映画と渓流釣り

1778の物語

 今年の封切り作品トップをきって公開されたのが、わたくしの大好きな結子さんの主演作品である事は素直に嬉しい。それも彼女でしか有り得ない役どころなのは、ファンにとって直球ど真ん中の喜びである。毎年結子さんの出演映画は観ているけれど、こうも毎年美しくなってゆく女優は稀有であろう。本当のことを言えば、彼女の良さは少しテンポの遅い惚けた味を持った女性を飄々と演じるところにあると思っているので、そろそろ死に逝く蜻蛉のような役は卒業して欲しいとは思うのだが。「天国の本屋 恋火」「グローズドノート」「いま会いにゆきます」そして今回と同じ組み合わせ「黄泉がえり」どれも彼女の透明感のある美しさが無ければ成立しなかったのだけれども。「サイドカーと犬」まで飛び抜けなくてもいいが、違う彼女の魅力溢れる躍動感をわたくしは待ち続けたい。

 作品もお涙頂戴に徹した作品になっておらず、好感が持てるつくりになっていた。前記した「いま会いにゆきます」を観て感じた事と同じではあるが、生きている時にこそ、元気でいる時にこそ愛する人を大事にすべきである。残される方は逝ってほしくないから、自分が出来る事は何でもしようとするし、逝くしかない方は一人残される者に未練と不安を抱えて苦しむ。人の別れが常に悲しく悲壮感を伴うとは限らないが、昨日と同じ今日を共有した間柄であれば明日もまた同じ日々が続く事を疑わない。そんな日常をもった人々にとって、突然であろうが告知されたものであろうが別れは辛いだろうと思う。それでも必ずいつか来る別れの時、送る時も逝く時も精一杯の感謝を込めてありがとうと言いたい。「また、一緒に暮らしましょう」と言えるだけの愛情を胸に。わたくしもあなたも。

 
 
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