僕は19歳の時にモデルデビューをして4年間モデルの仕事をし
今ではトップモデルと言われるまでになったのだけれど、
モデルの仕事にも役立つかと始めた演技の勉強をしている内に
段々と演技者にも興味を持ち始めていた
モデルは如何に良く魅せるかを製作者のデザインした通りに表現するのだが、
演技者は脚本家、監督スタッフと一緒に特定の人物になって作品を
作り上げていく事に興味を感じていた
そんな時に監督の目に留まって
短いドラマに出させて貰った縁で今この場所に居る
今は男女を問わず大抵の子供達が大学に進学する時代だけれど
僕の家はその点少し事情が違った
僕が中学の時に起こったIMF危機のせいで父の仕事が上手くいかず、
その上糖尿病が原因で一時は足を失うかと危惧される程に
体調の悪い父を助ける為に僕は昼夜を惜しんで働いた
工事現場から新聞配達、コーヒーショップ、ワインショップまで
ありとあらゆるバイトをして家計を助けてきた
でも一時は高校を辞めて働く事まで考える程に家計が苦しくて
妹の学費は僕のバイト代で賄う程だった
こういう状態だから小遣いと言っても交通費を含めて一日100円
ゲームを買う事も出来ないので本を読む事が多かったし
家にはエアコンが無かったから夏は公園でバスケットをしたり
ウェイクボードをしてよく遊んだ
ケーキ店でバイトをしていた時
お腹が空いているのに小遣いが無くて、
「デコレーションを失敗しました!」と店長に嘘をついて
ケーキで空腹を満たした事が何度もあった
こんな厳しい環境で育ったから僕のハングリー精神は半端じゃない
何をするのも一番で無ければ意味が無いと思える程に
何でも一番を目指した
けれど、こんな僕が入ったモデルの世界
僕の周りのモデル達は当然の様にファッションに関する興味が人一倍で
知識も経験も豊富で食べる事にも苦労をしていた僕とは
まるで違う世界に紛れ込んだ事に少し後悔した事もある
でも苦労無しに成功は無い、
やるからにはトップに立たなければ意味がないと気持ちを切り替えて、
どんなに小さなチャンスも逃がさない様に
沢山の表情やポーズを研究し人の何倍も努力をして
やっと写真家が撮ってみたいモデルNO.1と言われるまでになった
こんな血を吐く思いでなったモデルの仕事だけれど
どんな場合でも主役はモデルではなく服
体に合う服を着るのではなく体を服に合わせる
サイズの合わない靴に足を押し込んで
何事も無いかのような表情を作りポーズを取る
でもその体形を維持する為の過酷な食事制限は
時には命に関わる事も有る
そんな思いをして一流と言われる様になった今でさえも
来月も仕事があるとは限らない
モデルが一生続けられる職業では無いと思い始めていた時
監督に出会ったんだ
今は芸能界と一つの単位で呼ばれるこの世界も
以前は歌手、タレント(ドラマ俳優)、映画俳優、ミュージカル俳優、
それにモデル、各々が世界を作っていたので交流する事は殆ど無く
歌手が演技者に転向したりモデルが俳優になったりという事に
特に年配の先輩達には拒否反応が強かった
けれど近頃はドラマや映画で活躍する俳優の中にもモデル出身や
歌手出身の先輩が多くなってきたので僕や彼女のような
転向組も昔に比べれば受け入れられ易くなってきた
でもそれは演技者としてどれ程の成果を出せるかがポイントで
モデル出身だからとか歌手出身だからと言われないように
人一倍頑張らないといけない、僕も彼女も!
