雑居空間
趣味のあれこれを、やたらめったらフットスタンプ




 新潟県代表の日本文理と、愛知県代表の中京大中京が激突した、第91回全国高校野球選手権大会決勝戦。両先発が踏ん張って締まった内容だった序盤から一転して、終盤は激しい点の取り合いに。9回表に日本文理の猛烈な追い上げがあったのですが一歩及ばず、中京大中京が史上最多となる7回目の優勝を果たしました。


チーム 123456789
日本文理
0
1
1
0
0
0
1
1
5
9
中京大中京
2
0
0
0
0
6
2
0
x
10




 いや、ホントにもう、ものすごい試合でしたね。6回裏に6点を取られて、この段階でもう勝負あったと見る人がほとんどだったと思うんですけど、それでも9回表の2死無走者から5点を奪い、1点差にまで迫る怒涛の反撃。最後のサードライナーも痛烈な当たりでしたし、後わずか、紙一重のところで涙をのむ結果となりました。結果は残念でしたけど、まずは一野球ファンとして、これだけ凄い試合を見せて貰ったことに感謝したいと思います。

 打線は、14安打3四死球で9得点。常にリードを奪われる展開になりましたが、けして諦めずに繋いでいく文理打線は、最後まで遺憾なくその威力を発揮しましたね。
 中京大中京の先発・堂林君は、日本文理の伊藤君や、県岐阜商の山田君と同じように、低め低めにボールを集める丁寧なピッチング。球速はそれ程ではないものの厳しいコースによく決まり、長打で得点することはできましたが、多くの三振を奪われるなど苦労しました。
 最大のチャンスは6回表、ヒットと死球で無死1、2塁とした場面。ここで堂林君から森本君にピッチャーが代わり、内野ゴロで1死2、3塁としたものの、後続が倒れて無得点。ここでリードを奪えていれば、その後もまた違った展開になっていたと思うんですけどね。7回8回と森本君からも点を奪っているので、けして攻略不可能だったわけではないでしょうが、目先を変えられたことで、攻撃のリズムもまた変わってしまったという面はあるでしょう。自信を持って送り出せる投手の枚数が違ったことが、もしかしたら勝敗の分かれ目だったのかもしれません(いや文理にも控え投手はいますけど、事実上は伊藤君の一択でしたしね。良くも悪くも)。

 そして最大の見所は、9回2死無走者からの驚異的な粘りです。この段階で6点差があり、誰がどう考えてもゲームセットは時間の問題だったわけですが、選手一人ひとりが集中し、ボール球は見送り、なおかつ甘い球は積極的に振っていき、最後の最後まで諦めることなく喰らいついていきました。
 この回から再登板した堂林君を攻め、切手君の四球→盗塁を皮切りに、高橋隼之助君のタイムリーヒット、武石君のタイムリー2ベースでまず2点。吉田君はサードファールフライで万事休すかと思われながら、まさかの落球で首の皮一枚繋がり死球で出塁し、続く高橋義人君も、堂林君の後を受けてこれまた再登板となった森本君から四球を選んで満塁とした後、伊藤君が球場全体をつつんだ伊藤コールに背中を押されながらレフト前タイムリーでさらに2点を返すと、代打石塚君は初球を叩いてレフト前タイムリーでついに1点差。尚も1、3塁と後一歩で追いつくところまで持ってきましたが、反撃もここまで。最後は若林君が完璧な当たりながらもサードライナーに倒れ、わずかに及びませんでした。
 わずかに及ばなかった。それは紛れも無い事実なのですが、それでも日本文理は最後まで諦めることなく、出せる力を全て出し切りました。9回表の切手君、高橋隼之介君、武石君、高橋義人君の打席は、2ストライクと追い込まれながらも粘って粘ってのヒットや四球でした。NHKの実況の人も同じようなことを言っていましたけど、それを成し遂げるだけの力があることがまず凄いのですが、この土壇場でしっかりとその力を発揮することができる精神力もまた凄いのです。ボール球をしっかりと見極め、好球を必打する。9回表の攻撃は、まさに今大会における日本文理打線の集大成だったと思います。

 日本文理先発の伊藤君は8回147球を投げ、17安打5四死球8奪三振で10失点。際どい球になかなか手を出してくれない中京大中京打線のプレッシャーもあったでしょうし、連投の疲れもあったでしょう。準決勝のときよりもコントロールが甘く、そのため中京大中京に毎回ヒットを許すなど序盤からピンチを背負うシーンが多かったです。堂林君に打たれた初回の2ランと6回のタイムリーも、いずれも甘いところに入ってしまいましたね。
 それでも丹念に厳しいコースを突いて何とか凌いでいったのですが、痛かったのは6回裏に2点をリードされ、尚も2死満塁で向かえた中京大中京の伊藤君の打席です。打ち取った当たりのピッチャーゴロだったのですが、ファーストカバーに誰も入っておらず、内野安打となり1失点。続く柴田君にも走者一掃の2ベースを打たれてしまい、結局4点を無駄に与えることになってしまいました。記録上は両チームともエラーは一つずつなのですが、連戦の疲れのためか、決勝戦という独特の雰囲気のためか、特に終盤は記録に残らない守備の乱れが両チームに散見されました。このプレーが試合を激しく動かすきっかけとなり、最終回の反撃を生んだとも言えますが、それまで好守に支えられた競った試合展開だっただけに、ちょっともったいないプレーでしたね。



 今年の夏の甲子園は、愛知県代表の中京大中京の優勝で幕を下ろしました。客観的に見て、やっぱり日本文理よりも中京大中京の方が一つ上のレベルのチームでしたね。
 それでも野球は番狂わせの起こりやすいスポーツですから、わずかな綻びが一気に致命傷になってしまうことも多くあります。ミスを期待するということではありませんが、試合終了まで諦めずに、ベストを尽くすことが大切です。突出した力を持った選手がいるわけでもなく、事前評価もあまり高くなかった日本文理が今回のような成績を収められたのは、まさにその持てる力を、他校よりもより遺憾なく発揮することができたからだと思います。

 で、今回日本文理が準優勝を果たしたわけですが、これで今後の新潟県の野球レベルがぐんと上がるかと言えば、そう一足飛びにどうこうなるものではないでしょうね。しかしひとつ、新潟に広く蔓延していた野球コンプレックスみたいなものは、ある程度は払拭されるでしょう。私なんかもそうですけど、やっぱり「新潟は弱い」という思い込みがすごく強いんですよ。これはもう何十年にも渡って積み重ねられてきたものなので、そう簡単に洗い流すことはできません。
 しかし今回日本文理が「やればできる」というところを見せてくれました。この日本文理の活躍を見て、他校もきっと「やればできる」と思うでしょう。そうした思いが個々のレベルアップに繋がり、個々のレベルアップが勝利という結果に繋がり、結果の積み重ねが野球弱小県というレッテルを剥がすことにつながります。そしていつか、今回日本文理が目前まで辿り着きながら成し遂げることができなかった、甲子園制覇の夢を実現する高校が出てくることを期待したいですね。



コメント ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする


« 源平討魔伝 巻... 記事一覧画像一覧フォロワー一覧フォトチャンネル一覧 源平討魔伝 ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。