有言実行三姉妹シュシュトリアンの24年越しの追っかけ視聴。1993年8月8日放送の第30話は「涼電話の夏」です。
暑い、暑い、暑い夏。猛暑の中帰宅した山吹家の三姉妹も、なにはともあれ、冷たい牛乳に手を伸ばします。こういうときって、アイスとかジュースとかそういうのを欲するところなんじゃないかと思うんですけど、牛乳もアリなんですかね? ダメって訳じゃないですけど、なんかこう、イメージ的にね。
そこへチャイムが鳴り、フライドチキン男がやってきます。うんざりした顔で出迎える三姉妹ですが、今日はお酉様からの指令ではなく、お中元を持ってきたのでありました。それは鳥籠に入っているダイヤル式の電話機、『涼電話』です。サックスブルーの機体色が涼しさを演出しますね。ダイヤルの真ん中には鈴の絵が描かれています。
この涼電話、受話器がプカりと浮かんで、虫の音のような涼やかな音を発するのです。こんなものをどこで調達したのかといえば、公園にいた、麦藁帽子をかぶったヒゲのおっちゃんから。このヒゲのおっちゃんは、檻の中にたくさんのダイヤル式電話機を入れていて、涼電話として無料で配っていたのです。どうやら荒木も、ヒゲのおっちゃんから涼電話を貰い受けていたようです。
タダで貰ったものかと呆れる花子ですが、今のところは特に悪いこともなさそうです。雪子に誘われて、一緒に図書館へと出かけていきました。
一人残った月子は、涼電話の籠を眺めながらニヤニヤ。どうやら月子は、涼電話のことが気に入ったみたいですね。
荒木家では、篠山、加納、荒木の三人が、涼電話の音を楽しんでいます。しかし、ピピピピピ……、と鳴り響く電話に、荒木の母が慌てて駆け寄ってきます。
荒木母は、「こんなところに電話入れちゃダメじゃない!」と言いつつ、籠を開けてどこぞへ電話をかけようとします。あれ? 電話が鳴っているから、それに出ようとしていたんじゃないの?
ダイヤルを回すのですが、これは涼電話。電話をかけることはできません。荒木たちに「風流でしょ?」なんていわれますが、荒木母にしてみれば、勝手に鳴り出す電話が気持ち悪いようで、荒木に捨ててくるよう命じます。
まあ、気持ち悪いというのはわからないでもないけど、それ以前に、ひっきりなしに電話の着信音が鳴っていたら、間違えやすくていけないよね。山吹家の涼電話は虫の音みたいな音だったからまだいいけど、荒木家のは普通の電話の着信音だしね(黒電話的な「ジリリリリリリン」という音じゃなくて、電子音っぽいのはなんでだろう?)。ちなみに、荒木家の涼電話、ダイヤルの真ん中には温泉マークが描かれていました。これ、何かの意味があるのかな?
やむなく荒木は、ゴミ捨て場に涼電話を捨ててしまいます。
「お前も、捨てられたのか!?」
その捨てられた涼電話を、涼電話を配っていたおっちゃんが発見して嘆きます。ひざまずいて、愛おしそうに涼電話を抱きかかえるおっちゃん。そしてそれに応えるように、悲しそうに鳴く涼電話。おっちゃんが引いていたリヤカーには、おそらく同じような運命を辿ってきたのであろう涼電話たちが、他にも大勢積まれています。
リヤカーを引きながら、おっちゃんはさびしそうにその場を後にしていきます。うーん、せつない。この頃って、ダイヤル電話からプッシュ式の電話にほぼ切り替わってきた頃でしたっけ? ウチにあった黒電話も、この頃にはもうプッシュ式になっていたような気がします。
その頃山吹家では、月子がまだ、飽かず涼電話を眺めていました。しかし、鳥籠の中に閉じ込めておくのがかわいそうになったので、逃げ出さないよう全開になっていた窓を閉めて、せめて家の中だけでも自由に動けるように鳥籠から開放します。ついでに、受話器に赤いリボンまで巻いてあげたりなんかしたりして。「窓を開けていたっていうことは、クーラーつけてなかったんだ」っていうのが、このシーンを観て一番気になったポイントでした。現代だったら、間違いなくクーラー効かせているよね。
「鈴ちゃん、自由に飛んでもいいのよ」
いつの間にか、「鈴ちゃん」なんて名前まで付けていますね。鈴ちゃんは嬉しそうに飛び回り、花だの椅子だのカーテンだのにとまって、涼やかな音で鳴くのでした。
しかしそこへ恵が帰宅します。恵が暑い暑いと言いながら締め切られた窓を全開にしていくと、鈴ちゃんが窓から逃げ出してしまいました。慌てて鈴ちゃんを追いかける月子。鈴ちゃんは田んぼの真ん中の農道やら、割と大きな川やらを渡って、山のほうまで飛んで行きます。七面町って、意外と近くに自然があふれているよね。