カメラテストが始った
色黒な僕を見たスタッフに「何の役?」と聞かれた時
改めて自分が居る位置に気が付いた
モデル界では知らない人が無いと言われる僕だけれど
この世界ではただの新人
でも彼女はスタジオに入ってきた時から違った
新人と言っても8年間歌手の世界で活躍してきたから
カメラマンや照明のスタッフとは顔馴染みで、
時々笑顔で話したり、挨拶する様子を見ると
否応無しに僕とは違う世界の人である事を感じさせられた
カメラテストが終わるとすぐに
彼女と一緒にポスターを撮る事になった
唯でさえクロさんとあだ名がつく位の地黒なのに
少し前までアメリカをバイクで旅行していたものだから
真っ黒に日焼けして
「アフリカ帰りの皇子か?」なんて助監督に言われる程
それに比べて彼女は真っ白で透き通っていて
本当に綺麗な肌をしている
モデルをしていた4年の間には沢山のモデルと仕事をしたけれど
今まで見た中で一番綺麗な肌をしていると思う♡
演技にはまだ自信が無いけれど、
写真を撮られる事には慣れている
だからどんな指示も即キメられると自信満々の
モデルモードで待っていたのに
「夫婦の役だから見つめあう様に☆」と言われて
少し顔を赤らめながら上目遣いに僕を見る彼女の目が
きらきらしているのを見ると
珍しくドキドキしてしまった
彼女の心の奥まで見えそうな位に澄んだ瞳を見ると
僕は撮影中である事を忘れる程だった
お互いに慣れるまで少し時間が掛ったけれど
出来上がった写真はとても良かった☆
モデルの時もこんな風に女性と仲よさそうな
写真を撮る事は何度もあった
キスシーンもね
でも狭いモデルの世界の事だから、
相手が友達のツレだったり以前一緒に仕事をしたり
時には元の彼女だったりと
全く知らないという事は少なかったし、
お互い仕事だと割り切っているから
女性だと意識し無い事の方が多かった
だからどんなポーズを要求されても
直ぐに応える事が出来たのに
ただ見詰めあうだけのポーズが
コンナに難しいと感じたのはモデル人生で初めてだ!
いや、今日からは俳優か!
これから半年以上もの間彼女と夫婦の役をするのかと思うと
なんだかドキドキしてきた♡
何かいい事が有りそうな予感がする
今ではトップモデルと言われるまでになったのだけれど、
モデルの仕事にも役立つかと始めた演技の勉強をしている内に
段々と演技者にも興味を持ち始めていた
モデルは如何に良く魅せるかを製作者のデザインした通りに表現するのだが、
演技者は脚本家、監督スタッフと一緒に特定の人物になって作品を
作り上げていく事に興味を感じていた
そんな時に監督の目に留まって
短いドラマに出させて貰った縁で今この場所に居る
今は男女を問わず大抵の子供達が大学に進学する時代だけれど
僕の家はその点少し事情が違った
僕が中学の時に起こったIMF危機のせいで父の仕事が上手くいかず、
その上糖尿病が原因で一時は足を失うかと危惧される程に
体調の悪い父を助ける為に僕は昼夜を惜しんで働いた
工事現場から新聞配達、コーヒーショップ、ワインショップまで
ありとあらゆるバイトをして家計を助けてきた
でも一時は高校を辞めて働く事まで考える程に家計が苦しくて
妹の学費は僕のバイト代で賄う程だった
こういう状態だから小遣いと言っても交通費を含めて一日100円
ゲームを買う事も出来ないので本を読む事が多かったし
家にはエアコンが無かったから夏は公園でバスケットをしたり
ウェイクボードをしてよく遊んだ
ケーキ店でバイトをしていた時
お腹が空いているのに小遣いが無くて、
「デコレーションを失敗しました!」と店長に嘘をついて
ケーキで空腹を満たした事が何度もあった
こんな厳しい環境で育ったから僕のハングリー精神は半端じゃない
何をするのも一番で無ければ意味が無いと思える程に
何でも一番を目指した
けれど、こんな僕が入ったモデルの世界
