村山由佳さんの小説「天翔る」(講談社文庫)を読んだ。
天翔る (講談社文庫) | |
村山 由佳 | |
講談社 |
面白かった。
村山由佳さんの小説を読むのは初めて。お名前をどこかでお見掛けすることはとても多く、それだけで満腹になってしまっていた。・・・なんとなく勝手に知っている気になったのでしょう。すいません。
だけど読書交換会にいらした方が紹介してくださり、読んでみたくなったのだ。その方は居場所つくりに興味がある方で、この小説はそういうテーマであるとおっしゃっていた。
読書交換会やもくもくアート会をやったり、絵を展示したり、ある意味あたしも居場所を求めているわけであり、なんとなく共感できそうというか、ヒントをもらえる気がした。
「天翔ける」の主人公はおそらく3人。不登校の小学生「まりも」、子ども時代に性虐待を受けていた看護師「貴子」、そして挫折経験をもつ馬牧場主「志渡」。
志渡の牧場の常連であった貴子が、まりもを志渡の牧場に連れていく。馬を気にいったまりもは学校の代わりに牧場に通うようになる。そののち、まりもはエンデュランスと呼ばれる馬術競技に参加するようになる、という話です。
エンデュランスとは、馬に乗って公道(山などの道なき道を含む)を長距離走る競技。馬の健康状態が重視され、馬は途中のチェックポイントや完走後に心拍数をはじめ体の状態をチェックされる。馬の体調が悪ければその時点で失格となる。
勝者がたたえられると同時に、全完走者のなかでもっとも馬の状態がよかった人もたたえられる。そして馬の状態がよかった人の称号のほうが勝者よりも高貴とされる。
エンデュランス、知らなかった。検索すると、日本でもエンデュランスが開催されている様子。けれどもこの小説(文庫版2015年)は、日本にはまだエンデュランス用のコースが存在しないという設定で書かれていたよ。
小説の内容も気に入ったし、共感した。個人的には、勝つことは1位になることではなく完走することだという価値観にジーンときた。人生にも同じことがいえるとおもっている。
自身の人生を楽しむと同時に、周りのすべての人の人生にエールを送りたい。
ほんわかする小説だったよ。あらゆる性別世代年齢が一緒に読んで感想を語り合えう気がする。家族で読んで感想を言いあうと一家団欒になりそうな感じ。
村山由佳さんの小説、また読みたいな。
文章が上手で、528ページを飽きることなく終始楽しみながら読ませていただいた。小説の内容も重要だけど文章がうまいかどうか、個人的にはけっこう重要な指標もしれない。・・・あたしが「うまい」「下手」を決めるのも不遜だけど、そうおもう。
先だって紹介した「切羽へ」も文章がうまかった。内容はあまり共感できなかったけれど、作者の文章の海に浸らせていただいて、読んでしまった。
⇒井上荒野「切羽へ」/小説、離島の恋愛小説 書かれない上品(山田詠美)
文章の上手な小説を読み終わると、気分がなんとなくゆるやかになっている気がする。
ではまた
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