雑居空間
趣味のあれこれを、やたらめったらフットスタンプ




 PCエンジン版の「グラディウス」をクリアしましたので、引き続き、双葉文庫のゲームブック「グラディウス 未知との戦い」をプレイしました。



 深い眠りから目覚めた俺を待っていたのは、まったく別の世界だった。
 その世界――グラディウス星系は、戦火に満ちていた。命なき殺戮機械や異形の怪生物などが動めいていたのだ。
 誰も名さえ知らぬ地球に帰るため、俺は戦闘を開始した。
 頼れるのは、天翔ける翼、最新鋭戦闘機ビックバイパーだけだ!
 様々な攻撃パターンを駆使し、熱き戦いが虚空に展開する。
 人気シューティングゲームから誕生したオリジナル・ストーリー。デジタル・スペースオペラの登場だ!!


双葉文庫「グラディウス 未知との戦い」表紙折り返しより



 主人公であるフレデリック・P・ウェラー(フレディ)は事故に巻き込まれ、未知の世界であるグラディウス星系に飛ばされてしまいます。その世界では地球人とよく似た性質を持つグラディウス人が、機械生命軍団バクテリアンと死闘を繰り広げていました。グラディウス人とバクテリアンとの戦争に巻き込まれながら、フレディは自分の元の世界である地球に戻るために奮闘するのでありました。

 冒頭には序章として、宇宙科学技術庁長官のモノローグがあります。そしてルール説明を挟み、プロローグ、そして主人公の乗機であるビッグバイパーの仕様・メカ能力の解説、敵メカの説明と続いていきます。
 今でこそ多くの作品を擁し、様々な歴史や設定が積み重なっているグラディウスシリーズですが、このゲームブックが刊行された1986年9月の段階ではまだ「グラディウス」と「沙羅曼蛇」しか出ておらず、舞台の背景についてはさほど詳細なものはありませんでした。それでも原作の設定から拾えるところは拾いつつ、コンピュータの暴走によるバクテリアン軍の誕生や、パイロット志望だったけど「行動が無謀すぎる」という理由で適正試験に落ちてしまった主人公の来歴、そして地球と関連がありそうでどこか異なるグラディウス世界に主人公が飛ばされるといったゲームブック版オリジナルの設定で、物語に厚みを増しています。そういった世界設定に加えて、敵味方合わせた詳細なメカ設定が畳み掛けられてきますので、メカ好き/SF好きな人なら、この段階でグラディウスの世界に引き込まれていくのではないでしょうか。本文もそうなのですが、全体的に80年代の日本SFの雰囲気が多分に漂っているんですよね。カバーイラストも加藤洋之(現:加藤龍勇)&後藤啓介ですしね。

 チェックシートにあるのは、体力ポイント、知力ポイント、アイテムリスト、行動力リストの4つ。体力ポイントは、体力/攻撃力など肉体面の能力。知力ポイントは、判断力/情報量など頭脳面での能力。アイテムリストは所持しているアイテムのリストで、行動力リストとは要するにパラグラフのルートの記録です。ゲーム上はあまり意味のない行動力リストを除けばパラメータは実質3つですので、随分少ないですね。戦闘などのルールも事前に説明はなく、必要があればその都度ゲーム中になんらかの指示があたえられることになります。
 なお、アイテムリストに関しては、アイテムを入手する描写はちゃんとあるのですが、<アイテムリストに○○を記入すること>などと明示的に書かれないことが多いので、記入忘れをしないよう注意しなくてはなりません。さらに、アイテムリストに含まれない、<○○と出会ったなら>といった分岐もありますので、話の展開はちゃんと追いかけておく必要があります。



