穏やかな夜を過ごしています。このような時間があることに感謝いたします。
読んだ本の感想を書きます。
早瀬耕さんの小説「未必のマクベス」を読みました。
早瀬耕さんの本を読むのは初めて、マクベスは読んだことない、未必という言葉は知らない。という状態だから、何が始まるのだろうとドキドキしながら読み始めた。
舞台はアジア、主に香港であと少し東南アジアと日本が出てくる感じでした。主人公は日本人です。IT系の大手企業で働く男性が主人公。電子マネーに使われる暗号の利権ゆえに、殺人や行方不明が発生している。
その事件に巻き込まれながら、30代の主人公が高校時代の初恋の相手に再会しようとしていく。
うー、設定や人物の配置には無理がある気がする。主人公の初恋相手は、自身の命を守るために、美容整形手術をして、声も変えている。だから主人公は一緒にいても初恋相手だとわからない。いや、そんなことってあるのだろうか。わかる気がする。
それとも、スパイ小説のように、一定の訓練が施されれば、かつての友人さえあざむけるほどになるのかしら。
しかしですね。この小説、気に入りました。自身の思い出も触発されるし、読んでいて面白かったです。なんというか、設定こそワールドワイドだけど、主人公の心象風景を綴るというのがテーマで、そこに入り込むと、読者も自身の世界を刺激される気がする。
設定が大きいのに対して、主人公が大切にしているのが自分の思い出の初恋という、なんというかマクロとミクロが融合している感じがすごいよかった。
主人公の友人、通称バンコ―が、無意識のうちにマクベスのストーリーを再現しようとしてしまう、囚われているところもよかった。
わかる気がする。なんとなく、嫌だなあとおもいながら、かけられた呪文を再現してしまうことってありますよね。だからこそどういう人たちと出会っていくか、一緒にいるかってとても大切な気がする。
ちなみに「未必」とはある結果が来ることを積極的には望まないけれど、まあ別にそうなってもいいかなあとおもっている状態だそう。
「未必の故意」という言葉で使われることが多い。殺人だと、「絶対殺してやる」とおもって行動したわけではないけれど、「こうやったら相手は死ぬかもなあ、でもまあ死んでもいいかなあ」という感じでいたときのようです。
深い言葉だよね。いろいろ考えさせられる。あたしたちの人生で、自分に対してこうやってしまっていることってけっこうある気がする。
「よくない結果が来るかもなとおもいつつ、そのままにしてしまう」、あるよね。ちなみに、最近の社会ではこういうのを「自己責任」と言っているような気もするけれど、あたしは個人的には「自己責任」という言葉は好きじゃないです。うまくいえないけれど、なんというか、もうすこしあったかくいたい。
ちなみに「未必のマクベス」は数学がキーワードになっているのだけど、それはちょっと難しくて迷子になってしまい、やっぱり数学の勉強したいなあとあらためておもったのでした。
ではまた
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