鞠子/丸子・名物茶店 江戸より20番目の宿
梅わかな丸子の宿のとろろ汁 芭蕉
今や全国的に有名になり、県外からも団体バスで食しにくる丁字屋のかつての姿。近くには島田出身の連歌師・宗長ゆかりの吐月峰柴屋寺があり、丸子富士を借景とした庭園で有名だから、背後の端正な山もそれと思われる。日本国中に○○富士と名の付く山は数多くあるが、本家本元の富士山がドンと見える静岡では少ないのではないか。私が知っているのはこの丸子富士だけだが、他にもあるのだろうか?
(2003年9月記)
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【2024年9月追記】
広重・東海道五十三次に描かれている山は、その場所で著名な山を嵌め込むのではなく、どうも実景に忠実に配しているようだ。この「名物茶店」のモデルとされる丁字屋は現在、丸子橋の東袂の丁字路に南を向いて建っている。広重の画もその通りだとすると、背景の小山は北側裏山の240メートル峰にあたり、このピークが各解説でいう「横田山」なのだろう(丁字屋の250メートルほど東には「丸子宿横田本陣跡」がある)。
横田山(Google Earth作成)
柴屋寺庭園から望む丸子富士
丁字屋の辻を北に進んだ横田山西麓には吐月峰柴屋寺があって、国指定史跡である庭園からは丸子富士が借景として望まれる。柴屋寺からさらに北へ歓昌院坂を越えて木枯ノ森から羽鳥へと至る道は、(6)のリンク記事(駿河国中部の地誌と……)で示したように古東海道(奈良時代)のルートであった。
上記「古代(奈良時代)東路推定略図」には宇津ノ谷コースから勧昌院坂を経由して羽鳥に向かい安倍川を上流で渡って国府に向かうコースが示されている。これは東海道の間道の一つとして古くからあったものと思われる。特筆すべきは藁科川の中州である“木枯森”が清少納言の『枕草子』に取り上げられていることである。森は…の段で他の名所と共に列挙されているに過ぎないが、少なくとも「木枯森は素晴らしい」と書かれた本か歌が当時流布していたことを示している。
満観峰から望む丸子富士
ところで、○○富士は「郷土富士」と呼ばれるらしいが、地理学者の田代博によれば400峰以上で、うち約40峰は日本国外にあるそうだが、玉山=台湾富士のように旧植民地や占領地の山に付けられていることが多いようだ。
ウィキペディアによると、静岡県の郷土富士は丸子富士を含め10峰が挙げられていたが、真富士山はいわゆる富士山を模しての命名ではないし、異議がある所もある。
下田富士(岩山/下田市)、千頭富士(黒法師岳/川根本町)、川根富士(朝日岳/川根本町)、第一・第二真富士山(静岡市)、伊豆小富士(小室山/伊東市)、伊豆富士(大室山/伊東市)、三坂富士(南伊豆町)、長津呂富士(恒々山/南伊豆町)
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