 これ以降、「グラディウス 未知との戦い」のネタバレがそれなりに含まれています。ご注意ください。

 元はシューティングゲームですので、当然ビックバイパーに乗ってドンパチするシーンは見せ場のひとつです。ビッグコアやザブ、ダッカーといった原作でもおなじみの敵キャラが登場し、その挙動や攻略法など、原作を知っていればなるほどなぁと思わせるものもあってなかなか面白いですね。ただ、ビックバイパーでの戦闘といっても、攻撃するか回避するか、とか、どの武器を使って攻撃するか、などといった選択の連続になってしまいますので、ずっとビックバイパーに乗っていると、どうしてもゲームが単調になってしまいますし、なにより謎の解明など物語の進展もしずらくなってしまうんですよね。ですから、ダイナミックな戦闘はビックバイパーが担当しますが、敵の基地や要塞に侵入するなど、生身で情報収集したりするシーンも多くあります。って言うか、割合としてはむしろそちらの方が多いくらいですね。
 主人公のフレディは、そもそも異邦人であることに加えて、生来の無鉄砲で刹那的な性格からあまり他人に心を許さないのですが、話を進めていく中で徐々にその心境にも変化が見られてきます。敵が命を持たない機械生命であるだけに、その対比として、ヒロインのフィオナをはじめ、戦車隊のおっちゃんや謎のケイ素生物など、フレディと関わる人々の存在も印象的です。グラディウス星系やバクテリアンとは一体何なのか、地球とはどういった関係があるのかといったSF的な部分に、そこで生きる人たちとの交流というウェットな要素が加わることで、物語に深みが出ていると思います。

 ゲームとしては、パラメータの少ないシンプルなシステムの裏返しとして、選択ミスによる死亡が多くなっていますね。特に序盤から中盤にかけては、あまり情報が無い中での選択となりますので、ゲームオーバーにちょっと理不尽な感じを受けることは否めません。好意的に解釈すれば、見知らぬ世界なのだから情報が無いのは当然ですし、序盤だからやり直すも容易であると言えるかもしれませんけどね。
 中盤以降も不適切な選択による死亡はそれなりにあるのですが、その割合は徐々に減ってきます。代わりというわけでもないでしょうが、体力ポイントや知力ポイントが○○以上なら、とか、○○を所持しているなら、とか、その時々の状態による分岐が増えてきます。体力/知力ポイントは増減があるとは言え割と余裕はありますし、アイテムは取り損ねてもなんとかなるルートが存在するか、必須アイテムなら再取得の手段も残されていますので、終盤の方が死亡率は低くなっているような気がします。
 死亡率が高いのでけして難易度は低くないのですが、そのほとんどが選択ミスによる短手数での死亡ルートへの突入であり、フラグ踏み忘れによる手詰りはあまりありませんから、再プレイするのはそう面倒でもないでしょう(特に、指栞を駆使すれば)。その意味では割と親切設計になっていると言えるかもしれません。

 そういえば、体力ポイントは20からスタートして、怪我をしたりすると減っていくのですが、0になったら死亡とはどこにも書いていないんですよね。まあたとえ死なないことにしたとしても、体力ポイントが0以下になったら体力ポイントでのチェックはまず間違いなく失敗になるでしょうから、いずれにしろクリアできなくなっちゃう気もしますけどね。



 まとめますと、原作はそのままゲームブック化するのは難しいシューティングゲームながら、グラディウスっぽい要素を取り出しつつアレンジを加え、SFと人間ドラマを絡めてうまく物語を構成したと思います。死亡率は高くなっていますが、再プレイへの敷居は低く、サクサクとプレイすることができるのではないでしょうか。
 双葉文庫のゲームブックと言えば、あまり出来の良くないやっつけ仕事的な評価を受けることが多いのですが、本書に関してはしっかりと原作をリスペクトした上で、ひとつのSF作品としてきちんと組み上げられていると思います。実際、ファイティング・ファンタジーのSF系作品よりも、よほどSFとしてしっかりしているのではないでしょうか。双葉の作品の中でもかなり出来の良い部類に入ると思いますので、双葉文庫を敬遠している方にも、機会があればぜひプレイしていただきたい作品ですね。



コメント ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする


« グラディウス... 記事一覧画像一覧フォロワー一覧フォトチャンネル一覧 Clearing the ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。