その44 若者はオーストラリアへ
うちの息子が転職してブリスベンに行くことになった。
息子は生まれて初めて、家を出て行く。しかも外国、オーストラリアである。
24歳の息子の旅立ちだ。
大学を卒業して、今の会社に就職しまだ1年余りというのに、もう転職する。
3月なかばに、リクルートのエージェントにCV(履歴書)を送って、仕事が決まる
までわずか3週間。あれよあれよという間に決まった。
コントラクトにサインしてメールで送る、チケットもオンラインで買い、
すべてがあっという間に進んだ。
息子の転職活動は、職場内の根回しから始まった。
CVには、2-3名のReferee(照会先)の名前を載せなければならない。
求職した会社のショートリストに残ると、その会社はReferee に直接電話して、
息子の人柄、仕事ぶりなどを聞く。
どんなにかっこいいCVでも、Referee の評価が悪ければ、求職先は考えるであろう。
転職活動は、今の会社のスタッフには知られたくないし、しかし自分の同僚または上司
でいいコメントをしてくれそうな人物には、その旨を伝えておかなければならない。
今回は、会社でランチを食べてる時に、ブリスベンから息子のシニアの同僚に電話が
掛かってきた。
同僚は、息子に目の前で電話に答えていて、けっこういいコメントをしてくれたそうだ。
さてCVの話にまた戻る。
3月のある週末、息子は自分のCVをアップデートしてオーストラリアのメルボルンとブリス
ベンのリクルートのエージェントに送った。
そのあくる日から、オーストラリアのエージェントから電話がかかるようになった。
土日、夜でも掛かってくる。時差が2時間あるから、こちらの夜9時はあっちの7時で
ある。
静かなオークランドの我が家の暮らしでは、9時過ぎに電話がかかることはあまりないし、
ちょっとした騒動である。
オーストラリアのエージェントの中には、オークランドに支店があるところもある。
息子は、お昼休みや仕事の後、エージェントのオフィスに行き、面接や試験を受けた。
息子はエンジニア会社のドラフターなので、課題に沿ってキャドで図面を描くという
試験もあったそうだ。
面接、CVの選考の結果、エージェントは、求人を依頼している会社に連絡する。
登録人(息子)の就職が決まれば、エージェントはその会社から息子の年収の何%かを
受け取る。
息子は、仕事を探してもらえ、何も払う必要はない。
それにエージェントは、直接会社と喋る時のマナー、その会社の情報、ブリスベン
の暮らしなともアドバイスしてくれる。
めったやたらと自分でCVを送りつけるより合理的である。
具体的に会社が決まると、インターネットを使ってビデオインタビューや電話での
コンフェレンスで面接を受けた。
オーストラリアまで面接に行く必要もなく、双方の都合のいい時に話せて時間も節約できる。
今回息子は、メルボルン、ケアンズ、ブリスベンの3社から仕事のオファーを受け、
ブリスベンのA社に決めた。
A社は、航空券、4週間分の宿泊料、$5000の引越し代をだしてくれるそうだ。
息子は、今の年収から40%アップとなるので喜んでいる。
息子の仕事始めは、ブリスベン空港の拡張プロジェクトだそうだ。
今回の息子の就職の鍵は、そのプロジェクトに必要なArchicadの新しいプログラムで図面
を描けることであった。
A社からは、A社のメルボルンオフィスにも行って、そのプログラムを教えてほしいと言われ
ているそうだ。
期待されすぎると困る、と息子は言っていた。
今の会社でも大学新卒の一年生なのにである。
今はコンピューターの時代で、経験のある中年より、まだ頭の柔らかい、新しいプログラム
を使いこなせる若者のほうが重宝されるようだ。
うちの息子だけでなく、ニュージーランドの優秀な人材が海外に流出している。
ニュージーランド人にとって、ビザのいらないオーストラリアは気軽な転職先である。
飛行機でわずか2時間、高い賃金、所得税の安さ、福利厚生の充実は、ニュージーランド
人にとって魅力である。