鈴ちゃんを追って月子がたどり着いたのは、『すいじん』という温泉旅館。しかしこのあたりで、鈴ちゃんを見失ってしまいました。やむなく月子は、その場を後にします。
その旅館の入り口で水を撒いているのは、涼電話を配っていたおっちゃんですね。月子のほうをちらりと見ながらも、さして興味なさそうに作業を続けていきます。
しかしそこに、鈴ちゃんの鳴き声が聞こえてきます。見ると、植え込みの影に鈴ちゃんの姿がありました。「お前も帰ってきたのか」と、鈴ちゃんに手を伸ばすその姿は、悲しそうでもあり、嬉しそうでもあります。
「さあ、お風呂に入って、ゆっくり休もうね」
おっちゃんは鈴ちゃんを露天風呂に浮かべます。そこには他にも、多くの黒電話たちが湯に浸かっています。……って、いいのか、電気製品をお湯に浸けちゃって!
おっちゃんは、ここにいる電話たちと出会ったときのことを思い出していました。コードレスホンの時代になって捨てられたダイヤル式の電話たち。おっちゃんはその姿を、近代的なホテルに客を奪われて潰れかけている、この古い温泉旅館に重ねていたようです。
この美しい涼電話の音色を聞いてほしかった。おっちゃんの願いはただそれだけだったのですが、それさえ現代には不要のものとされてしまったのです。
一度ならず、二度までも人間に捨てられてしまった電話機たち。その無念の思いから、おっちゃんは涙を流します。
「NTT は何をしてるんだ!」
……いや、それは、怒りの向く方向がおかしい。しかしおっちゃんは、何もしてくれないNTT になり代わり、捨てられた電話たちの復讐を果たそうと決意するのでありました。
鈴ちゃんのことは諦めたわけでもないんでしょうけど、帰宅して、夕食の手伝いをする月子。しかしそこへ、篠山、加納、荒木の三人組がやってきます。三人とも、顔などあちこち怪我をしているようです。
「公園で遊んでたら突然、電話に襲われちゃって……」
「今も襲われてる!」
三人の話によれば、大勢の涼電話たちが、公園で人々を襲っていると言うのです。
まあ、結果的に間違ってはいないし、お話を進める上でも便利ではあるんですけど、こいつらの、何かあったらとりあえず山吹家にやってくる、という行動原理はどうなんでしょうね?
月子の手を引っぱって外に出てみると、空には編隊を組んで飛んでいく電話機たちの姿がありました。そして電話機に襲われていた人たちが、その後を追いかけていきます。
三人組と、月子もその後を追っていきます。この様子からして、一方的に電話機が人間を襲っただけではなく、人間側もそれなりに反撃に出ているようですね。この展開、第13話「好き嫌いのあるゴミ箱」を思い出させますね。無生物側も悪いんだけど、そこに人間のエゴも絡んでくると、なかなか勧善懲悪という割り切った話にならなくなってくるんですよねぇ。
電話機の編隊は、次第に山奥へ、月子が鈴ちゃんを追いかけていった、温泉旅館の方へと飛んで行きます。しかし『すいじん』の玄関先で、またもや電話たちを見失ってしまいました。
「いかがなされました?」
そこへおっちゃんが現れます。
「私たちは、電話に襲われた者です」
「タチの悪そうな電話を見かけませんでした?」
冷静に考えると『何言ってるんだ?』感が満載な台詞なのですが、全てわかっているおっちゃんは、「見かけませんでした」としれっと返答。まあ、おっちゃんからすれば、電話たちが悪いわけではないので、正直な答えなのかもしれませんけどね。
おっちゃんは人々がボロボロになっている様子を見て、温泉に入っていかないかと提案します。無料という言葉に釣られて、涼電話に襲撃された人たちは、みんな中へと入っていきます。
しかし、月子だけは、どうもおっちゃんを信用しきれないようです。鈴ちゃんを見失ったのも、この温泉旅館の辺りでしたしね。
ゆっくりと温泉に浸かる人々。ここの温泉は井戸水をボイラーで沸かしているそうですが、実際のところ良い湯のようですね。しかし荒木は、入浴中もいつもの青いキャップと眼鏡をつけたままです。眼鏡はまだしも、帽子は取れよ。
おっちゃんは一人、ボイラー室に入って行きます。その様子を影から見つめる月子。するとおっちゃんは、薄ら笑いを浮かべながら、ボイラーのバルブをひねって温泉の温度を上げていきます。
