つぶつぶタンタン 臼村さおりの物語

身体の健康と無意識のパワーへ 癒しの旅~Have a Beautiful Day.~

田口ランディ「モザイク」、小説の感想 スピリチュアルと渋谷と時代の空気感

2019-09-10 23:25:33 | 本の感想/読書日記

読書日記。

田口ランディ著「モザイク」 (幻冬舎文庫)を読んだ。

モザイク (幻冬舎文庫)
田口 ランディ
幻冬舎

記憶にある限り、田口ランディさんの小説を拝読するのは初めて。本当かな? 名前だけは存じあげていたから、実は読んだことがあるのかもしれないと自身の記憶力をちょっと疑っておるよ。

面白かった


話の本筋とはあまり関係ないのだけど、世界を分解して、再構成するというような記述が興味深かった。

数か月前、第一線で活躍されるある抽象作家さんの個展にたまたま伺った際、とても興味深い絵だったので話しかけた。「こういう風にみえるのですね?」と。

するとその方は「いや見えてはない」と。「何物でもないものを描いている。世界を分解して、そして何物でもないものを作り上げる感じ」とおっしゃっていた。

なるほどなーとおもい、その発言が心のどこかにある。あたし自身はどちらかというと見えたままに描いているので、その説明が興味深く、ずっと印象に残っている。

この「モザイク」はそれを深める意味で興味深かった。


「モザイク」は、スピリチュアル的な世界を描いた小説だった。

主人公は移送屋の女性ミミ。移送屋とは、精神的に病んでしまった人物を、そのご家族の依頼を受けて、精神病院まで連れていく職業。ひきこもっている人を家族の代わりに説得して連れて行く。なかなか困難そうな職業。

ミミは武術家である祖父に育てられたため、体の使い方がうまい。体をみて人をみる。その特徴が今の職業にも生きている。自衛隊に入隊し、退職。その後、看護師免許を取得したという移送屋にぴったりのバックグラウンドもある。

ミミは、ある青年を移送していた際、その青年に逃げられてしまう。どうも青年は渋谷にいるらしい。渋谷にいる青年を探す過程で、さまざまな出会いや、スピリチュアル的な出来事が起こる。

という展開。


渋谷は漢字に「谷」という字が使われているように、水と縁が深い。渋谷駅のすぐそば、地下を水が流れているらしい。
そういえばあたしが以前住んでいた家も、目の前に遊歩道があったけれど、その地下は川だった。埼玉でさえ川が地下にされているのだから、東京都内、しかも大都会渋谷はうん、絶対地下にしていそう。

田口ランディさんは執筆にあたり、実際にその地下の川を見学されたらしい。渋谷の喧騒に下にある、静かな闇の世界。

全体的にスピリチュアルな描写が多かった。田口ランディさんご自身は、あとがき(追記)で、今ならもう少し違う書き方をするけれどそのときはスピリチュアルを書きたかったんだとおもう、みたいなことを書かれていた。

そのときその瞬間の時代の空気感だからこそ生まれる作品ってあるんだろうね。

ではまた

月2回、東京都豊島区池袋で、読書交換会をやっています。人にあげても差支えがない本を持ち寄り交換する読書会です。
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臼村さおり twitter @saori_u
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