバルナイフや鉈など計71本の刃物が埼玉県警に押収されたのは、今から10年近く前のこと。Aは当時、通信制高校の2年生で、2011年11月、同市の路上で中学3年の女子生徒のあごを刃物で刺してケガを負わせ、さらにその2週間後には、隣接する松戸市の路上で小学2年の女児の脇腹など数か所を刺し、殺人未遂の疑いで逮捕された。  この連続通り魔事件に加え、Aは猫の首を切断したり、放火を繰り返したりした。その行動の奇異性からネット上では、1997年に神戸市で起きた連続殺傷事件の犯人になぞらえて、「第二の酒鬼薔薇聖斗」とも呼ばれている。

そんなAの家に昨年11月、再び埼玉県警の捜査の手が入った。隣の茨城県警から「殺人のために使えるものを所持している」との情報提供を受け、家宅捜索したところ、硫黄約45キロが見つかったのだ。危険物貯蔵取り扱いの基準に反したとして、埼玉県警は三郷市火災予防条例違反の疑いで、無職のAを逮捕した。  現場には早朝から大勢の報道陣が詰めかけ、「通行止めになるほどだった」(近隣住民)という。  その理由は、Aがある未解決事件の捜査線上に浮上したためである。  その事件は、Aの家から北に約40キロ離れた、茨城県境町の民家で2019年9月に起きた。会社員の小林光則さん(当時48)と妻のパート従業員、美和さん(同50)が何者かに刃物で刺されて死亡し、中学生の長男(同13)と小学6年生の次女(同12)が重軽傷を負った。  茨城県警などによると、犯行時間は午前0時38分ごろ。美和さんが「助けて」と110番通報して事件が発覚。犯人は小林さん宅に侵入し、2階の寝室に直行。光則さんの胸や美和さんの首に刃物を突きつけて殺害した後、子ども2人の部屋に押し入り、足や腕などを切りつけた。  子ども2人の証言などから、犯人は帽子とマスク姿の知らない男で、ベッドで寝ていた子ども2人に「降りろ」と指示し、次女には催涙スプレーのようなものをかけたという。1階の部屋にいた大学3年生の長女(同21)は無傷だった。  現場からは、犯行に使われた刃物は見つかっておらず、部屋が荒らされた形跡もない。この状況から茨城県警は、怨恨による犯行の可能性が高いとみて捜査を続けてきた。地元の有志も、有力な情報提供者に懸賞金100万円をかけたが、犯人は特定されていない。  事件は迷宮入りしたかにみえたが、昨年11月に逮捕されたAが突如として捜査線上に浮かび上がり、一部週刊誌がそれを報じた。
 全国紙の社会部記者が解説する。 「Aが茨城の事件と何らかの関係があるかもしれないという情報は最初、警察庁から漏れました。それでメディアが騒ぎ出し、硫黄所持で逮捕されたときには各社が現場に駆けつけました。茨城県警の署員も1人同行しています」  埼玉県内の現場になぜ、茨城県警の署員が居合わせたのか。同県警県民安心センターの担当者は、取材に対してこう回答するにとどまった。「(Aに関する)報道は把握しているが、埼玉県警が捜査している案件なので、コメントできない」  人口約2万4千人の境町を震え上がらせた事件現場は、うっそうと生い茂る雑木林の中にある。周囲には畑が広がり、近くの民家までは約300メートル離れ、そこだけぽつんと孤立している。2月上旬現在、雑木林の周りには規制線の黄色いテープが張り巡らされていた。  雑木林の中へ通じる道が1本だけ開かれているが、規制線が張られたその入り口に立つと、奥には物置の小屋や廃屋が見えるだけで、その先に小林さん一家が住んでいた一軒家があるかどうかまではわからない。  雑木林のそばには釣り堀があり、10人ほどの客が談笑しながら釣りを楽しんでいた。  この一軒家は、美和さんの実家だった。美和さんの父親が亡くなり、母親が1人になったため、小林夫妻が今から15年ほど前、埼玉県から移り住んだのだ。家の敷地内には当時、鯉の釣り堀があったという。