お湯が熱くなってきたので、みんな温泉から上がろうとするのですが、おっちゃんがロープを引っ張ると仕掛けが作動し、上から網が降ってきてみんな温泉から出られなくなってしまいました。
「もっと熱がれ、もっと熱がれ。お前たちに捨てられた、電話たちの苦しみを思い知るんだ!」
アカン、完全に傷害罪だ。おっちゃんの真の目的を知った月子ですが、その背後には多くの電話たちがプカプカと浮かんでいます。電話たちに囲まれたことに気付いた月子は、慌てて旅館の中へと逃げこみ、とある部屋に立て籠もりますが、ドアの外から電話機たちがゴツンゴツンとぶつかってきます。電話たちの侵入をテーブルで押さえてなんとか防ごうとしますが、ドアだけでなく、壁をぶち破って電話たちは入り込もうとしてきます。相手は電話機ですけど、なに気に結構スリリングで恐怖感のあるシーンですね、この辺り。
遂に、壁や窓を突き破って電話機たちが部屋になだれ込んできます。いや、電話機がぶつかっただけで破れる壁って、ちょっと安普請過ぎませんかねぇ……。
どうやってかは不明ですが、月子はなんとかその囲みを破って外へと逃げ出しますが、電話機たちは後から後から迫ってきます。
逃げる月子の前に、旅館のおっちゃんが立ちふさがります。
「私は電話が好きだ。電話も私が好きだ」
「だからなんだって言うの?」
至極もっともな月子のツッコミですが、おっちゃんはダイヤルを回すようなポーズで、まるでオーケストラの指揮者のように、電話機に月子を襲わせます。
なんとか電話機の攻撃をしのぎながら、月子はバルミラクルで雪子と花子に連絡。しかし遂に、月子の首にコードが絡みつき、絶体絶命のピンチを迎えてしまいます。
しかしここで、月子の危機を救ったのが、鈴ちゃんでした。月子に絡みつく電話に体当たりをして月子を救い出すと、襲い掛かる黒電話軍団に、敢然と立ち向かうのでありました。
ただ、残念ながら多勢に無勢。鈴ちゃん一人では黒電話の集団に太刀打ちすることはできないのであります。
ここのピンチに、ようやく到着した雪子と花子。月子もなんとか黒電話を振り払って、シュシュトリアンに変身です。
「乙女盛りに命をかけて」
「風に逆らう三姉妹」
「花と散ろうか、咲かせよか」
「「「有言実行三姉妹、シュシュトリアン!」」」
「NTT曰く、『電話料金は、お早めにね』」
……いや、これ、今回の話に何の関係もないでしょ。電話料金はお早めに、と言われても、最近はほとんど自動引き落としでしょうし。これも時代の流れですかね。
「温泉旅館の主人、電話料金を払わないで、電話を操るのはいけないことです」
いや、この雪子の言い分もおかしい。電話回線を使用するなら電話料金を払わないといけないけど、今回は電話機本体を操っているだけですから。NTT からのレンタル品ならまだしも、今回の黒電話は拾い物だし。普通に人を襲ったことを咎めればいいのにね。
「いいのだ! 私はかつて、NTT 株で大損したことがある」
なのに、それに対するおっちゃんの言い訳が酷すぎる。「言い訳になっていません!」という月子のツッコミが正論過ぎます。言い訳が酷いから、そもそもの雪子の咎め立てが正当化されちゃいそうですよ。
まあ、元々おっちゃんの方に正当性なんて無いので、最後は逆上するしかないんですけどね。黒電話とシュシュトリアンのバトル開始です。
割と人間以外の敵と戦うことも多いシュシュトリアンですが、電話機とはちょっと戦いにくそうですね。蹴ったり、叩きつけたりはできますけど、いちいちコードが絡み付いてきて、動きを封じられてしまいます。
しかしそこはシュシュトリアン。花子が多くの電話機をひきつけると、猫姫戦で特訓した「花乱れ打ち」で、電話機を次々と撃ち落していきます。ああ、これ、一回こっきりの技じゃなかったんだ。
更に、絡まって一体となった電話機を掴んだ月子が、「月の輪返し」でぶんぶんと振り回し、ハンマー投げのように放り投げます。あれ? 「月の輪返し」って、猫姫のときはぐるぐる回転する巴投げみたいな技だったんだけど……。まあ、電話機相手に巴投げっていうのも無理があるんだけど。
そして飛んできた電話機に前転宙返りしながらの飛び蹴りをかます、雪子の「雪崩し」で締め。よかった、「雪崩し」は前と同じ技だ。
最後は「有言実行・紅つむじ風」で、電話機を吹き飛ばします。まあ、覚えたばかりの必殺技のオンパレード自体は特撮番組ではよくあることですけど、なんで前回のスイカの霊の時には、これらの技を使わなかったんだろう? 撮影順の問題?