おおまかに言うと、平均の労働者の所得税がニュージーランドで33%であるのに対し、
オーストラリアでは16%である。
年金は、ニュージーランドでは会社が4%、本人4%負担であるの対し、オーストラリアで
は、年金は8%全額が会社負担で、給与に上乗せされる。
ニュージーランドでは去年、年金制度Kiwisaverが始まったばかりで、先行きに不安感があ
る。
オーストラリアでは年金制度がすでに確立しているので、どうせ働くのなら、老後の安定し
た収入の得られるところと思うのは当然である。
この息子の転職活動にはおまけがあった。
今週月曜日に退職届けを上司にだしたところ、会社側はまさか息子が辞めるとは思ってい
なかったので大変困惑したそうだ。
そこでオファーをだすので、一日待ってくれと言われた。
火曜日に息子の会社は、メルボルンオフィスでの雇用で今より1万5千ドルの給与増額で
オファーしてきた。
オークランドの今のオフィスでは、今以上は給与は上げられないそうだ。
しかしながら、このオファーはA社には及ばないということで、息子は転職を決意した。
私達一家は、15年前夫の転職に伴って、誰も知り合いのいないオークランドに移住してき
た。
その時に比べたら、息子の今回の引越しなんて簡単なものである。
若者一人ならどうにでも、ブリスベンで暮らして行けるであろう。
小学生からのニュージーランドの教育で、英語も問題ではない。
スーパーでは同じ物が売ってるし、生活もさほど変わらないだろう。
しかし、息子は不安と期待でいっぱいである。
5月から夫婦だけの生活になる。
子供はいつかは巣立っていくものとは思っていたが、なんだかさみしい。
私の友人は、これから食費が節約できていいねとか、ブリスベンに息子に会いに行くついで
ゴールドコーストとか遊びに行けるからいいじゃないという。
幸いに娘一家が近くに住んでいるし、孫もしょちゅうやってくるので、これからはジジババ
に専念しよう。
うちの息子が転職してブリスベンに行くことになった。
息子は生まれて初めて、家を出て行く。しかも外国、オーストラリアである。
24歳の息子の旅立ちだ。
大学を卒業して、今の会社に就職しまだ1年余りというのに、もう転職する。
3月なかばに、リクルートのエージェントにCV(履歴書)を送って、仕事が決まる
までわずか3週間。あれよあれよという間に決まった。
コントラクトにサインしてメールで送る、チケットもオンラインで買い、
すべてがあっという間に進んだ。
息子の転職活動は、職場内の根回しから始まった。
CVには、2-3名のReferee(照会先)の名前を載せなければならない。
求職した会社のショートリストに残ると、その会社はReferee に直接電話して、
息子の人柄、仕事ぶりなどを聞く。
どんなにかっこいいCVでも、Referee の評価が悪ければ、求職先は考えるであろう。
転職活動は、今の会社のスタッフには知られたくないし、しかし自分の同僚または上司
でいいコメントをしてくれそうな人物には、その旨を伝えておかなければならない。
今回は、会社でランチを食べてる時に、ブリスベンから息子のシニアの同僚に電話が
掛かってきた。
同僚は、息子に目の前で電話に答えていて、けっこういいコメントをしてくれたそうだ。
さてCVの話にまた戻る。
3月のある週末、息子は自分のCVをアップデートしてオーストラリアのメルボルンとブリス
ベンのリクルートのエージェントに送った。
そのあくる日から、オーストラリアのエージェントから電話がかかるようになった。
土日、夜でも掛かってくる。時差が2時間あるから、こちらの夜9時はあっちの7時で
ある。
静かなオークランドの我が家の暮らしでは、9時過ぎに電話がかかることはあまりないし、
ちょっとした騒動である。
オーストラリアのエージェントの中には、オークランドに支店があるところもある。
息子は、お昼休みや仕事の後、エージェントのオフィスに行き、面接や試験を受けた。
息子はエンジニア会社のドラフターなので、課題に沿ってキャドで図面を描くという
