あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
さて、今年、2017年は酉年。酉年といえば、何と言ってもシュシュトリアンです。今から24年前、二周り前の酉年である1993年1月10日に、不思議コメディーシリーズの最終作「有言実行三姉妹シュシュトリアン」の放送がスタートしました。
不思議コメディシリーズは1作目の「ロボット8ちゃん」からほぼずっと観てきました。「おもいっきり探偵団 覇亜怒組」、「じゃあまん探偵団魔隣組」まではボンクラ少年マインドを大いに刺激されていたのですが、アイドル路線に入った「魔法少女ちゅうかなぱいぱい!」辺りから、あまり観なくなっちゃったんですよね。ぱいぱいの頃には中学生になり、そういうのを観るのがこっ恥ずかしくなる年頃でもありました。
そんなわけでこの枠はしばらく観ていなかったのですが、数年後、たまたまシュシュトリアンの第1話を見かけてひっくり返りました。なんという奇天烈な設定! なんと強引な展開! そして麿赤兒の圧倒的な存在感! 私はあっというまにシュシュトリアンの世界に引きずり込まれ、毎週欠かさず視聴することを決意したのです。
残念ながら、不思議コメディシリーズはシュシュトリアンで最後となり、翌年からはアニメの枠となってしまいました。しかし、それゆえに、「有言実行三姉妹シュシュトリアン」は、わたしの中で特別な存在となりました。
シュシュトリアンは2007年に全話DVD 化されていて、そのときに全巻購入しております。そこで、酉年の記念に全話観なおすと共に、24年前の放送日に合わせて感想なんぞをちょこちょこと書いてみようかと思います。
そんなわけで、記念すべき第1話は「涙の妖怪・ザ・お正月」。
正月のお供え餅や松飾り、おせち料理などが、子どもを襲撃する事件が発生するという、しょっぱなから意味不明な展開が素敵です。しかも、鏡餅やおせち料理などが、そのまま物理的に飛んできて、物理的にぶつかってくる。まさに妖怪と呼ぶにふさわしい、わけのわからなさですね。
本作の主人公は、山吹家の三姉妹、雪子、月子、花子の三人。長女・雪子が帰宅途中に、三女・花子のクラスメイトである篠山、加納、荒木の三人組を見つけ、おどろかせようと物陰に隠れて、突然わっと飛び出すところから、物語は始まります。
しかし三人組は、近頃世間を騒がせている妖怪・ザ・お正月の話をしていたのでした。妖怪・ザ・お正月を写真に撮りたいなんてことを言っていたところに、突然人影が飛び出してきたものだからあわてて写真に撮ってみたら、その正体はクラスメートの姉・雪子。妖怪じゃなかったので、「つまんねーの」とそっけない反応をされてしまいます。
雪子も雪子で、「つまんない」と言われたことに対して腹を立てる。雪子は長女で三姉妹の中でも常識人っぽい立ち位置だったと思うのですが、高校生の行動として、どうなんだろう、これ?