僕の周りのモデル達は当然の様にファッションに関する興味が人一倍で
知識も経験も豊富で食べる事にも苦労をしていた僕とは
まるで違う世界に紛れ込んだ事に少し後悔した事もある
でも苦労無しに成功は無い、
やるからにはトップに立たなければ意味がないと気持ちを切り替えて、
どんなに小さなチャンスも逃がさない様に
沢山の表情やポーズを研究し人の何倍も努力をして
やっと写真家が撮ってみたいモデルNO.1と言われるまでになった
こんな血を吐く思いでなったモデルの仕事だけれど
どんな場合でも主役はモデルではなく服
体に合う服を着るのではなく体を服に合わせる
サイズの合わない靴に足を押し込んで
何事も無いかのような表情を作りポーズを取る
でもその体形を維持する為の過酷な食事制限は
時には命に関わる事も有る
そんな思いをして一流と言われる様になった今でさえも
来月も仕事があるとは限らない
モデルが一生続けられる職業では無いと思い始めていた時
監督に出会ったんだ
今は芸能界と一つの単位で呼ばれるこの世界も
以前は歌手、タレント(ドラマ俳優)、映画俳優、ミュージカル俳優、
それにモデル、各々が世界を作っていたので交流する事は殆ど無く
歌手が演技者に転向したりモデルが俳優になったりという事に
特に年配の先輩達には拒否反応が強かった
けれど近頃はドラマや映画で活躍する俳優の中にもモデル出身や
歌手出身の先輩が多くなってきたので僕や彼女のような
転向組も昔に比べれば受け入れられ易くなってきた
でもそれは演技者としてどれ程の成果を出せるかがポイントで
モデル出身だからとか歌手出身だからと言われないように
人一倍頑張らないといけない、僕も彼女も!
カメラテストが始った
色黒な僕を見たスタッフに「何の役?」と聞かれた時
改めて自分が居る位置に気が付いた
モデル界では知らない人が無いと言われる僕だけれど
この世界ではただの新人
でも彼女はスタジオに入ってきた時から違った
新人と言っても8年間歌手の世界で活躍してきたから
カメラマンや照明のスタッフとは顔馴染みで、
時々笑顔で話したり、挨拶する様子を見ると
否応無しに僕とは違う世界の人である事を感じさせられた
カメラテストが終わるとすぐに
彼女と一緒にポスターを撮る事になった
唯でさえクロさんとあだ名がつく位の地黒なのに
少し前までアメリカをバイクで旅行していたものだから
真っ黒に日焼けして
「アフリカ帰りの皇子か?」なんて助監督に言われる程
それに比べて彼女は真っ白で透き通っていて
本当に綺麗な肌をしている
モデルをしていた4年の間には沢山のモデルと仕事をしたけれど
今まで見た中で一番綺麗な肌をしていると思う♡
演技にはまだ自信が無いけれど、
写真を撮られる事には慣れている
だからどんな指示も即キメられると自信満々の
モデルモードで待っていたのに
「夫婦の役だから見つめあう様に☆」と言われて
少し顔を赤らめながら上目遣いに僕を見る彼女の目が
きらきらしているのを見ると
珍しくドキドキしてしまった
彼女の心の奥まで見えそうな位に澄んだ瞳を見ると
僕は撮影中である事を忘れる程だった
お互いに慣れるまで少し時間が掛ったけれど
出来上がった写真はとても良かった☆
モデルの時もこんな風に女性と仲よさそうな
写真を撮る事は何度もあった
キスシーンもね
でも狭いモデルの世界の事だから、
相手が友達のツレだったり以前一緒に仕事をしたり
時には元の彼女だったりと
全く知らないという事は少なかったし、
お互い仕事だと割り切っているから
女性だと意識し無い事の方が多かった
だからどんなポーズを要求されても
直ぐに応える事が出来たのに
ただ見詰めあうだけのポーズが
コンナに難しいと感じたのはモデル人生で初めてだ!
いや、今日からは俳優か!
これから半年以上もの間彼女と夫婦の役をするのかと思うと
なんだかドキドキしてきた♡
何かいい事が有りそうな予感がする