試験もあったそうだ。
面接、CVの選考の結果、エージェントは、求人を依頼している会社に連絡する。
登録人(息子)の就職が決まれば、エージェントはその会社から息子の年収の何%かを
受け取る。
息子は、仕事を探してもらえ、何も払う必要はない。
それにエージェントは、直接会社と喋る時のマナー、その会社の情報、ブリスベン
の暮らしなともアドバイスしてくれる。
めったやたらと自分でCVを送りつけるより合理的である。
具体的に会社が決まると、インターネットを使ってビデオインタビューや電話での
コンフェレンスで面接を受けた。
オーストラリアまで面接に行く必要もなく、双方の都合のいい時に話せて時間も節約できる。
今回息子は、メルボルン、ケアンズ、ブリスベンの3社から仕事のオファーを受け、
ブリスベンのA社に決めた。
A社は、航空券、4週間分の宿泊料、$5000の引越し代をだしてくれるそうだ。
息子は、今の年収から40%アップとなるので喜んでいる。
息子の仕事始めは、ブリスベン空港の拡張プロジェクトだそうだ。
今回の息子の就職の鍵は、そのプロジェクトに必要なArchicadの新しいプログラムで図面
を描けることであった。
A社からは、A社のメルボルンオフィスにも行って、そのプログラムを教えてほしいと言われ
ているそうだ。
期待されすぎると困る、と息子は言っていた。
今の会社でも大学新卒の一年生なのにである。
今はコンピューターの時代で、経験のある中年より、まだ頭の柔らかい、新しいプログラム
を使いこなせる若者のほうが重宝されるようだ。
うちの息子だけでなく、ニュージーランドの優秀な人材が海外に流出している。
ニュージーランド人にとって、ビザのいらないオーストラリアは気軽な転職先である。
飛行機でわずか2時間、高い賃金、所得税の安さ、福利厚生の充実は、ニュージーランド
人にとって魅力である。
おおまかに言うと、平均の労働者の所得税がニュージーランドで33%であるのに対し、
オーストラリアでは16%である。
年金は、ニュージーランドでは会社が4%、本人4%負担であるの対し、オーストラリアで
は、年金は8%全額が会社負担で、給与に上乗せされる。
ニュージーランドでは去年、年金制度Kiwisaverが始まったばかりで、先行きに不安感があ
る。
オーストラリアでは年金制度がすでに確立しているので、どうせ働くのなら、老後の安定し
た収入の得られるところと思うのは当然である。
この息子の転職活動にはおまけがあった。
今週月曜日に退職届けを上司にだしたところ、会社側はまさか息子が辞めるとは思ってい
なかったので大変困惑したそうだ。
そこでオファーをだすので、一日待ってくれと言われた。
火曜日に息子の会社は、メルボルンオフィスでの雇用で今より1万5千ドルの給与増額で
オファーしてきた。
オークランドの今のオフィスでは、今以上は給与は上げられないそうだ。
しかしながら、このオファーはA社には及ばないということで、息子は転職を決意した。
私達一家は、15年前夫の転職に伴って、誰も知り合いのいないオークランドに移住してき
た。
その時に比べたら、息子の今回の引越しなんて簡単なものである。
若者一人ならどうにでも、ブリスベンで暮らして行けるであろう。
小学生からのニュージーランドの教育で、英語も問題ではない。
スーパーでは同じ物が売ってるし、生活もさほど変わらないだろう。
しかし、息子は不安と期待でいっぱいである。
5月から夫婦だけの生活になる。
子供はいつかは巣立っていくものとは思っていたが、なんだかさみしい。
私の友人は、これから食費が節約できていいねとか、ブリスベンに息子に会いに行くついで
ゴールドコーストとか遊びに行けるからいいじゃないという。
幸いに娘一家が近くに住んでいるし、孫もしょちゅうやってくるので、これからはジジババ
に専念しよう。
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