ちなみに、篠山、加納、荒木の三人のモデルは、有名な写真家から名前をもらっています。モデルに準じて写真好きなので、いつもカメラを手にしています。基本的にはバカで突拍子も無いことをすることが多い彼らですが、話によってはボケ役だったりツッコミ役だったり、事件を起こす側だったり巻き込まれる側だったり、オールマイティーに活躍してくれます。いいキャラしてますよね。
その後、神社に立ち寄り、両親が仲良くしてくれるよう祈る雪子。そう、山吹家は両親のケンカが絶えない家庭だったのです。
しかしその雪子にも、突然注連飾りが襲い掛かってきます。なんとか逃げ切ることができましたが、妖怪・ザ・お正月に出くわしてしまいました。
雪子が帰宅しようとすると、両親のケンカが激しさを増してきたので、家から月子と花子が防災頭巾をかぶって避難してきました。月子いわく「夫婦戦争」だそうですが、父親の失言がきっかけとは言え、ヒステリーを起こした母親が一方的に暴れてるだけだから、戦争にはなら無そうですけどね。
三人はカラオケボックスへと避難。両親の不仲に悩む三姉妹を代表して、次女の月子が日野美歌の「氷雨」を熱唱していると、突然、カラオケ機から、麿赤兒演じるお酉様が登場します。
古来より干支には、その年の平和と幸福を守る義務があるのですが、お酉様はクリスマスから正月にかけてカラオケに熱中するあまり、カラオケ無しでは生きられない鶏肉になってしまっていたのです。
こんな態では酉年の平和と幸福を守ることは出来ない。そこで、山吹家の三姉妹に、お酉様に代わって酉年の平和と幸福を守ることを命じたのでありました。その対価は両親を仲直りさせること。カラオケの画面に、両親が講和条約に調印する様子が映し出されます。
まだ意味がわからずぽかんとする三姉妹に、お酉様も強硬手段に出ます。三人を“ありがたいところ”へテレポートさせると、変身アイテム・バルミラクルを渡し、有無を言わせず、有言実行三姉妹シュシュトリアンに変身させます。しかも、シュシュトリアンの正体がばれてしまうと、三人はローストチキンになってしまうのです!
正体を知られたわけでもないのに、ローストチキンになってしまう三人。でも、何故か喋れるし、何故かぴょこぴょこ動ける。まあ、この世界では良くあることなんでしょうね。妖怪・ザ・お正月もこんな感じだし。
そのままお酉様も消えてしまい、あわてる三人ですが、再びカラオケボックスにワープして、なんとか元の姿(シュシュトリアンですけど)に戻ることができました。
しかし災難は終わりません。今度は突然、黄色いニワトリの着ぐるみが乱入してきます。思わず蹴り飛ばすと、ニワトリは壁を突き破って廊下まで飛び出してしまいます。ニワトリの中から出てきたのは、お酉様の使いのフライドチキン男。ピンクの燕尾服にメガネ、カイゼル髭と、怪しさ満点のいでたちです。その怪しさは伊達ではなく、私利私欲のためにシュシュトリアンを罠にかけたりもするのですが、それは後の話。妖怪・ザ・お正月を退治するというお酉様からの指令を伝え、妖怪退治のマニュアルとアイテム(紅のバトン)を渡すのでした。
もう、このあたりの展開は突っ込みどころだらけなのですが、深く考えるヒマも無く、テンポ良くポンポンと話が進んでいきます。
すごいのは、ここでようやくCM に入るのですが、前半だけで基本設定の説明を全部済ませちゃってるところですね。そして後半からはもう、“いつもの”シュシュトリアンになってしまうのです。強引なのは否めませんけど、なんとなく納得させちゃう謎の説得力。こういう話をきちんと成立させてしまう浦沢義男の筆力、恐るべしです。
まだ信じられないという思いで帰宅した三人ですが、すっかりラブラブになった両親は仲良く初詣へ行っていて留守でした。初詣ということで、雪子は冒頭の神社へ向かいますが、両親は不在。しかし社の中で、お年玉のポチ袋が密談しているのを聞いてしまいます。そう、妖怪・ザ・お正月の正体は、無残に捨てられたお年玉袋の怨念だったのです!