慌てて逃げ出すおっちゃんですが、その前に、電話機に襲われた人々が現れます。なんとか熱い温泉から脱出できたようですね。木に登って逃れようとするおっちゃんをひきずりおろしてリンチにかけようかという勢いです。
しかしそれはシュシュトリアンによって阻止されます。紅のバトンを組んで「フラッシュ」と叫ぶと、白い煙が噴出して人々を吹き飛ばしてしまいます。
「あなたたちに、電話を愛する温泉旅館のご主人を殴る権利はありません」
月子はそう言いますけど……。まあ、殴る権利は無いだろうけど、怒る権利はあるんじゃないかなぁ。いらなくなった道具を捨てることは別に悪いことじゃないし、おっちゃんの主張は完全に逆恨みだし。
「電話たちは、ただ、『ありがとう』と言って欲しかっただけなんです……」
おっちゃんのこの主張も、あれだけ暴れた後で言われてもねぇ……。『ありがとう』と言って欲しい相手に、何故、問答無用で襲い掛かるのか。鈴ちゃんを可愛がっていた月子に対してまで、何故、襲い掛かるのか。結局、感情に任せて暴れてただけじゃん。
それでも、悲しそうに鳴る黒電話に対して、篠山、加納、荒木の三人組が「ありがとう」と声をかけたのを皮切りに、みんなが「ありがとう」と声をかけていくと、黒電話たちは空へと飛び去ってったのでありました。傍らにいた鈴ちゃんも、月子の手によって、仲間たちの元へと帰されます。
電話たちは編隊を組み、いずれかの空へと飛んで行きました。
「どこへ行くのでしょう?」
ぽつりとつぶやいた雪子に対して、おっちゃんは答えます。
「夢の島でしょう」
これも時代を感じさせる言葉で、現在、夢の島は公園やスポーツ施設などになっていますが、かつてはゴミ処理場だったんですよね……、と思いきや、1978年には既に夢の島公園が開園しており、シュシュトリアンが放送された1993年には、とっくにゴミ処理場ではなくなっていたのでした。私も田舎者なので、どうしても「夢の島」=「ゴミ処理場」みたいなイメージばかりがあり、公園化されたのはつい最近だと思っていたのですが、実際には私が思っていたのよりもかなり昔だったようです。
その夜、山吹家では夕飯にそうめんを食べていました。英三郎がいないな、と思っていたら、その英三郎から「夕飯はいらない」と電話がかかってきます。仕事が忙しいんですかね。
今回の話で電話に対する感謝の念を頂いたのはいいけど、電話を受けるときに拍手を打って拝んでから受話器を取るというのは、ちとやりすぎじゃないですかね?
[次回予告]
「みなさん、次回のシュシュトリアンは、夏休み特別企画『シュシュトリアン名場面集』をお送りします」
「みんながもう一度みたい、あんな場面や」
「こんな場面、みーんなまとめて」
「「「見せちゃいまーす!」」」
「それは、私も出ているんですか? 台本、見せてください」
「次回の有言実行三姉妹シュシュトリアンは……」
「「「『山吹家・真夏の悪夢』。お楽しみに。見てねー」」」
「台本見せてください」
「ダメ」
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