小林夫妻と回覧板のやりとりをしていた近所の女性(90代)はこう語る。 「美和さんは郵便局でパート従業員として働いていました。役場のチラシを配るなど地域の活動にも参加し、おとなしくてええ人でした」  光則さんの実家は、埼玉県でクリーニング店を営んでいた。境町に引っ越して以降も店に通っていたが、場所が遠いため、県内のゴミ処理施設へ転職したという。  ケガをした次女と同級生の子どもを持つ別の住民女性は、こう振り返った。 「次女は明るく、礼儀正しい子で、きちんと敬語もできる。お兄ちゃんは地域の少年野球チームに所属していました。妻の美和さんとは何度もお会いしていますが、おとなしい方でした」  このほかにも現場周辺を聞き込んだが、小林夫妻を知る住民たちは、いまだに信じられないといった様子でこう口をそろえた。 「誰かから恨まれるような人ではありません」  そんな一家が襲われた日の夜は、激しい雨が降っていた。現場近くの中古車販売店に住み込みで働くパキスタン人男性(42)は、そのときの様子を、説明してくれた。 「小林さんは犬を飼っていました。いつもは吠えるのですが、その日は声が聞こえなかった。雨が降っていたし、友人とDVDを見ていたので気づかなかっただけかもしれません。現場周辺にマスク姿の不審人物がいたらしいですね。日本は安全な国だと思っていましたが、事件が起きてからとにかく怖いです」  この中古車販売店には防犯カメラが設置されているが、事件発生時はパトカーが映っているだけで、不審人物の姿は確認されなかった。  事件は発生から間もなく1年半が経過しようとしているが、今年に入って茨城県警の捜査員が、通学路における不審人物の有無について境町の子どもたちに尋ねていたという。住民への聞き込みは久しぶりのことで、Aの逮捕を受けた動きなのだろうか。  はたして、Aは事件と関係があるのか。
再び全国紙の社会部記者が語る。 「Aは参考人ではありますが、メディアが前のめりに騒いだだけの印象を受けます。Aと小林さん一家のつながりがまったくないんです」  辺り一面は暗闇に包まれていた。  犯行時間と同じ午前0時38分の現場周辺は、街灯がほとんどなく、遠くから雑木林を眺めると、真っ黒い煙が渦巻いているように見えた。初めてここを訪れた人なら、昼間以上に、その中に一軒家があるなんて想定できない。規制線が張られた入り口から中をのぞいてみても、視線の先は真っ暗で、決して足を踏み入れようとは思わない。  つまり犯人は、雑木林の中に家があることを事前に把握していた可能性が高く、行きずりの犯行ではないだろう。  もうひとつ気がかりなのは、深夜の時間帯に現場まで足を運ぶ交通手段だ。前述のとおり、現場は畑に囲まれた田舎町で、近くに電車も通っていない。  もし犯人が県外の人間だとしたら、自分で車かバイクを用意しなければならない。現場は最寄り駅から約12キロ離れ、そこからタクシーを使って犯行に及ぶのは考えにくい。そもそも、そんな時間帯にタクシーが待機しているのだろうか。  10代から20代にかけて長らく塀の中で暮らしていたAが出所したのは数年前。硫黄所持で逮捕されたときには無職だったから、車の免許を持っていないかもしれない。
元少年Aの家を尋ねると
 三郷市にあるAの家のインターフォンを鳴らすと、母親とみられる中年女性の声がした。メディアの人間だと名乗った瞬間に声色が変わり、「帰ってください」と追い払われた。置き手紙を残して後日、訪問すると口数が少ないながらも、インターフォン越しに重い口を開いた。  母親は、茨城の事件については知っていたが、息子の関与をほのめかす報道については把握しておらず、「びっくりしている」と語った。  Aの免許の有無に関しては、こうきっぱり言った。 「持っていません。息子は車を運転できないです」  もちろん、無免許で知人の車を運転した可能性もあるだろう。知人に現場まで車で連れて行ってもらった可能性も否定できない。とはいえ現場の取材から、Aと小林一家をつなぐ接点が見つからない限り、事件との関連性はやはり憶測の域を出ないのではないだろうか。  昨年11月に逮捕されたAはその翌月、消防法違反罪で起訴された。初公判は今月半ば、さいたま地裁で開かれる予定だったが、直前になって茨城県警に逮捕されたため、取り消された。容疑は警察手帳を偽造販売した疑い。小林さん一家4人殺傷事件との関連性は依然としてわかっていない。  母親が静かに語った。 「(息子のことで)家から出たくないんです。周りの目にさらされ、まだ生きていたのかって顔をされるから。(通り魔事件から)もう9年間、ほとんど外出していませんので、変わり者と思われています」  その弱々しい声は、「犯罪者の親」という呪縛から逃れられず、ただ生きているだけの日々に疲れ切っているように聞こえた。 

(2021.5.7.週間女性PRIME)


 
 

 
 
 

 
 

 















 







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