今年(1992年のこと?)は不景気だったため、例年に比べお年玉が少なく、欲しいものを買えなかった子どもたちが大勢いたんですね。なのでやさぐれた子どもたちはお年玉袋をどんどんポイ捨てしていたのです。なお、このポイ捨てシーンは雪子の回想風に流れるのですが、雪子がそんなシーンを目撃していたのかどうかは謎のままです。
わかりやすく木の枝を踏んで音が鳴り、お年玉袋に気付かれてしまう雪子。注連飾りや鏡餅、羽子板に独楽に凧に獅子舞など、お正月アイテムが、雪子にいっせいに襲い掛かります。逃げ惑う雪子は、お酉様から渡されたバルミラクルの存在を思い出します。
一方その頃、月子と花子は、突然仲良くなった両親に戸惑い、どうすればいいのかを電話や手紙で親戚のおばさんに相談しています。月子にいたっては、「まるで夫婦みたい」とまで言い出す始末。
そんなとき、2人の持つバルミラクルから、ニワトリの鳴き声が響きます。バルミラクルは通信機にもなっているんですね。ニワトリの鳴き声を聞いただけで、「雪子おねえちゃん……。行くよ!」と、月子を引っ張って部屋を飛び出す辺り、何の説明もしてないのにすっかり使いこなしている花子はさすがです。マニュアルちゃんと読んだのかな? タイミングは無かったと思うし、そんな気も起こらなかったと思うのですが。
神社で合流した三人は、バルミラクルを突き合わせ、シュシュトリアンへと変身します。
まだ第1話なので、お決まりのムーブが定まっていません。「乙女盛りに命をかけて……」というおなじみの口上もありませんし、名乗りのポーズも以降のものとは異なっています。ポーズをとるときもなんとなく力感が感じられません。まだ慣れていない感じが初々しいですね。
周りを浮遊するお正月用品を、紅のバトンでボカボカ殴って撃退すると、お堂の扉が開き、謎の男が登場。こいつこそが、妖怪・ザ・お正月の正体だったのです。……あれ、お年玉袋たちとは別なの?
妖怪・ザ・お正月の力で、倒したはずの鏡餅や羽子板などが巨大化して復活。BGMに主題歌「思いたったが吉日!」も流れ、ここからが戦闘の本番ですね。
最初は苦戦するシュシュトリアンですが、結局蹴飛ばしたり、つかんで放り投げるといった力技で巨大化したお正月用品たちを撃退。妖怪・ザ・お正月も直々に参戦しますが、3人同時のキックを喰らい、紅のバトンをクロスさせて放つ必殺技「シュシュファイナル」で、勝負ありです。
そして、シュシュトリアンおなじみの説教タイム。毎回、諺などを引用して、妖怪や怪人などに説教をかまします。
今回は、「古人曰く、『過ぎたるは猶 及ばざるが如し』」。善い行いでも、度を過ぎれば悪い行いになるということですが、これって、今回の話に合っているのかなぁ。粗末に扱われたたお年玉袋には同情しますが、子どもたちへの反撃するという行為は、度を過ぎなければ善い行いというわけじゃないと思うんですけどね。
でも、お年玉が少ない中でもなんとか我慢してやりくりする子どもたちに、妖怪・ザ・お正月も理解を示してくれて、一件落着となりました。
最後は妖怪・ザ・お正月がお年玉袋の姿に戻って燃え上がり、その魂が虚空へと消えていきます。エピローグ的なものはありませんでしたが、流石に尺が足りなかったんですかね。
……あれ、ちょっと待って。盗み聞きしていたのを見つかった雪子が襲われるのはまだわかるけど、ただお参りしていただけの冒頭の雪子はなんで襲われたの? もしかして雪子も、お年玉袋を粗末に扱っていた?
いやー、久しぶりに観直しましたけど、やっぱり面白いですね。ほぼ四半世紀前の作品で、時事ネタも結構多いし、古くなってないわけじゃないんですけど、その古くなったところも込みで面白くなっているような気がします。
一話目で調子がまだ掴めてないので、やたら文章が長くなっちゃったし、書くのに時間もかかってしまいました。今はテンション高いんで良いんですけど、毎週このペースだとちょっとつらいんで、次からはもう少し簡略化したいと思います。
とりあえず、感想といいつつあらすじをだらだらと書いちゃうのはやめましょう。良くない感想文の典型です。今回は設定の説明もあったので、ある程度意識的にやっちゃったんですけどね。
[次回予告]
シュシュトリアンよ、次の指令です。いたいけな女子中高生を、お嫁にいけなくなるような恥ずかしい目に遭わせて喜んでいる怪人大相撲を退治せよ。
次回、有言実行三姉妹シュシュトリアンは、「怪人大相撲」。お楽しみに。
[参考文献]
朝日ソノラマ,“有言実行三姉妹シュシュトリアン写真集 雪月花”
|