先日まで社会思想社・現代教養文庫、イアン・リビングストン著のゲームブック、「トカゲ王の島」をプレイしていました。そのときは途中で死んでしまったのですが、気にせずそのままプレイを続行して、体力-50、運0くらいでトカゲ王の下までたどり着き、結局アイテム不足でトカゲ王を倒すには至りませんでした。
これ以降、「トカゲ王の島」のネタバレみたいなものも含まれています。ご注意ください。
第一印象としては、とにかく敵が強いというのが挙げられます。私が遭遇しただけでも技術点9から11くらいの敵がゴロゴロ出現しましたし、そういう敵は体力も同じくらいの数字を持っているので、戦闘のたびに大きくこちらの体力も削られてしまいました。雑魚も含めて、全体的に戦闘の回数も多かったような気がします。
今回のプレイではこちらの技術点が9と低めだったこともあって、削られた体力はほとんどが戦闘によるものだったと思います。デスパラグラフこそ少なかったのですが、戦闘へ至る選択肢は、確実に死へと近づく選択肢だったと思います。
技術点が7のキャラクターと12のキャラクターとでは、どうしてもゲームの質が変わってきてしまうんですよね。見える世界が違うとさえ言えると思います。FFシリーズの第1作目である「火吹山の魔法使い」ならば技術点7でもクリアできるかもしれませんが、7作目となる「トカゲ王の島」ではかなり厳しいのではないかと思います。シリーズを追うごとに難易度を向上させるためには、そういう方法論になるのも仕方がないのかもしれません。
そんなわけで、「トカゲ王の島」を楽しくプレイしたいのならば、技術点は11か12で始めるのがよいのではないでしょうか。感覚的には、技術点12ならば「盗賊都市」あたりよりも難易度は低くなるような気がします。
それから、運試しをする機会も多かったような気がします。運試しは危険を回避するために行うことが多いのですが、運試しは行うごとに運点が下がっていきますので、終盤のより危険度の高い場面ほど失敗しやすくなってしまうのです。序盤の運試しはむしろ終盤に向けて運のリソースを消費させるための手段のようにも感じてしまいました。
とにかくゲームとして数値的にシビアだったという印象が強いのですが、物語としては悪くなかったと思います。
屋外の冒険がメインということで、雰囲気は「運命の森」に似ていました。トカゲ男連中が多いのは当然ですが、野生の動物や野蛮人なども生息していて、島という閉鎖空間ではありましたが、変化に富んでいました。
一方で、物語の基本的な構造は、トカゲ王を倒すという大目標がありますが、まずは島内を探索して必要なアイテムを収集、呪術師の助言を受けて、最後に砦に乱入するということで、むしろ「盗賊都市」に近かったと思います。以前、「盗賊都市」における、ポート・ブラックサンドのパートと、ザンバー・ボーンの塔のパートの雰囲気の乖離を指摘しましたが、「トカゲ王の島」では雰囲気の一体化がなされていて良かったと思います。ちょっとトカゲ王自身はあっさり過ぎたかも知れませんけどね。
また物語の途中で、囚人の解放というイベントが挿入されたのも良かったです。FFシリーズはスタートからゴールまで緊張の連続なので、ともすると途中で疲れてしまうことがしばしばあるのですが、囚人の解放という達成感のあるイベントのおかげで、だれることなくテンションを維持することができました。
もったいなかったのはマンゴの扱いでしょうか。同行者がいるということで、それをゲーム的にどう処理するのか気になっていたのですが、序盤であっさりと死んでしまいました。FFシリーズにおける新機軸かとも思っていただけに、ちょっと残念でしたね。アイテム扱いでも構わないので、もう少しゲーム的に利用した方が良かったと思います。
まとめますと、デスパラグラフが少ない代わりに敵の能力値が高いため、難易度の割に地味な印象を受けますが、それだけに適切な技術点でスタートすれば適切なバランスでプレイできるゲームだと思います。物語的にも優れたものがありました。
リビングストンの作品を並べてみると、「死のワナの地下迷宮」だけは特殊ですが、徐々にゲームブックとしての完成度が高くなってきていると思います。後期シリーズになるとゲームバランスが破綻するらしいですけど……。
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スティーブ・ジャクソンの作品ほど、デッドパラグラフは多くないですけどね。
『トカゲ王の島』も『死のワナの地下迷宮』も、技術点が11以上ないと相当苦しいです。
また、『トカゲ王の島』は運試しもやたらと多いですが、
あるアイテムを見つければ運点は7より下がらなくなりますよ。
そのアイテムを入手するにはサイコロ運に助けられないと駄目ですが…
強い敵が出てくること自体は良いのですが、
問題はそれが面白さにつながるかどうかなんですよね。
TRPG とかならいろいろ工夫する余地もあるのでしょうが、
FF の戦闘は結局はサイコロ次第になってしまうので、
強い敵との連戦は無力感だけが募ってしまいます。
まあ、なんだったら敵を弱体化させちゃうとか、自動勝利にしちゃうとか、
自由にゲームバランスを調整できるのがゲームブックのいいところなんですけどね。
自分も“死神の首飾り”のリプレイを終わらせて、
次は“運命の森”をやりたいと思っています。
いずれソーサリーも…