「それにしても、窓からなんて、いつでも会えるね!」
とBが昼の調子で言うとCが
「気紛れというか向こうの都合だから、いつ来るかなんて分んないよ。」
と答えるがお構いなしのトーンで
「でも、今日も来そうなんでしょ!」
というとBは対照的に悲観な感じで
「来てもおかしくない・・・だけ。いつだってアポなし。」
と返答するCは続けて、
「それにしても、どうして私へのプレゼントと思うわけ?」
以降、BとCの意味不明なワードも交ってくる感じで
「驚きや恐れといた負の感情ではなく、積極的に置かれたモノ、すなわちプレゼント」
「やっぱり急いで逃げた的な消極的な可能性を完全に否定できないよ
そもそも私が何かを貰う積極的な動機、理由、心理、気持ちがあるなんてことは・・・」
「あるんじゃないかな。それより、貰う側の気持ちが大事。プレゼントだったら嬉しくないの?」
「そうであれば嬉しいよ。だけど、さっきも言ったけど、(強い)動機や気持ちがあるなんて考えるのは希望的観測過ぎるよ。」
二人の会話が聞こえてくる。ずっとこのような感じなのか勉強のキリが付いたのか定かではないがやはり昼の内容っぽく、立ち聞きの続行を選択するDにとって意味不明の度合いは深まるばかり。
するとCの部屋の窓の外でカタっと大きくない音が(した)。窓はドアの反対側だからその音は部屋を挟んだDの耳に随分小さかったはずだが届いた様子。
部屋の中のBとCが音のする直前から会話を止めていたこともDに聞こえた一因だろう。Cが窓を開けに立つと呼応するように再びカタっと音がしたがそれはDには聞こえてなかったかも(しれない)。
BとCとDの三人は中高一貫校に通っている生徒たち。数年前にできた新設の公立であるが伝統ある私立と地元の(何かと)中堅の公立がくっついた学校で新しい割には全国的知名度も低くない。
旧私立時代からある校舎や寮は郊外にあり比較的緑に囲まれた静かな環境で教育の場として人気がある(のも頷ける)。寮は敷地の隅にあって部屋の窓を開けると小高い丘まで続く林と直結。
そして今、自宅生のBが学校帰りに寮生のCの部屋にテスト勉強に来てて、小卓の上には本やノートが並び、隙間にはお菓子とお茶もあったりする。
ちなみに部屋のドアの前にはCのクラスメイトで席が前のDが立ち聞き中。
窓を数センチ(メートル)ほど開けて卓にもどるC。見えていないDはBとCの会話が途切れたので異性らしきが来たのかもとより耳を澄ます。
古いドラマみたいに窓に投げた小石を合図に窓が開けられ、林の茂みに隠れているスマホといった携帯端末を持っていない異性のティーンエイジャーが人気のない隙に(二階の)窓から入ってくる様子をやや無理を感じつつ想像してしまうD。
(勝手に想像するだけのDはさておき、)Cの部屋の窓の内側には柑橘類の小木の鉢が三つ並んでいる。
寮に入って初めての初夏、同じく実家を離れて一人暮らしの姉が品種名の分からない夏蜜柑を送ってくれて、幾つかの果実から出てきた種を気紛れに蒔いてみたのが切っ掛け。
食べ物の空き容器に土を入れ、一カップに一粒ずつ。それらを窓の手すりに並べて置き、時々、お湿り程度に水をやる。ある夏の暑い夜の翌日、幾つかのカップから芽が出てきた。それから芽が出たカップの底に穴を開け、それらが大きくなり、少し大きな鉢に移され、部屋の窓際に置かれてる。
何かが窓の手すりに近づく気配。
数センチ開いた窓から手すりにCが設けた止まり木の一部が見えている。
最初とほぼ同じカタっと。止まり木に止まった時の音。開いている分、音ははっきり聞こえる。
今度は窓越しの影ではなく、一羽の鳥が止まったのを二人は直視で確認。雀より少し小さいサイズ。
ドア越しのDにも幾分音量アップして小さめな音は聞こえてる。再び小石か、超忍び足か。
・・・そもそも窓から誰かについてDは好奇心・・・風紀的問題視(ルール違反の現行犯を)・・・
というか共犯者か・・・とにかく糾弾するつもりはなく穏便に済ませたいと考え・・・
の心境が再び起こり衝動だろう、わずかだったドアの隙間をそっと広げ、DはCの部屋に吸い込まれる。
つづく
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